無間楼一〇八号室
堕落
カッゅシ
きっかけはスーパーの抽選会だった。
ダメもとで一回やってみたらなんと特賞!
3泊4日の老舗ホテルの宿泊券が当たってしまったのだ。
ちょうど職場を辞めた所で時間を持て余してた私には好都合だった。
しかし、こういった宿泊券はペアが主流だと思うのだが
なぜだか一人のみだった。
まあ、老舗ホテルで3泊もだから予算的な都合かもしれないが。
それに私には帯同するような相手もいない。
友人も。
恋人も。
それに孤独には慣れている。
一人旅なんておもしろそうじゃないか。
なんて、その時は考えていた。
浅はかだった。
...
......
.........
出発当日の朝、私は集合場所でバスを待っていた。
どうやら私以外にも同じく抽選に当たった人たちがいたようで
みんなバスをまだかと待っていた。
だがその光景は少し変わっていた。
宿泊地に思いをはせ和気あいあいと話すのではなく
全員スマホをみて一言もしゃべらなかった。
そこで確信したが、彼らもまた“お一人様”なのだと。
あれこれ考えているうちにバスは到着し、私は自分の座席についた。
観光ガイドらしき女性が人数と位置を資料で確認していたが
その様子は客に対するものではなく
やがてバスは走り出す。
天気は
胸がざわざわするような感覚をおぼえたが
気分を変えようとイヤフォンを取り出し、スマホで音楽を聴き始めた。
隣の座席の中年男性はアイマスクをして寝る準備万全なようだ。
バスの目的地は長野県の
自然豊かな場所で英気を養おう。
もう職場の悩みを抱えている必要はなくなったんだ。
窓側の席だった私は前の座席と窓の間にカードのようなものを見つけた。
よくみると運転免許証だった。
【西村まゆ】
それは、ひと月前に
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