第4話 王様ゲーム

 「お姉ちゃん、起きて!」

想弥の声に私はびっくりして飛び起きた。

「想弥くん、今お姉ちゃんって言った?」

と私は想弥に聞いた。

「え、僕そんなこと言いましたっけ?」

と聞き返され、私は気のせいだと思った。

 今回は想弥も赤チームのゼッケンを着ていた。私はすぐにまた繰り返される地獄と想弥と同じチームである安心感に挟まれた。そうしているうちに放送が流れ出した。

「今回のゲームは王様を1人こちらから決めて指名します。指名された者はチームの王様となり、この王様となった者が死ぬとゲーム終了です。王様を守り敵の王様を狙い撃つ簡単で且つ最も被害者が少なくて済むゲームです。さて、今回は何人生き残るのか楽しみですね。王様は各チームの最年少である者なので、皆さんは王様を守ってたくさん殺戮をしてくださいね。」

放送はここで終わった。あまりにも残酷なルールに不満の声が飛び交う。そして掲示板には各チームの最年少者の顔と“スタートまで1分”の表示がされた。

 私は驚いた。なぜなら私たちのチームの最年少が3ゲーム目に私が守った男の子だったのだ。辺りを見回して男の子を探す。だが、男の子は見つからない。その代わりに少し離れたところに青チームの最年少の子がこちらを見つめて立っていた。私とそれに気づいた想弥は血の気が引いた。そして向こう岸には青チームの人たちと、少し離れたところに赤いゼッケンを着た男の子がいた。

 私はこの理不尽で残酷な転送場所に腹を立てた。しかも私たちにはスコープのついた向こう岸にも弾が届きそうな銃を手に持っていて、王様には弾を防ぐための盾が用意されていた。私も想弥もこのゲームが一番死人が出るルールになっていることに気づき残り30秒を切ったスタートまでに作戦を立てた。

 すぐにゲームが始まりスタートのサイレンが鳴り響いた。するとすぐさま銃声が鳴り一気にほとんどの人が負傷か死亡した。みんな王様に銃を向けさせまいとお互いを撃ちあったのだ。

 私たちはその隙に赤チームの男の子のほうへと階段を下りて1階の広場に降り、向こう岸の階段を目指した。その時、後ろから3ゲーム目で最後まで同じチームにいたお姉さんに声をかけられた。

「男の子のほうに行くの?なら、私も一緒に行きたい」

そう言われて私たちは3人で男の子の方へ向かった。

 下に降りたことは誰にも気づかれず私たちは階段まで到着した。赤チームのいる2階の場所を見上げたら立ってる人は2,3人でほかはほぼ全滅状態。掲示板の生き残り人数を見ても残り5人ずつくらいだった。

 ゲーム開始から約1分でこんな状態になっている人間の被虐さに背を向けながら王様の元へ向かう。そして私たちが王様の地点に到着したころには青チームは王様のみ赤チームも私たちと王様のみになっていた。

 いったん、私たちは男の子を連れて物陰に隠れた。男の子はスンっと想弥みたいにすました感じではあったが、私によくなついてくるかわいい子だった。想弥はそれを見て少し嫉妬しているようにも見えた。

 そしたら、お姉さんが口を開いた。

「こっからどうしよう。」

声が震えていた。

 少し考えるためにお互いの得意なことなど簡単に自己紹介した。男の子は橋口るい(はしぐちるい)で普段は家でPCゲームをよくする中学1年生。お姉さんはパク・ミニさんで韓国から日本に来た韓国系列のIT会社に勤める29歳の韓国人。想弥も一応自己紹介で、シューティングゲームのプロゲーマーで専門学校1年生と判明。私も、地方大学に通うごく普通の大学3年生で過去にスポーツをしていたことを話した。

 そして想弥が口を開いた。

「かおりさんが王様の気を引いてミニさんはそれを援護。僕はるいを守りながら青の王様を狙い撃ちます。」

私はすぐに反対して、

「私が撃つから失敗したら援護射撃して。」

私はなぜか想弥に手を汚させたくなくて思わずそう返した。

「わかりました。無理だけはしないように。」

と想弥は受け入れてくれた。

 そして私は青の王様に銃口を向けて走り出した。向こうも負けじと盾をこちらに構えながら銃口を私に向ける。私は震える手で必死に銃を握り、恐怖で押しつぶされそうな心臓に“落ち着け”と念じながら引き金を引いた。

 私が発砲した弾はまっすぐ王様の頭の方に向かった。ちょうど盾では隠し切れない部分だから殺ったと思った次の瞬間、青の王様がこけたふりをして私に発砲した。青の王様は私の撃った弾をこけたふりをかわし、私を撃ったのだ。私は死を覚悟した。その瞬間私は想弥の方を向いて“ごめんね”と言おうとした。

 だが、想弥は私に銃口を向けて撃ったのだった。私はびっくりして後ずさり。すると、想弥が撃った弾が私に当たるはずだった青い王様の銃弾を弾き飛ばした。私は間一髪死を逃れ、もう一度王様を狙った。

 その時、赤チームの倒れていた1人が青チームの王様を横から撃った。誰もこの予想外の展開を理解できず、青の王様が倒れても唖然としていた。最後に王様を撃った赤チームの人もまもなく死亡。私たち4人だけが生き残り、目の前が真っ白になった。

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