第2話 主様、お昼寝中
―――
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〔・・・ん。ここは・・・〕
気が付くと、ワタシはどこか知らない場所にいた。どこまでも続く草原。辺り一面緑に溢れた場所。ワタシのいた世界とは別物だと一目でわかった。
〔本当に来たのですね。アランの世界―――ワタシから見た異世界へ〕
不意にワタシは、今目にする景色に、胸の中の何かが打ち震えるような感覚がした。もしもワタシに涙腺があれば、涙を流していたかもしれない。
〔・・・なんて、美しい〕
気付けばそう呟いていた。
(! これも、新たな感情でしょうか?)
―――後にこの気持ちは『感動』なのだとワタシは知る。しかしこの時のワタシは、別のことが気になり始めていた。
〔考えてみれば、なぜワタシは周りの状況がわかるのでしょう?〕
当然ながら、ワタシには目も耳もない。だがあの場所で、ワタシは確かにアランの声を聞き、アランの姿を見た。どこまでも続く白い空間。肩まで伸びた白髪に、白く長い髭、本人に対して少し大きい白い服を着た老人(神)。全て見えていた。少女―――この世界での『
〔!そうです。鑑定です。そういえばアランから、ワタシを鑑定するよう言われていましたね。とりあえずいつも通りやってみましょう。ワタシが周りの状況を確認できる理由が、わかるかもしれません〕
早速鑑定してみた結果、次のような情報が得られた。
名前:????
種族:人間
性別:女
年齢:18才
身分:旅人(????)
スキル一覧
・??スキル『空???』
・???『???資?』
・??『剣?』
・権能『AI』
(・・・ワタシを鑑定したはずなのに、
どうやら今のワタシは
〔ならば、『AI』に的を絞って鑑定してみましょう〕
さて、今のワタシはどうなっているのやら。
権能『AI』
【
・
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1つの権能の中に3つのスキルが統合され、その中にさらに複数のスキルが統合されている。どうやら権能は、複数のスキルを1つに統合しているらしい。と言うより「強いスキルは、1つのスキルに複数のスキルを宿している」と言った方が正確なのだろう。
〔なるほど。1つだけでも大きな効果をもたらすスキルを幾つも詰め込んで1つのスキルにすることで、権能は大きな力を発揮しているのですね。天変地異を起こせるのも納得です〕
ちなみに、ワタシが状況を把握できる原因は『
(恐らくワタシが再起動する前に、アランがインストールしたのでしょうね)
しかしこの内訳、元のワタシの力をそのまま権能にしたような組み合わせだ。ワタシ自身を権能にしたのだから当然といえば当然だが、アランが明確な意思を持ってこの編成にしたのなら、彼は最初からワタシの力に目を着けていたことになる。
(ワタシでなければならない理由が?)
少し気になるが、情報が少ない。今は考えても仕方ないだろう。それよりも今は
〔
「すぅぅ・・・かぁぁ・・・」
〔あの、
「かぁぁ・・・」
〔・・・
「・・・ふへへ、もう食べらんない・・・かぁぁ・・・」
というように、先ほどから
(まったく、真昼間からこんな開けた場所で眠りこけているとは・・・アランが気にかける理由がわかる気がします)
(まさか
実際、我々は現在魔物達に目を付けられている。『魔素感知』の精度をさらに上げて使った結果、この草原に数十体、さらに草原から西へ程近い森林にも数十体の魔物が潜んでいるとわかったのだ。魔物達はこちらの様子を伺いつつ、少しずつ距離を詰めてきている。まあ草原のど真ん中に、如何にも無防備な人間がいたら当然こうなるだろう。とはいえこのまま放って置く訳にもいかないため、とりあえず魔物達を
種族:ゴブリン
ランク:E
種族:フォレストウルフ
ランク:D
種族:スライム
ランク:F
このように種族とランクが表示される。ランクとは魔物の強さの指標で、下から
F:子供1人の危機
E:大人1人の危機
D:集落の危機
C:村の危機
B:町の危機
A:首都の危機
S:国の危機
SS:大陸の危機
SSS:世界の危機
という内訳になっている。今回はほとんどがF・Eランク、良くてもDランクの魔物のみで構成された群れのようだ。
(一体一体は低級のようですが数がそれなりにいますね。今のワタシには対処は不可能。
いくらワタシが権能といえど、ロボット兵もその他帝国兵器も無い状態ではこの群れを討伐するのは難しいだろう。ワタシの持つ力は直接攻撃に使える物ではないのだから。
〔
『魔素感知』が突然大きな反応を示し、ワタシは言葉を止めてしまう。どうやら北東の方角から、巨大な飛行物体が高速で迫ってきているようだ。生態反応があることから、魔物と見て間違いない。全長10mを超える巨躯に体表には赤い鱗。頭には2本の角が生え、口には鋭い牙がズラリと並び、背中には巨大な翼が生えている。そして圧倒的な魔素量。この魔物は一体・・・。
〔『
種族:レッドドラゴン
ランク:S
種族スキル『
・種族スキル
その種族のみが持つスキル。他の種族には獲得できない。
〔え、Sランクの魔物!? どうして急に!?〕
しかも魔物なのにスキルを持っている。スキルは人のために作られたもののはずでは?
〔いえ、そんなことを言っている場合ではありません! 今は一刻も早くこの場を離れなければ!〕
しかしレッドドラゴンは、もの凄い速度でこちらに接近。5秒も経たないうちに我々の真上まで来られてしまった。そしてその位置で滞空し、こちらに向けて口を大きく開く。開かれた口にエネルギーが収束していく・・・!
・『
自身の魔素と周囲の魔素を口に収束し、強力な炎の波動を放つ。その一撃は大地を抉る。
〔マズい! あんなもの食らったら・・・確実に死ぬ!〕
「かぁぁ・・・スイーツはぁ・・・別腹ぁ・・・」
〔―――マ・ス・タァァァァァ!!〕
こんな状況でも呑気にお昼寝とか、何考えてんだ
「グォォォォォォォォ!!」
〔っ! ヤバッ―――〕
時既に遅し。レッドドラゴンの『
〔っ!?〕
再び視界が安定した時、なぜか
・・・いや、どうして!?
「ふぁ~・・・せっかく気持ちよく寝てたのにぃ・・・」
っ!この声、
「グルルルル・・・!!」
「そんな唸られても、僕まだ眠いんですけど・・・って、ん? よく見たらコイツ、レッドドラゴン!? やったーー!! 最高級食材ゲットだーーー!!!」
〔!?〕
Sランクの魔物が、食材!? 一体何を言って―――
「グル、グォォォォォォォォ!!」
〔っ! また『
「あれ、もしかして怒った? でも無駄だよ!」
言うや否や、
〔い、一体何が・・・〕
「ところで、さっきから頭の中で声がするけど、君は?」
〔っ!〕
そうだ、ワタシは
〔挨拶が遅れて申し訳ありません。ワタシはラグ―――権能『AI』といいます。神アランより、あなたのサポートを依頼されました。これからどうぞ、よろしくお願いします〕
それが、ワタシと
【後書き】
本作をご覧いただき、誠にありがとうございます!
このお話をより良いものとするため、皆様に楽しい時間をご提供するため、皆様のご感想をいただけると幸いです。
(・・・『面白い!』と思ったら、高評価もお願いします)
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