なぜか魔王が勇者召喚を行った!それに巻き込まれた俺はうまく逃げ出すことが出来はしたが、今後どうすりゃ良い?
伊勢いづも
第1話 どうしてこうなった!
さて、今日の4時間目の授業は2年3組か。今日から新学年の2年生の担当だ。
まだ赴任してきて間もないので、クラス全員の名前も顔も覚えていない。赴任してきて初の授業だからな。
俺の名前は山田太地(やまだたいち) 中学校の社会科の教師 38歳 独身 背も高くなく 小太りで小心者 頭髪も薄くモテないので 残念ながらDTだ。担任のクラスは無い。
今日は、この学校で初の教壇に立ち自己紹介をしていると、教室の床が光り輝き始めた。
何だこれは?
気がつくと俺は一人で寝ていた。
「やっと起きたな」
何だここは?
この白い世界は?
さっきの声は夢か?
「夢ではないぞ!
!?……
「誰だ?」
「儂は神じゃ」
「神?」
「俺は死んだのか?」
「まあ、厳密に言えばそうじゃな」
「そうですか……でも今、厳密に言えばと言っていた思うのですが?……どういう意味ですか?」
「簡単にいうと異世界召喚じゃ」
「エッ!でも先程は死んだと……………異世界召喚…そうか!もしかすると肉体は再構成されるけど、魂はそのまま…… だから厳密に言えばと言うことなんですね!」
「理解が早くて助かるわい。地球から呼び出された者たちの肉体は、地球が所属する宇宙の物質なので移動は出来ない。だから、新しい惑星の所属する宇宙の物質で肉体を再構成するのじゃよ、要するに他の宇宙の惑星と微妙に肉体の波長が合わないんじゃな。ほんの僅かな差なんじゃがな」
「と言うことは、私の肉体も一から作ると言うことですよね?」
「その通りじゃ」
「では、若返ったりも出来ますか?」
「その事に気がついたか。その事に気がついた特典として特別に好きな年齢、容姿にさせてやるぞ」
「よし、やったぞ‼️…ではお願いします」
俺は小さく拳を握り締めた。
「では年齢や外見をまずは選びなさい」
「1つ質問をよろしいですか?」
「良いぞ」
「これから行く世界はどんな世界ですか?」
「良い質問じゃ。これから行く世界は剣と魔法の世界じゃ。時代は地球の中世ヨーロッパと言ったところじゃな。しかし召喚したのは魔人族の国じゃ、なぜ魔人族の国が勇者召喚を行ったのか迄はわからんがな」
成程、だったら目立たないように、欧米人風が良いかな?俺は教師だが逃げるつもりでいる。生徒たちを見捨てるのかよ…って思うかもしれないけど、まだこの学校に赴任してきてたった1週間である。しかも今日が初授業、更に自己紹介中だったのでほとんどの生徒の顔も名前も知らない。
そんな生徒達のために残念ながら俺は守ってやる事などできない。家のご近所さんのほうが余程親しい。初対面の知らない人間のために、いくら生徒だからと言って自分を犠牲になんて出来ないよ。しかも地球じゃ無い上、俺は聖人君子でもないしな。
「魔人族の国が勇者召喚する理由は、どうしてなのかわからないんですよね」
「魔人族や人間族の心の中までは読めないからの」
「分りました。では人々や魔人族の外見は欧米人のようですか?」
「そうじゃよ。人間族も魔人族も全くお主達と同じ外見をしておる」
「ありがとうございます」
「だったら、白人、青銀髪、イケメン、瞳は青、脚は長く、15歳位でお願いします」
「わかった。次は能力じゃが、先に生徒たちはもう送り込んであるぞ。お前みたいに気が付いた者もおらんかったし、そのまま送り込んだ。スキル等は授けたがな。因みにHP,MP等は100前後じゃ。魔法や剣技に長けたものもおるぞ。この世界の一般人はHP,MP等10前後じゃ、騎士や魔法使いは200前後じゃ。これを参考にするが良いぞ」
「詳細情報ありがとうございます。ではHP,MP等は…そう言えば私も生徒達と同じ魔王城とかに召喚されるのでしょうか?」
「そうじゃよ。残念ながら同じ所に同じ時間で送り込まないといかんのでな」
「了解です。俺はこの学校に赴任してきて、まだ1週間なんです。ですから生徒達のこともほとんど知りません。無責任かもしれませんが、魔王城から逃げるつもりでいます」
「なるほどの、わしは無責任だと思わんぞ。人はそれぞれ自分の命が大切だからな。しかも我々は自分自身が自分らしく生きるように、魔人族や人間族を作っているからな」
そうか、騎士や魔法使いが200前後だから、もっと高くないと捕まったときに怖いしな。
「そうですか、気が楽になりました。でしたら…HP,MP等500前後でお願いします」
「わかった。しかし、ずいぶん高いステータスにするんじゃの。何か意図があるのか?」
「はい、もしうまく外に出せてもらえなくても、戦ってでも逃げるつもりでいますので、多分魔人族としても他の生徒の手前、戦うようなことにはならないと思うのですが。いざと言うときのためにです。何せ私は慎重な上ビビリなので」
「なるほどの」
「はい、ステータスは他人も見ることが出来ますか?」
「可能じゃよ。ただし特別な装置等を使用してじゃがな」
「わかりました。では、スキルはいただけますか?」
「お主の事は正直さで気に入ったので、全属性の魔法を授けよう。さすれば最初にお主が必要とするであろう改竄などが可能じゃ」
「!…ありがとうございます。さすが神様ですね。因みに他の生徒達は全属性とかでは無いのですか?」
「違うぞ、魔法が使えるものも通常は1つの属性のみじゃ。他に質問はあるか?」
「いいえ、特別なご配慮を頂きありがとうございます。最後に今後また神様にお会いする事はできますか?」
「教会で祈りを捧げれば、お前だけはまた呼んでやるぞ。ではそろそろ送るぞ」
「色々と我儘を聞いて下さりありがとうございました」
◇◆◇◆◇◆
そして俺は少年のしかも欧米人の姿で召喚の間に……
生徒たちもざわついている。そりゃそうだよな。いきなり知らないところへ召喚されてこの後どうなるのかもわからないんだもんなぁ。そりゃ〜ざわつくよな。
魔王が、いきなり話を始めた。
「よくぞ参られた勇者諸君!ヘルファン王国国王ヨハン3世である。現在この世界は魔族軍の侵略に晒されている。そこで勇者諸君を召喚させてもらった。どうかこの国と世界を救って欲しい。なおこの後は大臣に話を引き継いでもらう」
俺は知っている。この国は魔人族の国だと言うことを。あの王様は魔王だな。なぜ魔族に攻められていると言うのか。他にも魔人族の国はあるのか?魔族軍?魔族と魔人族は違うのか?一体どういうことなんだろう?
「ここからは私が王の話を引き継ぐ。まず今回、皆を召喚したのはこの世界が、魔族軍に攻められており、滅びそうになっていることである。よって、過去の技術である勇者召喚を行わせてもらった。そこで諸君らが、それに応じてくれたということである」
「ちょっと待ってくれよ。この世界が魔族軍に攻められているのはわかったけど、なぜ俺たちが召喚されて、戦わなければいけないんだよ。しかも応じたとか言っているけど勝手に呼ばれたんだぞ」
「その件に関しては、誠に済まないと思っている。しかし、我々の手にはもう終えなくなってきているので、勇者諸君を召喚するしかなかったのである」
「そんな勝手なこと言われても困ります。私たちは帰ることができるんですか?」
女子生徒が言った。
「残念ながら、今のところ帰る方法はわからない」
「なんだよ。そんなの、冗談だろ。返してくれよ」
「そうよ、そうよ。私たちは帰りたいわ」
「そうだよ。俺たちの意見なんかも聞くこともなく、いきなりこんな知らないところに呼び出されて、召喚に応じてくれたとか訳のわからないことを言って、俺たちは帰りたいんだよ」
「そうよ、そうよ。勝手だわ」
「そうだそうだ」
生徒たちが騒ぎ出した。
確かに騒ぐよな…俺は今のうちにステータスを改竄しておこう。さて、外国人風の人間がなぜここにいるのか不思議だよな。これはどのように言い訳するかな?
たまたま転入生で学校見学に来て、廊下を歩いているときに巻き込まれたことにしよう。よしこれで完璧だ。完璧な言い訳の筈……
どうやらお決まりのステータスチェックが始まったようだ。
皆、一喜一憂しているな。やはり勇者が出たかあいつは確か小野だったな。そうか。小野はクラスカーストでも上位の方だとか聞いていたな。勇者の卵か。勇者の卵?
何人か生徒の名前と顔は覚えたが次は足立か。あいつは賢者の卵か。次は大山、あいつは魔法使いの卵。なるほど、女子初の魔法使いの卵だな。次は井上。あいつは剣道部だったな。なるほど、剣聖の卵か。
どうやらみんな自分の得意な方面が伸びるような職業についているみたいだな。皆、それぞれの職業の卵なのか。要するに、まだその職業に完全にはなりきっていないということなんだろうか?
次の子は確か大原だったな。あの子は聖女の卵か。しかしみんなまだ卵なんだな。本格的に聖女や勇者、賢者、魔法使い、剣聖などになるには、修行が必要ということなんだろうなきっと。
そして名前がわからない生徒たちが終わり、とうとう俺の番が来てしまった。やはり皆騒いでいる。
「あんな奴いなかったよなぁ」
「そうだよなぁ、あんな外人いなかったよなぁ」
そりゃそうだな。誰も教師である俺が神様との邂逅で、容姿を変えてもらったなんて思わないだろうからな。
「みんなびっくりしているだろうけど、俺は今度転校する予定だったこの学校へ、偶然見学に来ていて巻き込まれてしまったんだ。名前は山本 F アレクサンダーと言う。」
「では、アレクサンダー君、こちらに来てくれ。君のステータスを見せてもらおう」
そう大臣が言った。
しまった!…… ついつい本名を変えるのを忘れていた。まぁ良いか後で適当にこの世界での名前をつけよう。
よし、うまくごまかせたようだ。俺は大臣の前まで行きステータスを見てもらった。
どうやらステータスはうまく誤魔化せたようだ。大臣は残念そうな顔し、魔王に報告をしている。偽りのステータスは市民、HP,MP等すべて20。魔王も残念そうな顔をしている。俺は今がチャンスと思い、魔王へ問いかけをした。
「王様、私のような普通のステータスの人間はいてもご迷惑でしょうから、もう元の世界に帰ることも諦めますので、1年分位の生活できるお金と服をいただければ、冒険者にでもなって、自分で生活していこうと思います。いかがでしょうか?」
大臣は魔王を見ている。魔王はしばらく考えて
「よしわかった。では1年分の生活費と服をやろう。そして好きなように暮らしていくが良い」
「ありがとうございます。今日はもう遅いので1日だけ泊めていただければ助かります」
魔王も他の生徒たちの手前、ここで逆上するわけにもいかないし、どうやら俺の意見を通してくれたようで助かった。俺以外の生徒達は皆顔見知りの様で、一緒にいる方が安心なのか、誰も城から出て行く事を希望しなかった。
この後各自案内されて部屋に下がっていった。
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