三日月の欠片を埋めるには

神埼ミクル

プロローグ

夜、部屋の灯りを消す。

スマホの光だけが、俺の顔を照らしていた。


チャットアプリの通知が一つ。

『まだ起きてたの?』

たったそれだけのメッセージに、胸の奥がじんと熱くなる。


画面の向こうの“彼”――つばさ

声を聞いたことはある。けれど、会ったことはない。

笑い方も、仕草も、表情も、何も知らないのに。


どうしてだろう。

俺はこんなにも、翼の文字一つで心を動かされてる。


『うん、眠れなくて』

と返すと、すぐに「そっか」と既読がつく。


そのスピードが、嬉しい。

同時に、虚しい。


――翼は、誰にでも優しい人だ。

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