第20話後半 攻撃的なギフト

「…〝カーボナイト〟の使い方、絶対間違ってると思うんだが。泥蛇的にはアレでいいのか?もともと防御のためのギフトだろ。あれじゃ盾で破壊行為してるようなもんだ」

 双眼鏡も使わず、遠目で起こっている〝フルート〟を持つ一行と〝カーボナイト〟、そして仲間の〝ミエ〟との戦闘を、煙草を咥えながらニーナは眺めていた。

 ふーっと白い線のように煙を空に飛ばすと、耳裏に貼った信号シールから泥蛇の悲しそうな声が聞こえてきた。

〈泥蛇、なんて格好悪い言い方しないで。〝ボア〟がいいな。〉

「傷つく心もないくせに呼び方が気になるのか?」

〈呼び方って大事だよ。なんだか強い悪者っぽい感じがするでしょう?その方が我々と戦う人々のやる気がいっそう高まるもの。〉


 呼び方を気にするしょうもない理由に、ニーナは雫のような透き通った瞳を伏せため息をつく。

 泥蛇は声に元気を取り戻して〈使い方なんてなんでもいいんだよ。使ってさえくれればね。〉とリーヴスのハチャメチャ振りを歓迎した。

 晴天とゆるやかな風の下、青みがかった銀髪をなびかせて岩場に座るニーナはのんびりと煙草の苦みを味わう。

 〝ラダル〟で戦況を感知しながら、泥蛇の意向を再度確認する。

「あたしはギフトを持っていないていで本当にいいのか。ジャックやジアンにも秘密にするのなら使用はなるべく控えることになる。けど使わざる得ない時は使うぞ。勘の良い奴にバレることは想定しておいてくれ」

〈わかってるよ。でも三人の中では君のギフトが一番隠しやすいから。ジャックとジアンにはギフトは16個って伝えてあるんだ。それは〝フラム〟の発見をソーマに気取られないためさ。〉


 〝ブリッツ〟を持つジャック。〝ミエ〟を持つジアン。

 たまたま宿ったギフトによって真相を教わらなかった彼らに、ニーナはほんの少し同情した。

「まあ、数が合わないってだけでも向こうは慎重にならざるを得ないからな。〝フラム〟はどういった機能として人間に宿るんだ?」

〈想定だけれど、一番身近な人物のギフトを使うことができると思う。本来の機能としては全てのギフトの機能と繋がることができるわけなんだけど。〉

「それはそれは。一人勝ちになるギフトがいたら計画の遂行に支障が出ないか?」

〈〝ヴィアンゲルド〟が言うには〝フラム〟は他のギフトと違って怪物にはならないそうなんだ。ニーナ。ギフトの使用について〝プレリュード〟で学んだ〝制限〟について覚えている?〉


 戦闘訓練以外にも、ギフトを持つ彼らはギフトについての学習を〝プレリュード〟にて行っている。ギフトはエンドレスシーに反映できないため実践は現実になるが、各ギフトの名称や現実の機能については大方既知していた。

「現実でギフトが宿ると各機能が使える。でも一定以上の出力で使うと〝ヴィアンゲルド〟みたく宿主である人間を食い潰してギフトそのものが誕生してしまう…それを怪物化と呼んでる。だからギフト持ちはそれぞれ怪物化しないよう意図的に制限する必要がある…だっけか」


〈それそれ。

 ジャックならシンプルに出力の高さを抑える必要がある。これは君も同じで効果範囲を広げないよう出力を抑えているね。

 ジアンは必ず刃化していない、無防備な部分を残す必要がある。これは〝カーボナイト〟も同じ。

 他のギフトもなにかしら制限が必要なわけで――

 つまり〝フラム〟は〝そもそも本来の機能として使うことができない〟という制限があるんだよ。怪物化しないために宿主は一つのギフトしか使えないだろうね。〉


「…。キヴォトスに実装しないギフトだとは聞いていたけど、じゃあなんのためにあるギフトなんだ。無双できるけどできないことが制限だなんて。それどう役に立つんだ?」

〈立たないよ?〉

 丁寧な説明から一転、泥蛇のあっけらかんとした解答にニーナは思わず一拍黙る。煙草の灰が服に落ちてしまい、やれやれと払った。

「だったら〝フラム〟なんていちいち気にしなくていいんじゃないか。お前たちが珍しく妙に気にかけてるから用心深くいようかと身構えたってのに。役に立たないなら放っといていいだろ」

〈うーん。そうも言っていられないんだ。起動しないわけではないからね。それにね――、〉

 温厚で友好的な泥蛇の声音が気付けないほど深い場所で嘲笑を含ませる。


〈〝フラム〟の存在は〝Causal flood〟には不要なものだけれど、アレを求めてソーマたちは動く。それなら存分に有効活用しよう。我々はそういう存在だから。〉



――――――


「…ッッ‼」

 〝ミエ〟の所持者――ジアンはさすがに余裕がなくなってきた。


 イルファーンが波動で感じ取った場所に小石を配置させると、それらは大岩となった。障害物があるせいで先ほどより動きづらさが生まれる。

 その岩々の影からコアとペトラがジアンに向けて牽制を行う。〝フルート〟は〝ミエ〟の刃で十分防げるが、防ぐ必要があるくらいには強力だ。


 防御に刃の盾を使うが――

 ――ゴンッッ‼‼

 と刃の盾を破壊され、その鋼鉄より硬く重い拳が突き出される。


 ギリギリのところでリーヴスの拳を回避し、ジアンはあえて自分の足元から刃を突出させ、大きな跳躍でリーヴスから距離を取る。


 前衛はリーヴス、次にイルファーンが支援し、後援にコアとペトラがつく。

 うまく抑え込めているも、コアとペトラの息は大分上がっていた。

 二人は驚異的な連携を取りつつ、なんとなくお互い考えていることを察する。

(私たち身体は生身だからあの筋肉スキンヘッドおっちゃんみたいに冗談でも〝ミエ〟の刃に触ることはできない)

(重さを変えられない以上、盾で防いでもイルファーンみたいに抑え続けることもできない。あのハゲ筋肉オヤジやイルファーンほど俺達は体力もない。そろそろ決めないと)

 二人が岩陰に隠れて一旦動きを止めた時、ジアンの刃を潰しながら追い込むリーヴスが声を荒げた。

「この全身凶器みてぇなギフトの名前はなんて言うか誰か知ってるか⁉」

「〝ミエ〟だよ‼」

 速攻で答えたのはペトラだ。リーヴスが味方かどうかまだ確証はないものの、なんとなく答えた方が良い勘が働いた。

「話の早ぇ奴がいるのは助かるな。じゃあこの〝ミエ〟の動きを数秒でいいから完全に止めてくれ‼」

 リーヴスが前衛でジアンの動きを抑え、間は地面をえぐって現れる刃は波動で感じて先読みするイルファーンが抑えることになる。

 手が空くのはコアとペトラだ。


 ペトラは一度コアのもとへ合流した。

「コア。〝フルート〟の使い方、ちょっとアレンジしたいからサラの所行ってくる。合図したら弓矢で撃って」

「今離脱してほしくないけど、――分かった。信じる」

 少し意地の悪い笑みをお互い浮かべ、二手に分かれた。


 〝ミエ〟相手に平然と接近戦で挑んでくるリーヴスに、ジアンは苛ついた表情を浮かべる。

「どっちが全身凶器なの。――ッ、お前、沈没都市の軍人だね」

 堪らず文句を垂れるも、目を潰されそうになって身を捻る。

 もう一度刃を勢いよくリーヴスに押し出しなんとか距離を確保する。純粋な殴り合いではリーヴスの方が強いとジアンは思った。


 リーヴスは両拳を瞬きより速い速度で突き出し刃の波を粉砕させる。

 まるでただ身体が強化されただけのように振る舞う彼だが、正直〝カーボナイト〟の重さは身体に負荷がかかっている。

 表面の筋肉に、というより内臓の方になにか異常を感じる。吐血や鼻血になりそうな不快感を根性で押し込み、平然さを装う。

「俺の素性なんか大したことねーよ。むしろお前の方がなんなんだよ。動き方見てもただの内陸住民じゃねぇ。だからって沈没都市の住民にも見えねぇ。どこ所属でなんのために戦ってるヤツだ?お前と同じギフト持ちを狙う理由は?…ギフト持ちじゃねぇ奴らに攻撃する理由も、聞きてぇとこだな」

 声を低くして、ジアンが隙あらば子供二人へ矛先を向けることを言った。


 5歳か、6歳くらいの二人の子供。

 小麦色の柔らかな金髪に琥珀色の瞳を持ち、愛くるしく美しい顔をしている。

 くるりとした長い髪の子と、サラサラとしたくせ毛のない短い髪の子。違うのは髪型と長さくらいでそっくりな二人だ。

 襲撃者が狙っているのはギフト持ち、そしてその子たちだとリーヴスには見えた。


 ジアンはけだるげにハァとため息をつく。物憂げなそれさえ色気がある。

「これは沈没都市のためだよ。滅びそうなんでしょ?沈没都市。君たちが死んでくれたら沈没都市は助かるよ。…って、沈没都市の住民なら説明してあげた方が納得して死んでくれるのかな」

 ジアンの皮肉にリーヴスは一瞬瞳を揺らしたが、次の瞬間には板についた悪役顔で笑っていた。

「冗談。納得できなかったから、俺は沈没都市から出たんだよ」


 ピュゥ‼と細く高い音が鳴った。

 ジアンはすぐにコアが放った矢だと理解したが、顔をしかめた。

(…そんな上に射撃ってどうするつもり?)

 リーヴスへの警戒は怠らないが、なぜか彼の猛攻は一休みしたままだ。

 よく見ればリーヴスの首筋や腕周りには汗の玉がいくつも結び、呼吸の荒さが知られないように取り繕っているように思える。

 ギフトの使用限界――怪物化しないための休息にも思えたが――


 ジアンの真上に到達したその矢は、

 蝶番型の大盾となって真っ逆さまに落下した。


 突如落下速度が変わり、ジアンは早急に刃の傘を作る。

 しかし、ペトラの指示によりサラとルカの銀糸の量が合わさり、その盾の大きさはジアンが用意した傘の面積を遥かに凌駕していた。


「―――グッッッ、ぅ‼」

 ゴッ‼ゴゴ‼と何重にも重ねた刃の傘が一層一層と壊されていく。

(いや‼全部は壊されない――)

 速度が落ちてきたことを知り、応戦できるとリーヴスの方を見たが。

 リーヴには追撃の意思はなく。誰かに合図を出すように右手を軽く握って振っていた。



「〝ミエ〟を停止させなさい〟‼」


 〝ミエ〟による刃の嵐が静まり、女性の声がその場を叩くように響いた。

 ジアンの刃が彼の意図とは関係なく彼の身体に戻っていく。

 驚きで理解もできないでいると、落下してきた盾が寸前のところで解かれ、ジアンの身体に巻き付き拘束される。


「やった!」

 ルカが小さく腕を上げて声を上げる。「見て!ママ!」とぐるぐる巻きになったジアンを指差してエレナに笑いかける。

 エレナとサラとカヴェリが代わる代わるルカを褒めてやった。


 ジアンは〝ミエ〟を強制的に停止させられ、顔以外ミノムシにされて地面に倒れた。

 ひとまず完封できたようだ。


 ペトラがコアのもとへ駆け寄り、お互い軽く拳をコンとぶつける。 

 二人はリーヴスと――リーヴスの合図で声を張り上げた女性の方へ向けられた。

 妙齢の女性が近くの茂みから姿を現し、木の葉や土埃のついた裾を手で払っている。


 コアとペトラのもとへイルファーンも合流する。

「…さて。お互い自己紹介しなくてはいけませんね。勿論、あなたも」

 リーヴスとエディ、――そしてジアンにもそう告げた。



ーーーーーーーーー


 ソーマはオーウェンとカマと一度二手に分かれた。


 〝ブリッツ〟の相手はオーウェン、カマ、そして精密兵器となったイングが請け負っている。

 赤茶色の液体は人型をつくり、マングローブの木を切断できるほどの水圧を乗せ、腕をしならせた。

〈とりゃとりゃぁああっ!〉

 イングがジャックの注意を引き、放たれる雷撃をある程度誘導させる。

 留めきれない雷撃はカマが弾き返すも、威力の強さに何度もバランスを崩される。

 木の根から足を滑らすカマを抑え、オーウェンは隙をついてジャックへS&W M29を発砲する。

 強力な銃弾だがそれは一発もジャックに届かない。全て雷撃に食われて炭化してしまう。


 マングローブに身を隠しながら、オーウェンは敵より精密兵器をわが物顔で乗っ取っているイングを見やる。気になってしょうがないのは沈没都市住民のサガだろう。

「いいんですかねぇアレ。Fage的にはかなり危うい存在なんですが…」


 同じくマングローブを盾にして、パワー負けしまくっているカマは汗を拭いながら息を整えている。

 〝エスタ〟は〝ブリッツ〟を跳ね返せるが、桁外れの威力はカマにも伝わる。〝エスタ〟で受け身を取っていてもなお、全身強打みたいな痛みがどんどん増していく。

 強がるようにカマはフン、とオーウェンのぼやきに答える。

「人を殺せるAIみたいヨ」

「でしょうね。初めて見ますがアレがいわゆるエモーションコピーを獲得したAIなんでしょう。ラクスアグリ島の調査で使われたAIですが、あの状態はつまり島のせいということでしょうか。であればやはりあの島は破壊して正解でしたね」

「まさか。アンタらおエライ連中のその判断で今こうなってんのヨ。…いや、違うワネ。あの島でソーマが生き残ったのなら、アタシみたいなのは―…」


〈カマぁ‼〉

 

 イングの腑抜けた呼びかけにすぐさま反応し、カマはマングローブから出てこちらに放たれた雷撃を跳ね返す。

 自身もやはり後ろに吹っ飛ぶが、それをオーウェンが支える。

 カマはニヤ、とジャックにむかって笑った。


「―――ッッこのクソ野郎が‼」


 ジャックは思わず怒鳴った。

 カマは雷撃を綺麗にジャックに返すことに成功した。

 ずっとパワー負けしていたが、跳ね返す角度をようやくつかめてきた。


 ジャックは跳ね返された雷撃を打ち消すため即席で強力なものを放つ。

 しかしその開いた脇にイングが滑り込んできたので致し方なくその場から飛び退いた。

 細かい電撃の矢がイングに向かって飛びかい、イングは〈きゃ、きゃああああ‼ほいっ、ほいっ――ぶええ‼〉と何発か避けたが5発ほど胴体に着弾し、液体の身体が蒸発してしまう。


 そんな中、イングは液体の腕を俊敏に伸ばした。

 こちらに来る――と身構えたジャックだが、その腕はジャックを通過した。


 汗だくになって戻って来たソーマは箱のような荷物をイングの伸ばされた腕に託す。

 それはオーウェンが持っていた箱だ。襲撃された際、走る速度に影響すると判断して港に残していた。


 箱の正体は分からないが、ジャックはその荷物ごとイングの腕を狙って稲妻を落とした。


 その衝撃は、箱のスイッチを押すことになる。


 箱が壊される威力を液体で庇ってなんとか減らし、イングの腕は完全に蒸発する。

 激しい蒸気で一度箱が見えなくなるが、次その姿を現した時はジャックが言葉を失った。


 Fage以前に戦闘用ロボットは存在していた。

 沈没都市のように虫をモデルにしたロボットまでは至らなかったが、Fage以前は四足歩行や魚型のロボットが軍事転用されたことがある。

 軍事開発に力を入れた――結果として沈没都市を導入しなかった国が開発したものだ。

 資源の確保が現実的ではなくなったため、さほど普及せず既存の数は少ない。

 またほとんどが内陸政府の懐に入った。そうなると見ることも珍しいのだが。


 四足歩行のできるロボットは装甲や建物を切り裂くためのブレードを持っている。

 箱そのものがブレードパーツへと姿を変えた。


 そのタイミングでいつの間にかマングローブの上へ上っていたオーウェンが空中でブレードの持ち手を拳で殴った。


 人間業から遠のいたオーウェンの戦法にジャックは戦慄する。

 とっさに雷撃のカーテンを広げるが、間に合わず右肩にブレードが掠めた。


 掠めた、といってももとより鋼鉄を切り裂くための素材なので骨に到達する裂傷となった。

 敗北は決まり、逃げるための落雷を手当たり次第に落としていく。


 カマは〝エスタ〟でギリギリ防ぎ、イングは残った身体の液体でソーマとオーウェンを包んで守った。


 やけを起こしたような落雷は次第に収まり、辺りを見渡せる頃にはマングローブ林が根だけ残して青々とした木々が消え失せていた。




――――――ー

「…今なんつった?」

「アメフラシのソテーです」


 衣服や肌が焦げているソーマ、カマ、オーウェンは、オーウェンいきつけのカフェにいた。

 とりあえず腹ごしらえをして話し合おうということになり、ボロボロの状態で三人は食事をしていた。

 しかし運ばれてくる料理にカマが顔を歪ませている。内陸生まれでも見たことのない料理ばかりで、それを平然と口にする元沈没都市出身のオーウェンにカマは畏怖の眼差しを送る。

 チラリとソーマを見ると、じっ…、と料理を見つめた後「…寝てる時にティヤに土だらけの生きた芋虫を口に入れられたことだってある。大丈夫。なんでも食べれる」と小声で唱え、タニシと香草の肉無しハンバーグを口に入れていた。

 カマは見たことない元沈没都市出身の二人に、なにかがひっくり返されたような感覚を覚える。


 騒然とした島だったが、海賊なども定期的に入って来ることから荒事には慣れている。脅威が去れば問題はないと営みを続けていた。

 


 オーウェンはソーマから〝MSS〟停止の理由、ラクスアグリ島の正体、現象毒、泥蛇とギフトの話しを知り得た。

 食後のコーヒーはぬるいがまともな味で、深い苦みが独特な料理の口直しをしてくれる。

 ふぅ、と小さく息をついて、オーウェンはソーマの襟から時折顔―銀の面―を覗かせるイングに苦笑を浮かべた。

「〝もう自分がいなくとも船員AIが沈没都市という大きな船を動かせる。不要なものを取り除く性質のあるFageのAIは故に停止した〟…それが一番有力な〝MSS〟の停止の理由だったのですがね。私自身、それを信じ切っていました」

 情けない、と言いたそうな苦い顔だ。

 

 〝MSS〟が誕生したきっかけは、小さな小さなある一家の失敗だ。

 失敗自体は恐らく、どの家庭にも言えた。

 ただ、その一家に時代を変える天才がいたことがこのFageに繋がる特殊な要素だった。


「〝MSS〟はそもそも教育AIだった…というのは知っています。…なんというか、筆舌しがたい気持ちになります。我が子のために〝MSS〟を作ったのだから」

 コーヒーカップを置いて、オーウェンは切なそうに微笑する。


 その天才はどこまで〝MSS〟の偉業を想定していたのか。

 話を聞く限り、本来は一人一人を助けるAIだったのかもしれない。

 しかし皮肉にも、時代はそれどころではなかった。

 すでに始まっていた資源不足。異常気象。終わらない争いと増える病。

 そして決定打となった月のホテル。

 理念を遂行するのならば。

 もう一人一人を助ける猶予はない。

〝MSS〟は生まれ落ちたこの世界をそう判断したのだ。

 …そして〝MSS〟自体はどこまで結末を想定しているのか。

 

 〝MSS〟が自己停止した経緯をまとめてみるとオーウェンは思った。

 ラクスアグリ島は確かに良い試験場だと。

 そこに蔓延る現象毒は「〝MSS〟のいない世界で向き合う自分の一面」が強く押し上げられるものだ。

 自分の持っている毒性と相手の毒性は常に共存している。

 その毒性を、FageのAIは「ゴミ」として分別してしまう。毒と向き合わなくていい人生設計をした沈没都市の住民は結果として、人口減少に歯止めがかからなくなっている。

 そして沈没都市の価値観は内陸を常に燃え上がらせてしまう。

 だから〝MSS〟は自分のいない世界で理念が続くように試験を用意した。


 結局ラクスアグリ島の試練は失敗に終わり、それよりも困難な試練となったそれが泥蛇とギフトだ。

 オーウェンの指先はついに額に当てられた。

「少々頭の痛い事態ですな。沈没都市はギフトの存在を認知して、恐らく今は脅威の計測中です。ギフト持ちが明確に沈没都市へ攻撃をしていませんからね。怖いのはギフトが脅威だと判断された時です。我々は地の果てまで追われて処刑されることでしょう。だからこそ、とでもいうのでしょうか。ギフトを持っていようが持っていなかろうが、…今我々人間がやるべきことは変わりません」

「やるべきこと?泥蛇をぶっ倒す以外で?」

 クッキーは食べれないと嫌がるイングにそれを押し付けながら、カマは尋ねた。

 不憫に思ったソーマがそのクッキーを受け取って口に運ぶ。

 そんなやりとりを朗らかに眺め、暗さのある笑みを浮かべてオーウェンは「今我々がやっているようなことですよ」と答える。

「沈没都市と内陸の共存こそ今のFageに必要な答えなら。……詭弁になりかねない言葉ではありますが、私たちは共存する生き物なんです。それを完全に忘れた世界が〝Nage〟…Fageの果てなのかもしれません。現に私が沈没都市出身であることを知って、ここの島民の人は良くしてくれますよ。最初こそ邪見にされましたがね。今ではこうして木くず入りクッキーだって持ってきてくれます。たくさん食べて欲しいみたいです」

〈え⁉この木くずって…人間的に嫌がらせじゃないんですか⁉沈没都市出身とヨソモノに対する、人間の悪意ある行動になるはずです‼〉

「イング、黙ってなさい。ただ作業が雑なだけだ」

 ソーマがイングの面を手の平で抑えた。そこが口というわけではないが、イングはノリに合わせて〈むぐぅ。〉とくぐもった声を流す。

 オーウェンはハハハと軽く笑い、また少し暗い表情を浮かべる。

「泥蛇とは、その共存の邪魔をする明確な敵と言う認識で良いのでしょう。人間のためにあえて毒として存在するギフトも、私たちの動き方によっては毒そのものです」


 ギフトを持つ一人であるカマは、オーウェンの推測にハッとする。

 ようやく、あの時のイングが自分に示した三択に毒を含ませていたと気が付いた。

 イングの面を引っ張り、悪態をつく。

「理不尽を正当化されているみたいでムカつくわネー。これで本当に人類滅亡したら本末転倒なんじゃナイ?」

〈やん!やめてでございます!滅亡がイヤならみなさん死ぬ気で頑張って下さい!〉

 イングはペチペチペチと短い手でカマの手を叩いて離させる。

 イングを責めても仕方ないので、カマはその手を優雅に自分の顎に絡ませた。

「んで。ギフトの情報と泥蛇っつー敵の情報を提供してあげたワケだけド。オーウェン、これからどうすんノ?そもそもなんで沈没都市から出てこんなトコにいんのヨ?」

 すると、オーウェンはなぜか爽やかな笑みを浮かべて天を仰いだ。

「いえ。その。内陸の女性と結婚することになったので沈没都市を出たんですよね」

 それを聞いてソーマは目を見張った。次いで小さく俯き、困り果てる。

「それは大変だ。所帯を持っているとは…。ギフト持ちである以上泥蛇には何度も襲われるだろうし、かと言って家族を置いて動くのは忍びないだろう」

 心の底から気の毒に思っていると、イングがツンツンとソーマの腕をつついた。顔を上げるとオーウェンは未だ天を仰いでいる。

 その状態を見てカマは悟ったようだ。

「どうせ浮気されて逃げられたんでショ。そんで傷心旅行にここを選んだのネ」

〈うわ。どうしてあなた…そんな非情な人…。AIだってもっと言葉を選択するのに…。〉

 イングに突っ込まれても気にせず、カマはさらに畳みかけた。

「たまーにいんのよネー。内陸住民と結婚するから沈没都市から出る馬鹿。ウチの店にも愚痴こぼしに来た客が過去に何人かいたワ」

「カマ。やめてあげてくれ。オーウェンが空から帰ってこない」

「どーせ夜の方の馬が合ってたんでショ。大体そーなのヨ。内陸住民が用あんのは沈没都市に在籍している人間だけヨ。持ってる金の量が内陸住民とは違うんだからぁッップ」

 ソーマがイングをカマの顔に投げ付け、イングがベッチとカマの顔に張り付いた。

 カマが席を立ちあがって暴れている間ソーマがフォローに入る。

「すまない。カマはちょっと、沈没都市の偏見があるから。後で叱っておく」

 天を仰いでいたオーウェンはようやく顔を下げ、悲しさを滲ませて微笑んだ。

「いいえ…。ぶっちゃけ彼の言い分は間違っていないのが痛くて」

「本当にすまない」

「いえ…。傷心中に黒い雲に出くわして〝あ~なにかに巻き込まれたなぁ〟とは思ったんですが、ちょっと心を癒してから先のことを考えようと思っていたところです。まあその、そういうわけですのであなた方に同行させて頂きたいと思っています。私がここに居続けても島民を巻き込んでしまいますから」

「こちらとしても君がついてきてくれることは心強い。歓迎しよう。オーウェン」

 スッと差し出されたソーマの手を見て、オーウェンは小さく吹き出した。

「…?なにか?」

「いいえ。以前お会いした時はもっとトゲトゲしていた人だったので。可愛い顔したマジでかわいくない男性…なんて噂があったくらいです。なんだか丸くなりましたね?」

 言われて、ソーマは珍しく頬をほのかに染めた。

「…昔は未熟者だったんだ。外見はわけあって老いていないが、精神は間違いなく老いているんだろう。今じゃイングの悪ふざけにも驚かなくなったよ」

〈ね‼昔のソーマはもっと怒りんぼで不器用だったのに!ソーマとの旅路が静かで退屈になっていたところです!お二人とも!歓迎しますよーーー‼(祝福のラッパ音)〉

「ふごごごごごろずばヨごのエエェアアイぃぃぃッッ‼」

 カマの顔にはりついたままイングはパッッパッパッパパパアアアァァ‼とラッパの音を響かせた。カマは青筋を深く刻んでイングを引き剥がそうと必死だ。


 そんな後方の一人と一機にオーウェンは楽しそうに笑った後、ソーマの手を握り針路を尋ねた。

「次の行先は?」

「〝フルート〟を持つ一行と合流するために、オーストラリアへ向かう」




―――――――――ー

 コアたちは村から足早に離れ、山奥の洞窟に移動していた。

 フルートでグルグル巻きにされ吊るされているジアンは退屈そうにため息をついた。

 耳裏の皮膚シートはリーヴスによって抉り取られ、今は最低限の処置を施された状態だ。鎮痛剤もない中、その傷はリーヴスたちとの戦闘で負った怪我より痛みがある。


「〝ソルジャー〟って怖いね。名前も任務も全部喋っちゃった。もうこれで僕は〝ボア〟の所に戻れなくなったんだけど。おねーさんが責任取ってよね。背中かゆいから掻いて。きもち良くして」

 甘えるような声音でエディに話しかけると、横からリーヴスに背中を叩かれた。

 素手とはいえリーヴスの分厚く硬い手は肺を打つような衝撃だ。ジアンは口から唾液を飛ばしてむせた。

「――ゴッフ…ッッ」

「馬鹿言ってんじゃねーよ若造。コアたちの話しを聞く限り、その泥蛇だの〝ボア〟だのは最終的にはギフト所持者を皆殺しにする気じゃねーか。それも、お前のゲロった情報とコアの情報が一致してねぇ。〝フラム〟の存在も知らなきゃギフトの個数もズレてる。自分の置かれてる立場分かってんのか。コアたちの話しが正しいのなら、お前は思いっきり泥蛇の捨て駒にされてんぞ」

「ゲホゲホ…泥蛇なんてかっこ悪い呼び方してほしくないんだって…。ケホッ!あーぁ、見てすごいよだれ出た。そこの君、拭いてくれる?」

 ジアンの視線は次にペトラに向かった。

 ペトラがなにか言う前に、リーヴスがジアンの頭を引っ掴みコアがそこらへんに生えていた葉っぱでジアンの口を拭いた。


「いたいたいたいたい‼なんなの!ちょっと、男が僕に触らないで。なにも楽しくない」

「なんで俺らがおめぇを楽しませなきゃいけねぇんだよ」

「サラたちまで殺そうとしやがって。ギフト所持者じゃなかったら逆さまにして吊るしてやったのに」

 リーヴスとコアが口々にジアンにきつく当たる。


 そんな前衛陣と少し離れた場所で、エレナやサラ、ルカとカヴェリは焚き火を調節しながら軽く腹ごしらえのできるものを用意していく。

 コオロギと豆と森で獲れた少量の山菜を油で炒める。

 あとはコアたちが潜水艇から持ってきた「かたいパン」でなんとか人数分こしらえることができた。

 イルファーンは近くに水辺があると感じ取り、そこで食糧や水を調達しに行っている。

 ジアンも入れれば10人もいるので食糧不足はすでに発生していた。


 置かれた状況も切羽詰まっているというのにギフトを巡る争いの大きさと深刻さに、リーヴスはげんなりとため息をついた。

 コアから聞いた〝プレリュード〟は想定未来であり事実だ。そしてラクスアグリ島の話しは〝MSS〟停止の真相だった。

 早急に沈没都市に連絡を入れたいところだが、とリーヴスは苦い顔をしてジアンの足元に座り込んだ。

「沈没都市がその計画を知ったら賛同するかもしれない。沈没都市の一番の心配事は内陸の存在。その次が沈没都市の人口減少だ。表面上、〝Causal flood〟はどっちも解消される。…だが、泥蛇の本質を考えればコアの見立て通り〝Causal flood〟は止めなきゃなんねぇ」


 沈没都市には泥蛇の計画に抗う明確な手段がある。

 内陸を見捨てて海へ出ないこと、だ。

 しかし沈没都市がそれを選択する可能性が低いことをリーヴスは苛つくくらい理解している。迂闊に沈没都市に泥蛇の存在を教えることはできない。


 それまで静かにしていたジアンだが、ちょっと身体を揺らしてペトラに催促した。

「ねぇ君。僕にもなんかちょうだい。あーんして」

 暗い空気をぺりぺり剥がすような場違いな発言をする。

 そんな彼の正面に立って、ペトラは目を座らせた。

「話聞いてた?」

「ううん」

「なんでよ。あんたにも関係のある話じゃない。あんたたちが泥蛇に協力したら大変なんだよ。〝Causal flood〟は沈没都市の人間は助かるみたいな話だけど、根本的には沈没都市の問題が解決するわけじゃない。〝MSS〟がいなくても沈没都市と内陸が一緒に生きられる方法を探すことが本当の解決策なのに」

解決策それを惑わせることが〝ボア〟の本質なんだぞって?ふふ、あははっ」

 乾いた彼の笑い声にリーヴスは鼻に皺を刻む。

「なにがおかしい」

「ふっふはは。無駄なことをそんな一生懸命になってたらおかしいよ。ねえ君」

 ジアンは〝プレリュード〟から知り得た情報を話すコアへ、腹の黒い笑みを向けた。


「〝ボア〟の正体はラクスアグリ島で生まれた宝物。ギフトも同じ。それは誰も使ってはいけないなかみだった。…ということは、最初から人間側は負けてるよ。だって――」


 負の感情は彼の声を甘ったるくさせる。

 泥蛇の正体を知ってもなお、彼の目には無駄なものしか映らない。


「きっと泥蛇なんかいなくてもこの世界の未来は変わらない。

 むしろ分かりやすくしてチャンスを与えている分、泥蛇の行いは別に悪いものじゃなくない?

 僕たちがちゃんと敵でいることで人間が泥蛇に勝つなら捨て駒にも価値があるし、人間側が負けるのならただ人の時代が終わるだけ。

 だってしょうがないもん。泥蛇がいなくても終わっていた人たちなんて。沈没都市だろうが内陸だろうが救いようがないんだから。

 実際に今君たちが一番懸念していることはなに?…フッンフフ…

 沈没都市が泥蛇を歓迎することだって。

 沈没都市と内陸云々以前のおはなしじゃない。

 それなのにどうしてまだ〝MSS〟がなくても人間が生き残れると思っているの?」


 心の奥底で誰もが零してしまいそうな弱さをこんな明瞭に吐かれては、言い返す言葉も見失ってしまう。

 リーヴスもコアもなにも言えないでいると、ペトラはコオロギをジアンの口に突っ込んだ。

「〝プレリュード〟で失った記憶、思い出したいとは思わない?」

「モグモグ…。思わないね。思い出す可能性はあるらしいけど、僕は別に。むしろ忘れていいくらい、嫌な過去だったんだろうね」

「コオロギ美味しい?」

「…まあまあ。もうちょっと辛い方が好き」

「美味しいことも忘れたい?」

「…食を引き合いに出すならもっと上等なものくれる?コオロギじゃん…」

 ジアンの表情が不服そうなものになる。年齢より幼く見えるその表情に、ペトラはぷぷっと笑った。

「じゃあコオロギより上等なものを探そうよ!見つけたらきっと忘れたくないものになるんだから!」

 ジアンがなにか文句を言う前に、ペトラは次々とコオロギをジアンの口に突っ込んでいく。

「私とコアはFageの失敗を超高画質で泥蛇に見せてもらった。サラたちは生まれた時から泥蛇との闘いに巻き込まれて。リーヴスたちギフト持ちは強制的に当事者にさせられて…」

 皿の中のコオロギがなくなり、ペトラは手を止めた。ジアンは頬をむくむくにさせてペトラを静かに睨んでいる。

 そんな光景が面白いが声を出して笑う場面ではないと、サラとルカが身体を震わせて耐えていた。


 空腹ではあったジアンは食べ物を吐き返すことはなく、ちゃんと咀嚼しているところを見てペトラは満足げに頷く。

「なにもしなければ理不尽で終わるところだけど、私たちこうやって集まってどうやって戦うか話し合えてる。そうできる力がある。それならその力をどう使うか考えないと…できることをやらないのは悔しいじゃん。諦めるのはやれること全部やってなにもできなくなってからでいいんだよ。まあ全部だからね!そう簡単にパパッと終わったりしないけど!」


 ペトラらしいなと微かに笑うコアの傍ら、リーヴスは音もなく地面に視線を落とす。

 沈没都市出身者としては彼女の言葉は身体の奥を針でつつかれているように感じる。



 エディは〝ソルジャー〟でジアンの拘束を続け、この〝笛持ち〟一行を丁寧に観察する。基本はコアという少年がリーダーだ。だが、彼にはない求心力を持つペトラが一人一人を繋げているように見えた。


 コオロギをとっくに食べきったジアンだがペトラに言い返すことはしなかった。ただ、非常に不本意な表情でそっぽを向いた。


―――――――――――

 ジャックは自力で右肩を止血する。

 荒い呼吸は吸えば熱く、吐けば冷たく傷を刺激する。

(クソが‼クソが‼なんなんだよあのジジイ‼)

 紳士然とした男性の既知外な攻撃は思いの外深かった。

 ギフトでも攻撃に特化している〝ブリッツ〟をもってして、生身のオーウェンに与えられたこの負傷はひどい屈辱だった。

 

 歯ぎしりしながら皮膚シートで傷口を覆い包帯で巻いていくと、耳裏の皮膚シールから泥蛇が声をかけてきた。

〈やぁジャック。結構ひどい傷だね。大丈夫?〉

「俺の信号から俺の身体のことまで分かるんですか」

〈勿論。その気になれば君の脳に信号を当てて痛みも消せるけど。やる?〉

 ジャックは不敵に笑う。

 泥蛇の性能は沈没都市のAIに通ずるところがあった。


 沈没都市のAIにはできるけれどやらない技術が複数存在する。

 エモーションコピーもその一つだが、この人体に影響を与える信号というのもそうだ。

 その応用がジーカリニフタ――生殖機能の停止にも一役買っている。

 やろうと思えば精神に異常を来すことも可能だとか。


 沈没都市のAIと泥蛇が決定的に異なるのは。

 人間に必要となればそれが毒となると分かっていても実行することだろう。


 ジャックは一応人間の了承を得る泥蛇に、いっそ誠意すら感じた。

「それはありがたい。存分に働けますよ」

〈良い返事だね。君の怪我は重傷だし、ニーナを応援に行かせるけど、基本は君に任せたいんだ。ほら、ニーナより君の方が強いから。〉

 耳裏の皮膚シールから心地よい振動が伝わってくる。

 数秒もすれば鬱陶しかった痛みが全て引いていった。


 残ったのはぶちまけたいほどの屈辱感だけだ。

 ジャックは茜色になった空を見上げ、昂る破壊衝動を言葉に乗せた。

「次は全員殺してやる」






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