酸いも甘いもぜんぶ恋。
砂糖 塩
夏と宿題と恋
八月二十四日。
拭いても拭いても滲んでくる汗を、メルヘンチックなキャラクターが刺繍されたタオルで拭う。
「もうすぐ夏休みが終わるね」
数日前にやっと手を付け始めた宿題はまだまだ山積みだ。
このままのペースじゃ到底終わらないだろう。
それなのに進める事を躊躇ってしまうのは、面倒臭さよりも隣に座る君との時間を少しでも長く続けたいからだ。
私の言葉に、彼は視線をノートに落としたまま頷く。
「そうだね」
返事はそんな簡潔なものだった。
脈ないなぁ。
もっと言い方あるでしょ。
そんな事を思いながら私はこっそりと口を尖らせる。
ただの四文字を勝手に深掘りして、勝手に落ち込んでしまうのは、恋をした人間なら誰だって通る道だろう。
たったの四文字、されど四文字だ。
じゃあ私は、一体どんな言葉を返してほしかったのだろう。
私と同じように『寂しいね。』とでも言ってほしかった?
『もっと一緒に居たいね。』なんて、言ってほしかったのかな。
広げたノートの上で、シャーペンの芯がぽきりと折れた。
「楽しみだね」
「えっ?」
「学校が始まったら、また授業中の君が見れるからさ。
僕、あの空間も好きなんだ。今しか見れないしね」
あぁ、また。折角出した芯がまた折れてしまった。
カチカチと新しく芯を繰り出しながら、タオルを顔に押え付けた。
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