第5話 盲目
―――あれから、数時間が経っただろうか?私は瓦礫の中で目を覚ました。どうやら運良く生きていいた。
(アワセさん………アワセさんを………)
アワセを探そうとして起き上がろうとした。
「いっ……!」
右足が反対方向に折れ、白い物が皮膚から覗いていた。
気付いた、気付きたくなかった…瓦礫の中遅れてきた痛みでうずくまりながら私の声が響く
壊れかけの通信機からノイズが響く。
「………で 『奴』を殺したと………」
聞き覚えのない声が聞こえる
「はい 『危険因子』は爆発で死んだと思います…」
ヤマモトの声が聞こえた、声は震えていた。
まだ右足の痛みが消えない…会話は続く
「だがお前は遺体を見ていない…」
「はい ですがあの爆発です…死体は木っ端微塵だと思いますが…」
「…先も言ったが遺体を見るまでは死んだとは思わん だからその『禁書』の保管場所まで連れていってくれないか」
(ここに来るのか?)
謎の人物は続けた。
「君は『危険因子』を救いたかったように見えたが?」
「いえ そんな事はありません」
「じゃあ 今から保管場所に連れていってくれ」
そう聞こえた後、通信機の電源が落ち、砂塵が日光に当たりキラキラと光り、地面を照らす。
地面に何か埋まっていた。
(これは...紙だ...!)
地面には数枚の紙があり、その紙には、何か書いていたが私には何かわからない。「記録」ならアワセに報告しなければ…。
その直後、私は右足を引きずりながら匍匐前進で瓦礫の中から出ようとしていた、そして奴らが来る前にアワセを見つけ出し逃げなくては
瓦礫や硝子の破片が腕にめり込み、皮膚を裂き血で線を描きながらも前へ、前へと進んだ。
「ルイ君、どこにいるの…!」
アワセの声が聞こえた。砂塵が少し舞っていた奥から聞こえる。
「ここです!!右足が変な方向に折れ曲がってて動けません!!」
「ごめん…眼が見えないの…!」
瓦礫が崩れ、隙間から日光が彼女を照らした。
少し、爆風で手足に火傷をおっていたようだったが、「眼」は無事のようにしか見えなかった。
アワセの奥から、黒い影が動いた。
「まったく世話がかかる後輩だ…」
そう言って、黒い影は私に銃を向け引き金を引いた。
銃声が響く、身体のどこかに弾が貫いたが爆発による衝撃と火傷、右足の痛み、そして匍匐前進による腕の怪我…声を響かせるほどの体力はもう無く、意識が途絶えた。数枚の紙を持ちながら...。
――――どのくらい時間が経っただろうか?気が付くと立方体の部屋の中で私はベッドに拘束されていた。部屋の中は家具、部屋の様子がギリギリわかるくらいの明るさだった。
複数の足音が聞こえ、次に扉の鍵を開ける音が聞こえた…部屋の中に男女二人の人間が入ってきた、きれいな紙を持って私の顔を見ながら話す。
「彼が『危険因子』の…まだ意識が回復している様子はないな…」
声質の感じ、五十代後半位の渋い声が部屋に響いた。
「ええ 資料によると『文字』に興味があるようですが…」
次に三十代前半の少し疲れぎみのような女性の声
「『文字』の読み方 書き方までは理解していない…」
私は目を瞑り、彼らの話を聞いた…その時、扉が開き誰かが部屋に入ってきた。
「で 私の獲物に何のようですか?」
聞き覚えがある声だった。私に弾を撃った奴の声だった。
「アワセ君はどうしたのかね...?」
「『眼』は無事見たいっす」
二人は良かったと安堵の声を出していた。
「よくはないっすよ...」
奴はそう言い、続ける。
「こいつがいなければ アワセはあんな危険な目に合わなかった...カシの野郎がもう少し気を利かせときゃ良かったのによお」
老人のような男性が続ける
「だが、このアタマガワ ルイがいたからあの『記録』を入手することができた...まだ 判断材料が少ないが...」
(何のことだ...確かにあのビル内で、『本』を見つけて服に入れて爆風の時に少しクッションになったけど)
少し考えた、それがいけなかった
「やっぱ お前意識戻ってるな」
「なんだと...」
私は目を開ける。目の前に子供のような女性がいる。格好は黒一色、黒のマスクもしていた。髪の毛も黒くて艶があった。
「アワセから聞いたが、寝るふりが下手らしいな…お前のことを話す度に呼吸がおかしい」
最初の男女二人、研究員だろうか?眼鏡をかけた老紳士と若い女性だ。
「初めまして、アタマガワ ルイ君、君のおかげで『記録』を入手することができた」
私は拘束具を解かれ、身体を起こして目の前にいる三人の顔を見た
「『眼』が...」
三人とも一瞬、眼が黒くなった。いや三人とも同時に
「やはり、気付くのが早い...」
私は疑問を感じた。
「失礼ですが 三人とも『眼』が...」
「あぁん...てめぇ なにを言ってんだ?」
子供のような女性は私にメンチを切っていた。
「これはわしの独り言だ...」
老紳士な研究員が突然、言った。
私以外の二人は顔が青ざめていた。
何かに怯え、手を震わせながら何かのスイッチを切り眼鏡をかけ直す。
「我々はあんたらが言う『神』と呼ばれるものだ…そして『神』は『文字』を認識してはいけないんだ...いや『文字』をよんではいけない…」
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