最愛の愚痴

要想健琉夫

恋情のホワイトストリート

 暖炉に火が宿る頃合のある凍えた冬、僕は三月の上旬、木製のログハウスの曇った窓から暖炉の暖かさを感じながら、ふと曇った空を眺めていました。空は相も変わらない曇天模様でその空からは雪が少しずつ降ってきていました。

 僕が住むこの街では冬になったら雪が降るのですが、今年はどういう訳か何時もは積もらないと言うのに、雪かきが必要な程に雪が辺りに積もっていました。僕はそれに感激して、このログハウスから今も暖炉に火を灯しては温かいを飲んでいました。そんな奇跡のような大雪を、僕は曇った窓越しから目の当たりにしては次第にこう考え始めました。

「この冬が終わる前にに想い伝えよう」

僕はその考えを実行出来るほどの勇気をこの寒中の冬までは持ち合わせてはいませんでしたが、この今年の奇跡のような大雪は何故か自然と僕を勇気付けてくれました。

 僕は暖炉の火をそのままにして外套がいとうを着飾っては、手袋を左右の手に嵌め込んで、まだ温かいカフェ・オレを飲んで、一目散に外に出ていきました。僕は雪降り積もると言うのに、足元が大変危険な状態だと言うのに、ブーツを履いては転ばないように北へと走り出しました。何故僕がこの時走り出したかは覚えていないんですが、恐らく緊張を誤魔化すためだったと思います。


 そうして、僕は遮二無二に凍えた雪降る外を走っていると――ちょっとしたビル群が見えてきました。僕はスピードを上げて車のライトに照らされながら白銀に満ちた雪積もる白い道中ホワイトストリートを走り抜けていました。

 僕は目的地に向かうにつれて緊張からか、単に凍えているからか、白い息を何時の間にか洩らしていました。ですが、その雪降り積もる道中は緊張も有ったはずなのですが、寒中だと言うのにとても暖かかったんです。それは暖炉に照らされてぬくまるのとは訳が違うく心身的な暖かさでした。

 僕はそんな温かみを胸にしてとうとう目的地に着きました。そこに居た彼女は白い息を洩らすと、僕とは対照的に、悠々と外套を着込んでいてとても寒そうでした。ですが、その彼女の笑顔も何処か温かいものでした。僕はその笑顔を見て見惚れていては次第に決意が固まったか彼女に告白をしました。

 僕がどれだけを好いていたかを、君と居るだけで僕はどのぐらい救われるかを、僕は暖かかったかと言うのに震えた腕でそう伝えました。彼女は僕のその言葉を聞いて、面食らった様子で実にあっさりと僕に言い捨てました。

「御免なさい」

と、僕は眼を見開いては眼の奥が少し熱くなるのを感じました。だけど僕は精一杯の道化師ピエロの笑顔を振り撒いては、切なそうに言い放ちました。

「……そっか!」

僕は惨めに泣き喚きもせずにそう言い放ちました。だけど、この時僕が強がらずに彼女に精一杯の願いを再び語りかけていたのならば、僕の悲しみはまだ少しマシになっていたのかもしれないのに。僕はその点で何時までも臆病者でした。

 僕は彼女に別れを告げてから、待ち合わせ場所とは離れた場所でただただ膝から崩れ落ちてしまいました。僕が見て感じたあの雪の暖かさも――冷たい降り積もった地面の雪に触れては自分のほんの少しの勇気のお陰とそこで再認識しました。僕は目の奥を熱くしては、貯まる涙を放り出しては、泣きじゃくりました。愚痴を垂れながら。

「どうして、気持ちを伝えてしまったのだろう?」

「絶対に叶わぬ恋だったのに――何でお前はそうしたんだ?」

「何でお前はプライドを立てて、あの時惨めに願いをていさなかった?」

僕は無常むじょうにも冷たい雪に触れただ喚きました。

 そして、その地面の雪に涙を溢してはふと、こう愚痴を溢してしまいました。

「こんなにも前に進むのも……億劫なのだから」

「――もう春なんて来なければ良いのに……」

そう愚痴を垂れました。僕は地面の雪を見つめながら涙を不格好な様で溢してあの温かった白い道中ホワイトストリートを歩きながら我が家へと帰りました。 


 我が家は電気を消しただけありその時の僕のように暗く僕は落胆しました。ですが、そこにはまだ付いていた暖炉の炎が有りました。僕はそれを見ては涙を外套の袖で拭き取り、目を擦りながら電気を付けて、また曇った窓から曇天模様の雪景色を眺めて、暖炉の炎に照らされながら、残っていたカフェオレを飲み干しました。

 そのカフェオレは涙の所為か、とてもしょっぱかったのですが、そのカフェオレは暖炉のお陰では無く自然と温かかったのでした。

 

 そうして、僕はまた窓から凍えた冬景色を眺めて、温かいカフェオレ片手に無情むじょうにも訪れるをまた待ちぼうけする事にしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る