第12話:半減された能力と、デバッガーの奇策
1.制限された能力と、時間との戦い
「能力が50%に制限されている…!」
ひかりは、地面を蹴って飛び上がろうとするが、いつもの爆発的な**『ブースト』**の加速は得られない。最高速度は半分以下だ。
咲耶の**『フリーズ』**能力も同様だ。周囲の熱を奪う速度が鈍く、氷の壁を生成するのにも時間がかかる。
「くそっ、このフィールドは、能力そのものの出力を抑え込んでいるわ」凛が、デバイスで周囲のエネルギー干渉を解析するが、データは安定しない。
「私の**『幻惑』も、彼の『時間支配』**の干渉で、効果が弱まっている。まともに攻撃しても、すぐに見破られる」零が、舌打ちした。
『影の支配者』の使者は、フードの奥で冷笑しているようだ。
「無駄だ。我々のフィールドでは、君たちの『チート』は通用しない。残り時間は、あと40分だ。時間が来れば、君たちの存在は、この世界から跡形もなく消える」
絶望的な状況。能力は半減、敵は余裕綽々、そしてタイムリミットが迫っている。
「悠斗、指示を。この状況を打破する方法は…?」咲耶が、頼るように俺を見た。
俺の視界には、使者の持つコントローラーのような装置から、微細なエネルギーが、常に校庭の時計に向かって送られている様子が見えていた。
【ANALYSIS: Temporal Dominator Device - Function: Continuous Time Warp Acceleration】
【Targeted Protocol: World System Clock (Current Time: 16:30 JST)】
「咲耶!落ち着け!奴らの能力は、**時間の『流れ』**を加速させているんじゃない!」
俺は、頭の中で、使者の能力と、このデバッグフィールドの**『裏コード』**を必死に読み解く。
「奴らの能力は、校庭の時計が示す時刻を、**『現在時刻』**である16時30分へと、**強制的に『巻き戻している』**んだ!この空間そのものを、過去の時間に引き戻そうとしている!」
<h4>2.デバッガーの洞察と、バグの弱点</h4>
「時計を巻き戻している…?」凛が驚愕する。
「そうだ!だから、この空間全体が、過去の景色と混ざり合い、不安定になっているんだ!」俺は続けた。
「そして、奴らの持つコントローラーは、その**『巻き戻し』を継続させるための『増幅器(ブースター)』**だ!その増幅器を破壊すれば、時間の巻き戻しは止まる!」
使者は、初めて動揺した。
「馬鹿な…なぜ、貴様のような者が、我々の能力の原理を知り得る…!?」
「俺は**『デバッガー』だからだ!この世界の『システム設計ミス』**を見つける能力者だ!」
俺は、使者のコントローラーから放出されるエネルギーの**『波長』**を読み取った。
「凛!使者のコントローラーから出ているエネルギーは、極低温に弱い!」
「極低温…咲耶の**『フリーズ』**能力の真逆の性質!?」凛がデバイスを叩く。
「そうだ!奴らは、この『過去の空間』で、熱エネルギーの法則を歪ませて、能力を発動させている!だから、咲耶の能力で、極端な**『低温』をぶつければ、その増幅器は『フリーズ』**して、機能を停止するはずだ!」
しかし、咲耶の能力は50%に制限されている。
「悠斗。50%の出力では、奴の増幅器に致命的なダメージを与えるほどの極低温は発生させられないわ…!」咲耶は悔しそうに拳を握りしめる。
<h4>3.チート同盟の連携と、デバッガーの奇策</h4>
「いや、できる!**能力の『質』**を変えるんだ!」
俺は、一気に作戦を立てた。
「咲耶!最大出力の50%で、**『最小限の範囲』**に能力を集中させろ!増幅器だけを狙うんだ!一点集中で『絶対零度』に近い低温を叩き込め!」
「零!**『幻惑』で、使者の『視覚と聴覚』を、俺たちから『一瞬だけ』逸らせ!時間は1秒!その隙に、ひかりが咲耶を『ブースト』**で運ぶ!」
「ひかり!**『ブースト』の加速を、咲耶の『フリーズ』能力の発動を『補助』**するように使え!能力のエネルギー自体を、加速させて、増幅器にぶつけるんだ!」
美少女たちは、俺の、絶望的な状況下での奇策に、一瞬の迷いもなく応じた。
「いくわよ!」咲耶の目が光る。
零が、能力を発動。使者の視界が、一瞬、虹色のノイズに覆われる。
「…何だと!幻惑…!?」使者が動揺する。
その1秒の隙に、ひかりが咲耶の背中に触れ、**『ブースト』**を発動。咲耶の体が、加速されたエネルギーの塊となり、使者に向かって突撃する。
咲耶は、増幅器に照準を合わせ、50%の能力を、一点に集中させた。
キュィィィン…
氷結ではなく、空間そのものが**『熱を失う』**ような、凍てつく衝撃が、使者の増幅器に直撃した。
パリン!
ガラスが割れるような音と共に、使者のコントローラーは、瞬時に凍り付き、粉砕された。
【Temporal Dominator Device: Destroyed - World System Clock Acceleration: TERMINATED】
俺の視界の警告ウィンドウが、緊急事態の終結を告げる。
使者は、増幅器を失い、バランスを崩してよろめいた。
「馬鹿な…貴様らのような**『欠陥品』に…なぜ、我々の『システム』**が破れる…!」
「システムを破ったんじゃない。バグをデバッグしたんだ!」俺は、勝利を確信し、叫んだ。
時間の巻き戻しは停止した。俺たちは、存在の消滅という危機を脱したのだ。
しかし、使者は、すぐに体勢を立て直すと、フードの奥で不気味に笑った。
「フフフ…デバッガー。これで終わりだと思うな。これは、君たちの**『存在価値』を試すための、最初のテストに過ぎない。我々『影の支配者』は、この世界を『終焉』**へと導く…」
使者は、空間に手をかざすと、その場から**『消滅』**した。
俺たちの目の前には、砕け散った増幅器の残骸と、未だ不安定な『過去の空間』だけが残されていた。
「…逃げたわね。でも、私たちの勝利よ」咲耶は、安堵のため息を漏らした。
俺は、美少女たちからの賞賛を受けながら、使者の最後の言葉が、頭から離れなかった。
(…終焉。奴らは、この世界の何を、どう終わらせようとしているんだ?)
—―第12話 完—―
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