第9話:世界を変えた変態英雄。異性の冒険者との出会い

大迷宮ギガントリスの危機を救ったことで、裸藤 真の名は一躍、英雄として世界に轟いた。

世間は彼のSランクの実力と、Fランクの変態スキル『ヌーディストブースト』のギャップに熱狂し、『ヌーディスト・ヒーロー』という異名が定着した。

真は、WAFから受け取った莫大な報酬で、郊外に建設中の秘密訓練要塞へと引きこもっていた。彼は次のステップに向けて、さらなる装備の最適化と、全裸ブーストの制御訓練に時間を費やしていた。

「問題は、公の場での戦闘だ。ブリーフ一枚までは許されても、完全な全裸は…」

真が頭を悩ませていたのは、いかに社会的な制裁を受けずに、全ブーストを発動するかという倫理的、そして法律的な問題だった。

そんなある日、真の要塞を訪れる者がいた。

真の要塞は、最新の魔力探知と物理防壁で守られていたが、その訪問者は、まるで散歩でもするかのように、難なく訓練場までたどり着いた。

真は、全裸ブーストの制御訓練を終え、Tシャツとジーンズに着替えようとしているところだった。

「あら、噂通り、なかなか立派な訓練場ね。そして、噂通りの変態さんだわ」

訓練場の入り口に立っていたのは、真と同年代ほどの美しい女性だった。

彼女は、真がこれまでに会った冒険者とは雰囲気が違っていた。長い銀髪は魔力光を帯び、身に纏っているのは、優雅でありながら機能的な、純白の魔導鎧。

そして、彼女が胸元で静かに輝かせている冒険者カードは、Sランクの証だった。

「あなたは…?」真は警戒しつつ尋ねた。

女性は優雅な笑みを浮かべ、名乗った。

「私の名は、白銀の聖女(セイクリッド・ブレイバー)、聖代 凛(きよしろ りん)。貴方と同じSランク冒険者よ。私のスキルは**『浄化ブースト』**。触れたものを清め、あらゆる状態異常を解除し、肉体能力を純粋に倍加させる」

真は驚愕した。『浄化ブースト』は、ヌーディストブーストとは対照的に、Sランクの中でも最高峰の神聖なスキルとして知られていた。

「それで、その『聖女』様が、なぜわざわざFランク上がりの変態のところに?」

凛は、真の挑発的な言葉を意に介さず、一歩、真に近づいた。

「用件は二つ。一つは、貴方をスカウトすること。二つ目は、貴方のスキルに興味を持ったからよ、裸藤 真」

凛は、真の前に立ち、真剣な眼差しを向けた。

「貴方の『ヌーディストブースト』は、倍率が乗算で増えるという、常識外れのスキル。確かに、全裸になれば最強でしょう。けれど、それは人間として最大の弱点を抱えているということ」

「弱点?俺の力は…」

「力を制御する精神が脆弱よ。貴方は、己の力を解放するために、羞恥心を克服した。それは素晴らしい。でも、真の英雄なら、羞恥心を力に変える術を学ぶべきだわ」

真は反論できなかった。確かに、全裸状態の彼には、視覚的な羞恥心が物理的な弱点とはなりえないが、もし精神的な攻撃を受ければ脆いかもしれない。

凛は、続けて衝撃的な提案をした。

「私とパーティーを組みなさい。貴方の**『ヌーディストブースト』は、世界のどこを探しても唯一無二の攻撃特化スキル**。私の**『浄化ブースト』は、最高の防御・支援特化スキル**。私たちSランク二人なら、世界の誰も到達できない領域へ行ける」

そして、彼女は小悪魔的な笑みを浮かべ、最後に最も重要な言葉を口にした。

「そして何より、貴方の**『脱衣』**に、私が協力してあげるわ」

「協力?」真が眉をひそめる。

凛は、自分の純白の魔導鎧を軽く叩いた。

「私の『浄化ブースト』は、触れたものを**『穢れ(けがれ)』から『純粋』に戻す。例えば、貴方が脱衣することで負う羞恥心の精神ダメージは、私にとっては『穢れ』**と同じ。それを浄化できるのよ」

真は、脳内でその意味を即座に計算した。

(羞恥心による精神ダメージがゼロになる…!?)

「加えて、この魔導鎧は、浄化された貴方の肉体を視覚的に**『聖なる存在』として認識させる効果があるわ。周囲の人間は、貴方の裸体を見ても、『神々しい存在』**と錯覚する。つまり…」

凛は、勝利を確信したように微笑んだ。

「貴方は、公衆の面前で全裸になっても、逮捕されずに英雄でいられる。最高の**『脱ぎの舞台』**を、私が用意してあげる」

変態スキルを持つ真の前に現れた、最高峰の聖女。二人のSランクの出会いは、真の『ヌーディストブースト』を、新たな次元へと引き上げようとしていた。

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