第10話 開戦
あれからも我々は時間の許す限り修行を続け、遂に、決戦当日の朝を迎えた。今日ばかりは
(もう囲まれてるね)
〔ええ、
既にこの村は、約3000のオーガの軍勢によって包囲されている。加えて、他と一線を画す力を持つ気配が3つある。気配はいずれも、SS級に至ったカイザーと同等か、それを上回る覇気を放っている。間違いなく、鬼だ。
(せめて、鬼達のスキルだけでもわからない?)
〔遠すぎて『
(そっか・・・)
〔あの鬼達も問題ですが、それよりも今は
(大丈夫!バッチリだよ!)
そういう
〔―――緊張、しているのでは?〕
(うっ、バレたか・・・)
〔まあ、この後のことを考えれば、無理もありません。ですが、
(!!)
〔
(・・・ありがとう、ミカエルちゃん。心が軽くなったよ)
〔『相棒ですから、このくらい当然です』〕
そして、約束の時間が迫る。
「カルメラ殿!例の場所に3人の人影が現れた!あの覇気からして、間違いなく鬼だ!」
「とうとう来たか・・・」
「いよいよですね」
覚悟を決めたように、
「皆!準備は良い?」
『応!!』
「今日の戦いは、途轍もないほど激しい物になると思う。でもこの戦いに勝って、今日この日を乗り切れば、皆は鬼達の支配から脱することができる!頭領達のことは任しといて!皆まとめてぶっ飛ばしてやるから!だから、この村のことは任せたよ!」
「カルメラさん達も、どうか無事で!」
「大丈夫!それじゃあ、行ってくる!!」
『行ってらっしゃい!!』
ゴブリン達に見送られながら、我々は『時空跳躍』を発動し、約束の場所へ向かった。
*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*
約束の場所には、カイザーの報告通り3人の人物―――鬼がいた。
驚くことに彼らの容姿は、それぞれ違いはあれど、人間にとても良く似ていた。頭の角が無くなれば、人間にしか見えないだろう。
「来たか」
中心にいた金髪の鬼が、話しかけて来る。
「お前か、茨木の部下達を可愛がってくれた小娘ってのは」
「小娘じゃない。カルメラだ。そういうあんたは、頭領の酒吞童子?」
「ああそうさ。あたしはここら一帯の元締め、酒吞童子だ。まあ、酒呑童子っつーのは『称号』であって、名前じゃないけどな」
〔『称号』?〕
(何か凄いことをした人に与えられる、勲章みたいな物だよ。それぞれ特別な力を持ってるんだって)
〔特別な力・・・〕
酒吞童子の覇気は、村を囲んでいた鬼とは比べ物にならない。後ろの2人と比べても大きな差がある。それ程の力に加えて、『称号』という謎の力まで加わるとは・・・分かってはいたが、強敵だ。
「どっちにしても、僕にとってあんたは酒呑童子だ。で、そっちの桃髪は副将?」
「そうだ。私が副将の茨木童子。先日の部下達の借りは、貴様の首できっちり返してもらう」
あの桃髪の鬼が副将か。この3人の中で一番覇気が弱いのが彼女だが、ワタシが一杯食わされた相手でもある。油断ならない。
「じゃあそっちのデカい人は、四天王筆頭かな?」
「ああ。四天王筆頭の星熊童子だ。まあ、どうせ死ぬから覚えなくてもいいが」
やはり最後の一際巨大な鬼は、四天王筆頭だった。見た目からしてパワーファイターだが、この男も称号持ちである以上、それだけとは限らない。
「しかし、約束通り本当に1人で来るとはね。そんなにあのゴブリン共が大事か?」
「友達を大事に思うのは、当然のことでしょ?」
「はっはっはぁ!友達? アイツらが? 笑わせてくれるじゃないか!」
「私達魔物は弱肉強食。強い者だけが全てを手にする。弱い者は、強い者に支配されるのみ」
「俺達に言わせればゴブリンなんて、道具みてぇな物だぜ」
「道具・・・!」
「・・・あんた達魔物が弱肉強食なのは良く知ってるし、僕もそれを否定はしない。けど、僕にとって皆は、大事な友達だ!これ以上、皆を苦しめることは許さない!」
「はんっ!許さないだと? ならどうする?」
「あんたらまとめてぶっ飛ばす!」
「やれるもんならやってみろ!あたしら3人を相手にさぁ!」
言うや否や、酒呑童子が背中の大太刀を抜き放つ。そして重心を低くし、
「おんどりゃぁぁぁぁ!!!」
酒呑童子が大太刀を横なぎに振るう。対して
〔ぐっ・・・!〕
2人が衝突した瞬間、凄まじい衝撃が大地を、空間を揺らす。あまりの衝撃に大地が耐えられず、足元の地面がひび割れた。しかし―――
「こんなもん?」
「なっ!?」
「こ、これは・・・!」
「嘘だろ!? あんな小娘が、
「私の部下達がやられている以上、警戒はしてたつもりだったが・・・」
「ああ、認識が甘すぎたな。正直
茨木童子と星熊童子が、口々にそう言う。正直、ワタシもそう思った。
「おいお前ら!随分好き勝手言ってくれるじゃないか。だが、お前らの言う通りだ。一太刀交えてわかったが、こりゃとんでもねぇバケモンだ・・・!」
「化け物呼ばわりは心外だけど、僕に勝てないと思うなら、早く軍を退いてくれない? あ、村の人達への謝罪も忘れちゃダメだよ」
「村に向かわせた奴らのことか?―――はっ、お断りだね!確かに1人じゃ無理だが、こっちには3人いるんだ。何より、あたしらにも譲れないものがある。例え相手が誰だろうと、同胞に手を出した奴は絶対に叩き潰す!」
〔―――え?〕
「気合い入れろ、お前ら!」
「おうよ!」
「承知!」
酒呑童子の呼び掛けにより、茨木童子と星熊童子も動き出す。丁度そのタイミングで、鬼達の『
〔
(わかった。なら敵がスキル使った時に教えて。それでどうにかする!)
〔了解!っ、上です!避けて!〕
「な、何じゃこりゃ!?」
「ちぃっ!外したか!」
茨木童子が舌打ちする。
〔あれは称号『茨木童子』の力です。頭に思い描いた茨を実体化させ、自在に操ることができます。無論、制限はありますが〕
(何で茨!?―――あ、『茨木』だからか。って、そうじゃなくて!その茨って、どんなのがあるの?)
〔例えば、触れただけで燃える茨や、毒霧を吹き出す茨などがあります。どうやら今のは、ドラゴンの鱗越えの硬度を誇る茨のようです。加えて、棘に触れると爆発します〕
(こわっ!)
確かに恐ろしい攻撃だが、恐ろしいのは茨木童子だけではない。
「おらぁ!!」
今度は星熊童子が接近し、拳を思い切り振るってくる。
「ヤッバァ・・・!ていうか、いくら鬼だからって力強すぎない!?」
「俺には『怪力』があるからな。俺に膂力で勝てる奴は、同じ鬼の中にもいねぇぜ!」
〔膂力だけではありません〕
(え?)
〔
(反則じゃん!)
〔お言葉ですが、
(だとしても、これはヤバいでしょ!あんなの食らったら・・・!)
〔
(っ!そうか!)
「次は外さねぇぞ!『山岳爆怪』!」
再び星熊童子が拳を振るう。しかも今度は拳に、時空に干渉する力と、拳から火山の噴火を起こす力が宿っている。
―――だが、無駄だ。
「これならどうだ!『
「バカな!? 俺の拳を諸に食らって、無傷だと!?」
「隙だらけだよ!」
相手が混乱したところで、今度は
「ぐぁ・・・!!」
うめき声を上げ、星熊童子は大地を削りながら後退った。だが、あまり効いているように見えない。
「
「『居合・一文字』」
いつの間にか、酒吞童子が背後に迫り、大太刀を振り抜こうとしていた。彼女の手にする大太刀が、黒い炎を纏っている。あれはマズい!
〔しゃがんで!〕
(合点!)
「完全に隙を突いたと思ったんだがなぁ・・・」
「なんっじゃあれ・・・? 背筋が凍りそう・・・」
「良い勘してるじゃないか。今の斬撃に掠りでもしていたら、お前は消し炭になってたよ」
「消し炭!?」
「あたしの妖刀『地獄門』の力さ。『地獄門』から噴き出す黒い炎『終炎』は、正しく地獄の業火。1度燃え始めたら、あたしの意思で止めない限り、決して消えることのない炎。火の粉1つでも食らっちまえば、いくらお前と言えど骨まで焼き尽くされる」
「・・・!!」
〔加えてあの炎は、スキルの力が通用しないようです。『
(マジか!)
称号『茨木童子』、
「さあどうする? カルメラ」
「くっ!」
数的有利と妖刀の力に光明を見出したことで、鬼達の志気が上昇し、巧みな連携を見せ始める。これは、想定以上に厳しい戦いになりそうだ・・・!
【後書き】
本作をご覧いただき、誠にありがとうございます!
遂に始まりました、鬼の頭領との戦い。いったいどうなるのか!?
このお話をより良いものとするため、皆様に楽しい時間をご提供するため、皆様のご感想をいただけると幸いです。
(・・・『面白い!』と思ったら、高評価もお願いします)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます