第10話 精錬所跡で芋虫バトルと黄金ゲット!

 さっそく新しい装備の使い心地を試してみよう。


 僕はメットで周囲を照らしながらツルハシで掘り進めていく。


 ついでにリュックも用意しておいた、一応ね。


「よし、視界は良好、手への衝撃もかなり減って踏ん張りも効くぞ」


「動きが良くなって効率も上がったね。防御力も10くらいあるから多少のダメージは安心だよ」


 雑談しながらイルミも採掘を再開する。


「10ってどのくらいの防御力?」


「一般人のパンチの威力が20前後ってところだから、それを半減」


「おおー、ちょっとしたケガなら防げそうだ」


 ただ、難点がないわけではないかな、使い心地は良いけど少し重い。


 ポイントが貯まったらゼリーとプロテインを製造しよう。

 マッハドリンクは……まあ、あとで……。


「お?」


 考えながら掘り進めていくと、ボコッとした手応えと共に壁が開通した。

 どうやら別の空洞に繋がったみたいだ。


「これは……金属の精錬所ってとこみたいだね。少し規模は小さいみたいだけど」


「精錬所?」


 こんな地下か鉱山の中に精錬所か……。


「にしても、誰も見当たらないなー」


「あ、ゴメン、マサト。ちょっと言い忘れてたこと、あったんだ」


「お、なんだい?」


「ダンジョンは、物や原生生物とかの再現は出来るけど、何て言うか……知的生命体ってやつの再現は出来ない性質を持ってるんだよ」


 少し分かりづらい話が出てきたなー。

 少し推論を交えて詳しく聞いてみようっと。


「ダンジョンて、あれかな? どこかの異世界をコピーして、そこを使ってるってやつかな? 人間レベルの生命体のコピーは出来ないって制限はあるものの……」


 適当な憶測を言ってみる。


「そうそう! それ、すっごく近いよ! マサトって、実はすごく頭良かったりして?」


「そ、そんなことはないって、憶測がたまたま的中しただけさ」


 学校の勉強は中より下だったから、頭良いは無理があるなぁ。


「そうかな〜? 飲み込み良いし、地頭も良いとワタシ思うんだけどなぁ〜」


「はは、ありがとな」


 でも、褒めてもらえるのは純粋に嬉しい。


 喜んでいると、壁の裂け目から巨大な芋虫のような怪物が3匹姿を現す。


「うおっ、モンスター!?」


「みたいだね~」


 体長は1メートルくらいのヌメヌメしたピンク色の体色をした芋虫だ。


 大きく開けた口には無数の牙があり、僕たちを食べる気満々だ。


「想像以上にグロくてキモい!」


 僕はツルハシを構え、芋虫を見据える。


「よし、まずはワタシが戦ってみせるよ」


 イルミはそう言うと、芋虫に蹴りと拳を叩き込み破裂させる。


「うわっ、よ、よく触れるね!」


「マサトを守るためだよ」


 不意に言われてドキッとする。


「次は魔法を見せるね、サイコ・フレアー!」


 イルミは両手を突き出し、火炎を掌から放射する。


「ピギャァァァッ!」


 芋虫は黒こげになり、炎に包まれ燃えている。


 燃え盛る赤い炎は、イルミの金髪を照らし、神秘的に輝かせていた。


「す、すっげぇ戦いぶりだ」


「ありがと♪ おっと、ワタシが引き付けるから、マサトは後ろからお願い」


「よ、よし!」


 僕はツルハシを振り上げ、芋虫に向かって振り下ろす。


「グビャッ!」


 不快な手応えと共に芋虫は動かなくなる。


「か、勝った!」


「やったねマサト、初勝利だよ」


 イルミはハイタッチをしてきたので、僕もそれに応える。


「ありがとう。にしても、イルミめっちゃ強いな」


「エヘヘ、それほどでもあるけど♪」


 イルミは顔を赤らめ頭をポリポリかいている。


 うん、可愛い。


 にしても、モンスターか……いずれは武器も欲しいところだなー。


 ──しばらくしたあと、僕は何となく精錬所に近づき、眺めてみる。


「うおっ? これは、もしかして……」


 宝箱が見つかり、中には金色の光沢を放つ延べ棒が入っていたいた。


「き、金だ! ゴールド!」


 いや、喜ぶのはまだ早い、ぬか喜びは嫌だからな。

 すると、僕の側に駆け寄り、イルミも型をのぞき込む。


「うんうん、確かに黄金だね、純度100%。かなりのポイントになりそうだよ〜」


「マジで!? やったぁ!」


 見回した限り、黄金の延べ棒は1キロのものが6個見つかった。


 おいおい、いきなりこれだけのものが手に入って良いのかな?


 いや、良いのだ、むしろ悪い理由などなかろうなのだ。


「よし、さっそく持って帰ろうっと!」 

「だね」


 僕は黄金の延べ棒をリュックに詰め、背中にからう。

 おお、このズシッとくる重量感。


 実は1回だけ黄金の延べ棒を持たせてもらった経験があるんだけど、確かに大きさの割にズッシリと重かった。


 鉛と同じくらいだった気がする。

 あれと一緒にするのは黄金に失礼だが。


 僕とイルミは掘った穴を通って製造機へと戻る。


「ここから精錬所までは1キロってところかなー」


 しっかし、この短時間で、よくもまあこんな穴掘ったなぁ。


 力は少し強くなったし、イルミが手伝ってくれて楽しく掘ってたのもあるけど、我ながらよく掘った。


 実は僕、採掘の適正高いんじゃね?

 なーんて、調子良すぎかな。


 僕はホールに金の延べ棒を投入しようとした。


「いや、待った!」


「どしたの? マサト?」


「一応確認するけど、製造機では現代のお金ってさすがに造れないよね?」


「う〜ん、やろうと思えば出来るけど、番号が全部おんなじになっちゃうかな」


「そりゃマズい」


 製造機でお金を造るのはダメだな、犯罪になってしまう。


 かといって、延べ棒を質屋に持っていっても、どこで手に入れたと聞かれて面倒くさいことになりそうだ。


 うーん、どうしたものか……。


「あ」


「今度はどしたの、マサト?」


「ちょっとしたアテがあったの思い出した。とりあえず現代に帰ろう」


「うん、だねっ」


 そして、ひとまず僕たちは地球に帰ることにした。

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