第2話 頼み―1

早朝、私は解放された。手首、足首の痛みが強く立つことができなかったが無理矢理立たされ、集落の外まで歩かされた。

 私が捕らわれていた施設の外に出て、大地の匂いが鼻を通ったが、すぐに違う匂いが襲った。


火薬だ……。


しばらく歩き、違和感を覚えた。ここの集落は全員、銃を持っていた。女性も子供も…男性は何故か左手を隠していた。


「どうやら、眠れなかったようだが、昨日、言ったようにお前がいた集落に返す」


「…」


「――銃が気になるか?昨日も言ったがこれはあんたの親父がこれの製造方法を教えてくれたんだ」


「ヤマモトさん、あんたら、『何を』守っているんです?」


「……何が言いたい?」


「銃くらいなら集落の大人たちから聞いてるし『神』達が持っているのを見たことがあります。だけど、それは『自己防衛』のためだと思って…。ここの集落の人たちが全員、銃を持っていた、だからそれほどの『何か』を守るためかなと思っただけです」


「フン、ガキのクセに…。まぁ、大体合ってるよ。だが、その説明は奴に聞け。あ、後―――――」


「…!」


集落の外に到着し、誰かが待っていた。日光がその誰かをを照らす。アメリカンバイクの横で煙草を吹かせながら、背は私よりも大きく長髪で年上だろうか?


「昨日ぶりね、ルイ君」


「アワセさん?」


「もう知り合っているのか…?」


 アワセは眠そうに欠伸をした後


「昨日の深夜、拷問部屋にお邪魔して、軽く挨拶したくらいですよ。ルイ君は寝たふりで起きてたみたいだけど…。」


 少し、微笑んで長髪を揺らしながら私の方を見た。

ヤマモトは少しアワセに呆れていた。


「まったく紹介する必要はないようだな、アワセ、コイツを農業集落に返せ」


 ヤマモトは「無理をさせてすまなかった」と言い、私をバイクの後ろに座らせ、アワセもバイクに跨がり、エンジンを掛けた。


「アワセこいつはもう…『掟』が通用する年齢じゃない。見つかるなよ…」


「ヤマモト隊長わかってますがそれだと、多少の寄り道と少し彼に見せたい物があります…許可を下さい」


「……先程『その事』を聞かれた…許可する、ルイこれを…」


 そう言われ無線通信機を渡された


「誕生日プレゼントだ…」


 私はこの時、無表情だった…その時のヤマモトの表情を覚えている…これを渡したのが間違いだった…そういう表情だった。いや、ヤマモトの眼の反射を見た、私は無表情だった。


「……ありがとうございます」


 素早く無線通信機のイヤホンをして、スイッチを入れてポケットに入れた。


「行くわよ…。しっかり掴まってて…」


 そう言われ私は戸惑った。

 いや、相手は女性だし、けど他に掴むとこないから…。ええっと、どうしたものかと躊躇いで指が震える。

指の震えに気が付いたのか


「気にしないわ、腰に手を回して…」


 言われるがまま、アワセの腰に手を回した。

 彼女は煙草を捨て、アクセルを回し、砂埃を上げて荒野のなかを突き進んだ。エンジン音と風切り音が耳に響く中、アワセに会う数分前にヤマモトに言われた事が気になった…。




数分前



「――あ、後今から会う奴は『神』側の人間の可能性が高い」


ヤマモトはそう言い右手で煙草を取り出した。


「……は?えっと、根拠は?」


「前から怪しいとは思っていたが、確信になったのはお前に麻酔弾が当たった事だ」


 ヤマモトは煙草をくわえ右手で火を付け吸い始めた。吐いた煙の一部が僕の頬をかすめる。


「えっと、どういう…?」


「お前の集落の煙草は良い……話を戻すが、『神』どもから逃げるのに、お前達はどこに逃げた。」


「『禁足地』の洞窟の中…」


「そうだ…、洞窟内部だ。視界が暗く手作り銃の命中率は下がる、だが奴は俺が発射命令を出していないのに、『アタマガワ ルイ』を見つけた瞬間に発砲しているようだった、本来、お前を無傷で保護『文字』の興味をなくすほどの拷問をする予定だったのにだ。それに、お前はは丸腰なのに対し、「処刑人」は武器、銃を装備していた…普通、武装しているのを無力化する…」


 風が吹いた、私の体温を奪うかのような風が…目覚めた瞬間から拷問部屋にいた、そして、先ほどの発言この人達は本気で私を「拷問」しようと思っていたようだった。父の頼みで私を「処刑」対象から外したいだけかもしれないが…。

 もうすぐ集落の外に出る、ヤマモトが歩みを止め私の方を見て、ため息をした。


「―――そんなことよりお前に頼みがある。奴が何者か調査と俺たちが守っている『禁書』の回収そしてそこの倉庫を破壊してきてほしい...」


 突然の頼みと頼む内容に驚いたがヤマモトの目はまるで、お前に何かを託す、そう言わんばかりのような目をしていた。集落にいた時の大人達の目、「異常者」を見るような目とはまるで違っていた。


「なぜ、僕にですか…?あと、『禁書』って集落の人たちが守っている物ですか?」


「前者はお前にしか頼めないからだ…実は俺たちの集落は『神』達に目をつけられている、銃を装備し子供を拷問するそんな集落に目を付けられないはずがない...お前達が来る数日前に『神』達からの『指導』を受けた」


 そう言って、ヤマモトは左手を見せつけた。爪は剥がされ、全ての指が反対方向に折れていた…。

 集落の男全員、左手を隠していた。恐らく同様に「指導」を受けたのだろう。


「だから、これ以上『神』から目を付けられたくない、だから『指名手配犯』のお前にしか頼めないんだ......後者は...そうだ…俺たちが守っているもの『禁書』だ……だが『神』共に隠し場所が嗅ぎ付けられそうなんだ...だから隠し場所を変える、そのために『禁書』を回収してきて欲しい」


「えっと…」


「お前は『神』側から『危険因子』として『指名手配』されている『禁書』を奪って倉庫を破壊し逃走したって『神』側は『危険因子』による知的好奇心による行動としか思わんだろう」


「...」


 この男は私を道具か何かと思っているのかと感じ、ヤマモトを見ると頭を下げていた。


「すまない、子供にこんなことをさせるべきではないが、それほど『神』の力は強大なんだ。わかるだろ!先も言ったがこれ以上『神』共に目を付けられたくないんだ...『禁書』がバレると、恐らく集落全員殺される...お前だけが頼りなんだ...!」


 ヤマモトは涙を流して懇願していた。それほど、「神」に目を付けられていたのだろうか、おそらく、この男はただ、この集落を、故郷を守りたいだけなのだろう...後、私の集落の「逸話」に登場する「禁書」それと同じ物の可能性が高い…。


「わかりました…『禁書』を回収してきますがその『奴』とやらは.....」


 山から太陽が昇り始め薄暗い集落に光を放った。荒野と集落の建造物に光が当たってとても綺麗だった


「すまない、もうすぐ『奴』との集合時間だ。あとは通信機で教える」

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