十四、隣の宮へ行ってみます
隣の宮に住んでいる弟から、いきなり謝罪文が届いた。
何のことについてかは書かれていないが、それで俺はピンときた。どうやら
まぁ、すぐに謝るのはいいことだ。そのまま隠しておいてもバレなかったかもしれないが、もしバレたらと恐怖にかられたのだろう。
弟たちも昨日は生きた心地がしなかっただろうなと思った。
さて、この国の貴族や皇族のルールというものを説明しよう。(俺は誰に対して言ってるんだ?)
この国は家族の結びつきというものをものすごく重視している。貴族や皇族というのはその模範となる存在なので、それを遵守している。
基本的に年少の者から年長者に声をかけるのは失礼とされており、もしどうしても年少の者が年長者に聞きたいことがあったりする場合は従者越しに伝えるか、このように文(手紙)を書くことになっている。宮への訪問についても、年長者が年少の者の宮へ向かうのが当然であり、逆はよほどのことがない限りされない。
なので皇太子から第三皇子までが俺のところへ訪ねてきたのはそのルールに従ってのことであり、こちらから向かうということはない。
ま、俺は兄や姉たちに会う理由もないからそれでいいんだけど。
ちなみに、年齢以外にも立場であるとかそういう複雑なものもあるが、それはおいおい学んでいければいいと思っている。
俺は中国史オタクだから、身分とか立場的なものはなんとなくわかるけど、都度確認はしていくようにしたい。
「隣だが、先ぶれは必要か?」
「文を受け取っておりますので、殿下のご随意に」
呂偉の返事を聞いて一瞬だけ考えた。
「今から行こう。
俺の隣の椅子にちょこんと座っている小白に声をかけた。
「ドコー?」
コキャッと首を傾げるさまがたまらなくかわいい。つい和んでしまう。
「隣の宮だよ。弟たちに会いに行くんだ」
「イクー!」
小白は楽しそうだと思ったらしい。さっそく椅子からぴょんと下りた。そしてトトッと卓から離れ、俺を振り返った。
行かないの? と言っているような目がとてもかわいい。
「準備してからな」
一応いつでも外に出れる格好はしているが、このまま向かうと呂偉の目が怖い。侍女たちに髪や衣服などを整えてもらってから、念の為小白をだっこして向かった。
隣の宮の前には衛士が一人いた。その衛士に呂偉が声をかける。衛士はすぐ俺の姿に気づいた。
「
衛士はサッと俺に拱手した。
「よい。それよりも弟たちはいるか?」
「はい、いらっしゃいます」
「では雲飛が来たと伝えてくれ」
「
それほど広くはない宮である、衛士が中に声をかければ、すぐに侍従がやってきた。
「雲飛殿下、お越しいただきありがとうございます。どうぞ、中へ」
「うむ」
侍従に案内されて門をくぐった。
建物の造りはなるほど四合院である。簡単に言うと四つの建物の間に庭や井戸があるという形だ。その後ろ側にも建物はある。
そのうちの二つの建物を弟たちが使っているらしい。一つ一つの建物もそれなりの広さがありそうだった。
建物の扉が少し開いているのを確認した時、小白が俺の腕からぴょんと飛び降りた。
「あっ、小白!」
そしてその開いている扉に近づき、つんつんとつつく。
「イルー?」
小白が声をかけた途端、扉はバンッ! と閉まった。どうやらそこに弟がいたらしい。
小白は扉が閉まった音に驚くことなく、また近づいてつんつんとつついた。
「ああっ! お酉さま、申し訳ありません! 殿下、雲飛殿下がいらっしゃいましたよ!」
侍従が慌ててその観音開きの扉に近づき、バッと開けた。
小白が少し下がる。
「ほら、殿下方、謝るのでしょう!? 雲飛殿下、どうぞこちらへ……」
「うむ」
俺は戻ってきた小白をまただっこし、その建物に足を踏み入れた。
侍従というのもたいへんだなと内心苦笑した。(自分の行いは棚に上げまくっておく)
そこは居間だった。その居間の隅で弟二人が平伏していた。いったいなんなんだよと思う。
一人は
「俊飛様と
呂偉が耳打ちしてくれた。俊飛と鵬飛は平伏したまま震えている。
「俊飛、鵬飛、どうしたのだ? 兄に顔を見せてくれぬのか?」
「「もっ、申し訳ありませんん~~~っっ!!」」
二人はいきなり謝り出した。小白はまた俺の腕から飛び下りると、ぽてぽてと二人の側に歩いていき、つんつんと二人の頭を軽くつついた。
「小白、止めなさい」
全く困ったニワトリである。俺は苦笑して小白に近づく。
ふと周りを見れば、弟たちに仕えているだろう侍従や侍女たちも平伏していた。
それを見て困ったものだと思った。
「俊飛、鵬飛、立ちなさい。そなたらも立つがいい」
二人と侍従や侍女たちはおそるおそるという風に立ち上がった。二人は顔を伏せたままであったが、俊飛が口を開いた。
「雲飛殿下、わ、わざわざいらしていただき、光栄でございます……」
消え入りそうな声だった。
「どういうことなのか説明はしてもらうが、その前に喉を潤わせた方がよいだろう」
「は、はい! 茶を持て! お酉さまには水、でよろしいですか?」
「うむ」
そうしてやっとみな、居間の椅子に腰掛けることになったのだった。
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