幕間

つきの

「MOON LIGHT BLUES」

 月の光が淡く差し込むその窓辺は二人のお気に入りの場所だった。

 小さなソファに並んで座りながら、一緒に映画を観たり、わたしが読書している横で、あなたはジグゾーパズルをし始めたり。

 途中でピースを行方不明にしてしまって、わたしまで一緒に探させられた、なんてこともあったっけ……。

 パソコンのタッチ音さえ、BGMみたいに聞こえていたのよ。


 余分なもののない部屋だったけど、この部屋で一緒に過ごす時間が、わたしは好きだった。


 あなたは穏やかな優しい人で、でも優しすぎることは時には罪になる。

 心変わりを切り出されたのはわたしなのに、哀しげな瞳を見ていると頷くしかなくて……。

 わたしたちだけは大丈夫だって、根拠もなく信じていた。

 5年の歳月は長かったのか、今となっては短かったのか。

 あなたの心に、いつのまにか可憐な横顔の彼女が棲みついていたなんて。


 短かった髪を長く伸ばしたのも、不慣れなお化粧を頑張ったのも、少しでもあなたに綺麗だって思って欲しかったから。


 馬鹿みたい。

 馬鹿みたいかもしれないけど。

 幸せだったのよ、わたし。


 最後の夜に月が見れて良かった。

 いつのまにか寝息をたてている、あなた。

 そっと頬をなぞり唇に触れてみる。


 最後にワガママ言えば良かった。

 もっとあなたを困らせれば良かった。


 恨みごとのひとつも言えないままで、物分りのいいオンナのフリをしたくせに。

 月の光に照らされながら、あなたは其処にいるのにもう届かない。


 長くて寂しい夜、こっそりとひとりで泣いたの。



 🎶BGM🎶

「MOON LIGHT BLUES」チャゲ&飛鳥

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