第16話 筋力25! つまりは握力125キロだ!

 アパートに到着し、ソファーでくつろぎながらテーブルにお金と通帳、金塊を広げ、改めておさらいする。


「現在の資産は貯金もあわせて約280万。製造機ポイントが約6万。金塊が3キロだ」


 塩田さんから購入した株を勘定に入れなくても、かなりの資産だ。


「そして、マサトのLPが120。筋力12。運動性能10。ワタシからの好感度が70ってとこだね」


「ステータスも資産に入るの? それに、またもや好感度が上がってるし! 嬉しいんだけど、やっぱりチョロイにも程がある!」


 僕はイルミにツッコミを入れる。


「そこまでチョロくないと思うよ。あとほら、体が資本って言うじゃない♪」


「それは、そうだけど、今回のは好感度が上がってる件に対して僕のツッコミ待ちだったように見えたなぁ」


「おお〜、マサト、感が鋭い」


「やっぱり、そうなんだ!?」


 イルミがどんどん、グイグイくるようになったなー。


 塩田さんが言うには、かなり懐いてるって言ってたし。


 まあ、あれだ、確かに鳥は好きで、よく懐いてくれてた覚えがある。


 それと同じようなもんだと思おう……思って良いのかな?


 腕を組みながら疑問に思っていると、イルミは僕を見つめながら話しかけてくる。


「ねえ、作戦どうしよっか?」


「そうだなー、ちょっと試したいことがあるんだ」


「なになに、マサト?」


 僕はテーブルの金塊を1つ掴む。


「これって、ホールに入れたら何ポイントになるか分かる?」


「ん〜、入れてみないと分かんない」


「よし、入れてみよう」


 僕は1キロの金塊をリサイクルホールに投入する。


「む! 100万か!」


 大きなポイントには違いない。

 だけど、レートでいうなら1グラム1000円。

 現在のレートは1万円だから10分の1かぁ。


「あらら、ちょっと勿体なかったね、マサト」


「いや、その事実が分かったのは大きいよ。それに、高木さんに引き取ってもらえない時もあるだろうから、その時はこうしてポイントを稼ごう」


「だね~」


 ただ、次からは金塊を見つけたら、ひとまずとっておこう。


 ダンジョンを採掘していると未知の鉱物も見つかるだろう。


 でも、そっちは地球で売買出来ないだろうから優先的に未知の鉱物をポイントに変えていこうっと。


「よし、さっそくポイントを使わせてもらおう」


「マサト、何に使うの?」


「予定通りツルハシを造ったあと、ゼリーとプロテインを造ろうかと」


「うんうん」


 まずは、ものすごいツルハシっと。

 僕は製造機を操作し、10万ポイント消費してツルハシを造る。


 カプセルが細長く巨大化し、中身をさっそく取り出す。

 高級そうな木材と黒光りする金属で造られたツルハシだ。


「おおー、なんか贅沢そうなツルハシ……って、重っ!」


「だいじょぶ? マサト?」


「あまり大丈夫じゃなさそうだ、かなり重い」


 なんてこった、重くなる想定をしてなかったのはマズッたな。


 鉄のツルハシを振ることが出来てたし、筋力も2アップしてたから大丈夫だと思ったんだけど……。


「ん〜、ホールに戻す?」


 イルミは僕を見上げ、首を傾げながら見つめる。


「ここで戻すのは、なんか負けた気がする。プロテインで筋力を強化して振れるようにしてみるよ」


「マサト、頑張れ〜」


「ああ!」


 今度はライフゼリーとウルトラプロテインを5個ずつ造り、食べてみる。


 うん、ピーチ味とカルピス味で美味い。


「あ、マサトのLPが170。筋力が17になったよ」


「分かるぞ、体の調子が良くなって、筋肉もついて力が強くなった実感があるよ」


 再び、ものすごいツルハシを持ってみると、さっきより軽々と持てるようになっていた。すげぇ!


「だが、軽々振り回すには、まだ足りないかー」


「握力85キロでも、ダメみたいだね」


 イルミは首を傾げながら僕の腕を見つめる。


「85キロ?」


「筋力1につき、5キロだよ」


「なるほど」


 確かに以前、握力計で握る力を計る機会があり、その時は50キロだったな。


 僕が両手で抱えて持てる限界も50キロだったから、それが目安に考えて良さそうだ。


「さて、どうするか……」


 僕は腕を組んで考え込む。


「どうしたい〜?」


 イルミも僕の真似をして腕を組んでいる。

 可愛い。


「どのみち、ダンジョンで稼ぐ決心をした以上、中途半端な自己投資はしたくないかな、やるならガッツリ強化したい」


「お、つまり?」


「現金160万投入して、ゼリーとプロテインをキリ良く8個ずつ造るよ」


 現金を手に取り見つめてみる。


「良いね良いね、バランスも守ってるし、ワタシも賛成♪」


「では、さっそく」


 僕は160万投入し、ゼリーとプロテインを8個ずつ製造する。

 ああー、やっちゃった!


 でも、稼ぐ効率も上がるし体が頑丈になれば無理も多少出来るようになる。


 うん、これでやっぱり良かろうなのだ。


 僕はゼリーを頬張り、プロテインをガブ飲みしたと、またもやツルハシを持ってみる。


「筋力25! つまりは握力125キロ! すごいぞ、ツルハシが軽い!」


「わあ、マサト、逞しい!」


 イルミは胸の前で手を組み、はしゃいでいる。

 どれだけ採掘効率が上がったか、楽しみだ。


「よし、さっそくダンジョンに……うおわぁっ!?」


「ああ〜、マサトの筋肉〜、ガッシリして気持ち良い〜♪」


 イルミは僕に抱きつき、胸に顔をすり付けている。

 イルミが筋肉好きなのは予想しなかったなー。


 僕はホッコリしながらイルミの頭を撫で回してやる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る