第30話 祐vs麗花 3
「でもあのリボンは……」
でもあの時、自分の怒りに身を任せて地面に投げつけた後、廉が自分の頭に結んで捕縛隊の身代わりになった。
今は廉の手元にある。今思うと自分の身勝手な行動で手放してしまった事を後悔していた。
「自業自得だな……でも、今は戦いに集中っ!」
山積みの机をなぎ倒しながら、埃を撒き散らして出てきた。流石に麗花も呆れて見ていた。
「大丈夫かよ?」
「ゴホッゴホッ! 何とか……おっ!?」
煙が散ると、地面にとある物が落ちているのを発見した。
「こ、これは、輪ゴムだ!」
「どうしたんだ。まだ戦い気はあるのか。それとも輪ゴムで戦うつもりか?」
「んな訳ねぇ!ちょっと待ってろ!」
輪ゴムを拾い上げると、すぐさま頭に結び始めた。 いつも朝に廉に結んでもらっていた。しかも廉はいないし、輪ゴムだから始めての事であった。
そして苦戦して不器用ながら見様見真似でポニーテール状態にして髪を垂らした。
「よし! 見様見真似だが、これでばっちりだ!」
「へっ、準備はいいか」
「今度こそ、本当の戦いの始まりだ!ここからの俺はもっと強いぜ!」
祐は砂煙の中から飛び出て、攻撃を仕掛けた。
すかさず麗花は反応して鞭で迎撃を仕掛けるも、祐は身体を捻りながら避け、真横に現れて隙だらけの顔面にパンチを繰り出した。
拳は頰にめり込み、空を斬りながら力任せに殴り飛ばした。
麗花は山積みの机に突っ込んで机が一気に流れ落ちて、砂煙が舞いながら机の下敷きになった。
やはり先ほどよりも動きが自由になっている。輪ゴムだから少しぎこちなさは残るものの、髪が邪魔にならず、いつも通りに動ける。
「やっぱり髪は結んだ方が動きやすいぜ!」
喜びを見せる祐だが、気を緩めず、崩れた机の山を見つめた。
「まだ、奴は来る……」
すると崩れてぐちゃぐちゃになった机の山の下にある隙間の中から鋭い眼光が見えた。
その目と目が会った瞬間に、祐の身体を感覚的に痺れさせた。
隙間の中から、突如鞭が直線上の伸びて祐の首を絞めた。
「くっ!?」
「蝶峰鞭を舐めるなよ」
その力は凄まじく、祐の力では外す事が出来なかった。
「もらったぁぁ!」
祐が鞭を噛みちぎろうとした瞬間、机の山から麗花が机をなぎ倒しながら現れ、そのままの勢いで祐の腹に飛び蹴りを決めた。
蹴りが祐に密着した状態のまま黒板に激突して、黒板に亀裂が入った。
壁にめり込んでいる状態の祐を更に追撃した。距離を取り、一気に走り出して再び飛び蹴りを食らわし、壁を突き破って壁は完全に崩壊して隣の教室へとステージを変えた。
「ど、どうなって下の階の様子は!」
「分からんわ!だが!まだ万丈祐の奴は生きておる」
屋上のフェンスの外で縛られている二人には下の階で何が起きているのか、さっぱり分からなかった。
何度も揺れが起きて、フェンスにしがみつくので精一杯だった。
「くっ……祐、お前は勝っているのか……どっちだ!」
「勝っていると祈るしかないわい!さもないとワシらが死ぬことになる!」
瓦礫に潰された祐は何とか脱出したが、攻撃された腹のダメージが蓄積されており、体力がかなり消耗していた。
「ちきしょう……結構やるじゃねえか」
起き上がった瞬間、破壊された壁から、モップの持ち手側が飛んできた。
瞬時に気づいた祐は、体を後ろに反り返って攻撃をすれすれに避けた。
投げられたモップは教室の壁に深く突き刺さっており、冷や汗をかいた。
「うわわ……危なかったぜ」
「上手く避けやがったな」
麗花が破壊された壁から、こちらを覗いて来た。祐は壁に刺さったモップに抜き、麗花に向けて突きつけた。
「お前も武器なら俺も武器を使わせてもらうぜ。はぁ!」
モップの先端を突きつけ、一気に突進した。
麗花も迎え撃つように鞭を突いた。真っ直ぐと飛んできた鞭を祐は軽く体を傾けて避けた。
「何度言ったら分かる! そんな物今の俺に通用しねぇぜ!」
「果たしてそうかな?」
鞭は教室の端に転がっている椅子の足に巻きついた。
麗花は巧みに操り、椅子を力強くこちらに引っ張り上げた。
背後から迫る椅子に直前で気付いた祐は咄嗟に判断して避けた。そして、自分の真横を通り過ぎた椅子を麗花の元へとサッカーボールの如く蹴り飛ばした。
麗花は目の前から勢いよく飛んできた椅子の足を掴み、そのまま投げ捨てた。
そこち目の前から現れた祐によって顔面をモップで何度も殴られた。
そしてモップの先端で強く突かれた。だが足に強い踏ん張りを入れて、体勢を崩す事なく後ろへと身体を引きずった。
「ちっ、ここまで疲弊されるのなんて久しぶりだ」
「アタシだって、聖燐の野郎以上にタフな野郎だ」
体勢を戻すと、鞭を再び操って近くの椅子に巻きつけ、おおきく振りかぶって祐へと投げつけた。
祐は軽く避けるが今度は机が投げ込まれて来た。麗花は次々と色んな物が飛んで来るが祐はどれもギリギリでかわして、麗花の元へと再び向かった。
そして飛んできた椅子を踏み台にして、隣の教室へと飛び込んだ。
「退却!」
「逃すか!」
鞭で椅子を掴もうとした瞬間、祐がモップを投げつけ、上手く鞭を持っている手に直撃した。
「くっ!」
そのまま手から離れて、地面に転がり落ちた。この状況で二人は再び睨み合った。
戦いも長引き、息が荒くなった。だが、まだ二人には戦う気力があった。
「これで両方とも失ったぜ。打つ手なしか?」
「へっ、こんな物なくても戦えるさ! オラァ!!」
地面に転がっている瓦礫を蹴り飛ばし、祐が砂が目に入り油断した瞬間に腹へと強烈な一撃を加えた──
いや、その攻撃は届いていなかった。
「何!?」
「久方ぶりに接近戦に持ち込んでくれたな」
麗花の足は祐によって掴まれていた。
ちょっと痛そうにしているが、何とか麗花の足を押さえ込んだのだ。
「食らいやがれ!」
「なっ!?」
そして祐が麗花の足を両手で持つと、足を抱えて身体を捻って身体ごと持ち上げて背負い投げのように思いっきり地面に頭から叩きつけた。
地面が大きく揺れて、激しい音が学校中にこだました。
「はぁ……はぁ……」
「く……っそ」
麗花は起き上がる事はなく、意識が遠のき、気を失った。
「やって、やったぜ」
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