第21話 こちらも夕食の時間

 獄門学園内で聖燐と廉は、朝からの様々の出来事があり、あれだけうるさく言っていた汚い布団を被ってぐっすりと熟睡していた。

 廉は静かに仰向けで寝ているが、聖燐はだらしなく口を開けて涎を垂らして、布団から足を出して寝ていた。

 外は暗くなっているはずなのだが、この塔では何時なのかは分かる手段が殆どないのだ。

 すると、いきなり塔全体に激しく揺れるベルの音が耳の中にキーンと響くほど鳴った。

 この音には二人は真っ先に飛び起きて、目は完全に覚めた。


「な、なんだ!?」


 音が鳴り止み、耳鳴りが残っている中、スピーカーから男の怒鳴り声が響いた。


「クズ共さっさと檻から出ろ!! 十秒以内で出ろ!!」


 男の声が終わった瞬間、カチッと何かが開く音が聞こえた。

 更に塔全体がザワザワと騒がしくなり、廉が外を見ると全員が檻から出て来て姿勢正しく気をつけの姿勢をしていた。


「外へ出るわよ」

「はぁ?」


 今の言葉が何を意味しているのかを理解して、廉はリボンを結ばずに檻の外へと出た。


「貴方も早く! 電流は止まっているわ」

「え、え、え?」


 聖燐も廉の呼びかけをすぐに気づき、すぐさま檻の外へと出ようとした。扉から出ようした時、丁度十秒が経ち、いきなり猛スピードで扉が閉まり、鍵がかかった。聖燐はギリギリ出て、スカートだけが少し挟まった。


「ふぅ……危なかった」


 スカートを挟まれた扉から離すと、少しばかり焦げていた。

 これには聖燐も冷や汗をかいた。閉まった途端、電流が流れ始めたのだろう。


「挟まれたら、命は無かったって訳かよ……殺す気かよこいつら」

「早く気をつけをしなさい」

「はぁ?」


 廉は姿勢正しく気をつけをして来た。

 正燐も廉に習ってすぐさま気をつけした。

 その頃になると、先ほどのザワザワしていた空間も静まり、全員が気をつけをしていた。もちろん燈や芽依もしっかり気をつけをしていた。

 全員が出た後、更にスピーカーから声が鳴り響いた。


「隊員に続き、一列で食堂に行け!」

「やっと食事か。昼飯食ってないから、腹減ったぜ……」


 下の階の囚人から一列になって、十階の塔の入り口から外に出て行った。塔の入り口には武装した隊員数名待機している。

 十八階にいる聖燐は、その光景を上から覗き込んだ。


「まるで映画で見た刑務所だな」

「もうすぐで私達が降りるわよ」

「おう。それにしてもここに来て数時間程度なのに、かなりあたしら嫌われているようだな」


 その階の全員が、廉と聖燐を睨みつけていた。友好的な目ではなく、殺意丸出しの顔で。


「あの綺麗な顔ぐちゃぐちゃにしてやる」

「明日には泣かせてやる」

「こここ恐ろしさ教えてやる」


 辺りから聞こえてくる殺意満点のヒソヒソ声。

 そして二人がいる階の囚人も降り出した。二人はそれを追うように降りていく。階段を降りていると聖燐の後ろには、腹が出っ張っている太った女がいて、聖燐を睨みつけて来た。


「すげぇ圧力を感じるような……」


 そのまま背後からの視線を感じながら歩いていくと、その脂肪が詰まった腹で聖燐をわざとらしく背中から弾き飛ばした。


「うわっ!」


 狭い階段ながら目の前に廉を上手く避けて、そのまま下の階まで転がり落ちて、壁に激しく背中からぶつかった。廉はすぐに後ろの女を睨み返した。


「おっとおっと済まないねぇ。わざとじゃないんだよ、わざとじゃ」

「貴方ね──」


 女は聖燐を嘲笑った。廉がその女に怒ろうとした瞬間、聖燐が口を挟んできた。


「あたしは大丈夫だ。さっさと行くぞ……」

「大丈夫?」

「あぁこのくらい全然。祐が繰り出す一撃に比べればれこんなもん、屁でもねぇぜ」


 心配そうにする廉。聖燐は無理やり余裕の表情を作った。背中を抑えており、全然で済ませる痛みではなかったはずだ。

 その後ろから、太った女が苛立っている顔で言ってきた。


「おい、早く行けよ」


 廉は怒ろうと口を開くが、聖燐が静かに首を横に振り、それを止めた。聖燐の膝部分を見ると、青く晴れていた。


「ごめんなさいね、立てる?」

「これくらい余裕だ」


 聖燐は重い腰を上げて、おぼつかなく歩き始めた。

 あんなに喧嘩っ早かったのにと、不思議に思ったが何も言わずに歩いて行く聖燐についていった。

 


 食堂へと着くと、制服を着た女性囚人達が何列もある細長い机に座りながら、喋りながら食事を取っていた。見てみるとグループが存在するのか、固まって食っているグループが多い。

 二人はまた一列に並ばされて長方形のプレート皿とスプーン一個と鉄のコップが入ったトレーを持たされた。

 周りの流れに身を任せて、トレーを持って進み、給食のおばちゃんのような白衣の格好をした男性隊員にお玉一杯の謎のドロドロした緑と黄色固形物が混ざった白い塊を入れられて、聖燐は言葉を失った。


「こ、これは……」

「豆とコーンを煮込んだ物にじゃないもを加えた物だ」

「食べれるんだよな……これ」

「あぁ残すのは禁止だからな」


 どんよりとして次へと進んでいく聖燐。廉もその謎の料理を入れられて、少し気味悪がるが我慢して進んだ。

 次に聖燐が入れられた食べ物は、奇形な顔をした魚の丸焼きが出てきた。どう見ても一般的に見る魚の丸焼きとは程遠く、顔が青ざめた。


「これ、何の魚ですかね……」

「さぁ、でもお残し厳禁。意地でも食ってもらう」

「は、はい……分かってます」


 次の食事はスープで、少しは期待してもらいに行った。


「流石にスープはマトモだろう」


 その色はドス黒く、謎の肉が浮かんでいた。更にドロドロしており、生臭かった。聖燐は不気味な予感を感じて、恐る恐る苦笑いをしながら隊員に聞いた。


「これ、まさか人の肉なんて冗談なんてないですよねぇ〜」

「そんな事、あるわけないだろ……うん。多分」


 これ以上聞くと心臓に悪いと何も言わずに次に行った。次は水を入れてもらったのだが、どう見ても茶色く薄汚れていた。


「あの……これ、水ですよね」

「泥水をろ過したんだ。ちゃんと水として飲めし、他の料理もろ過水で作った料理だ。マズイとは言わせねぇよ」

「……もちろん」


 そのまま静かに次へと行き、カッチカチの硬いロールパンを貰い、空いている席に廉と共に対面で座った。聖燐は食事前の元気は完全に失って、ゲッソリと痩せていた。


「これ本当に人間の食べる物なのかよ……」

「でも、これを食べなきゃ生きて行けないわよ」

「今日生きれるか分からないのに、最後の晩餐はこれかよ。くそぉ……」


 夜、燈に何されるかわからない聖燐にとってはこんな食べ物でも大事なエネルギー源となる。

 だから、食わなきゃ死ぬ。そう思い、まず謎の腹から思いっきり噛み付いた。


「ま、まずい……」


 まるで焦がした魚に更に炭を掛けた味だった。でも『食べないと死ぬ!』そう自分に暗示を掛けながら、魚にむしゃぶりついた。廉も覚悟して謎のスープをスプーンでよそって口に入れようとした時、廉を呼ぶ声が聞こえてきた。


「廉お姉ちゃん!」

「お前は確か……芽依だっけ?」


 燈の事件の後に残っていた小さな女の子だったのだ。

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