#15

アカネさんの持ってきた『ヤバい情報』はハラジュクで新しい薬物が流行り始めているという内容でした。


私はお茶を淹れ終わったので、皆さんにお配りし、シドさんの横に座りました。

アカネさんは続けます。


「それでさ…そのクスリがあんまり質の良いものじゃないらしくてさ…その代わり安いから、広がるのも早いらしくて…既にシブヤやシンジュク辺りでは蔓延してるっぽいのよ」


「なるほど…それだとハラジュクで流行るのもすぐでしょうね…」


「そうなのよ…私的に薬物くらい本来はどーでも良いんだけど…なにせ安いからね…普段クスリと無縁の層まで安易に手を出して、ラリった奴らが治安を乱して、私の情報収集活動に影響が出ないと良いんだけど…」


「シブヤ、シンジュク辺りの様子はどうなんですか?」


「既に影響出てるわよ…私の行くエリアなんて元々ロクな奴らいないんだけど、さらにラリった奴らがトラブル起こすから…ちょっと面倒なのよね…」


「なるほどです…」


その後もアカネさんから新しい薬物に関する情報を雑談交じりに聞きました。

気付けば、30分くらい喋っていました。


「あれ、もうこんな時間!ごめんねシド、ちょっとのつもりが長居しちゃって…!」


「いえいえ、とんでもないですよ。情報、ありがとうございました!…今回のは…?」


「情報料はいらないよ!そんな大した情報じゃないし…私とあなたの仲じゃん!」


「ほんとですか…ありがとうございます」


アカネさんは颯爽と帰っていきました。

私はお茶を片付けながら、シドさんに尋ねます。


「それで、どうするんですか?」


「なにがですか?」


「薬物…です。撲滅しに行くとか…」


「いえ、しないですよ?」


「えっ」


シドさんは私が驚いた理由を察したかのように、話始めました。


「確かに薬物が蔓延するのは良いこととは思いません…ですが、僕は別に『正義の味方』ではないですし、依頼がなければ動かないですよ」


シドさんはニコリと笑いました。


「そ…そうですか」


「ガッカリしました?」


「…いえ、そうですよね…『何でも屋』ですもんね…」


「ええ…取り締まりは警察に任せましょう」


私は黙々とティーカップを洗いました。

『何でも屋』は正義の味方でも警察でもない。


私は改めて自分がどういう所に転がり込んだのか、思い知ったのでした。


怖くはない。

何なら、何故だか、ドキドキしていました。


あっ、そういえば…


「シドさんってアカネさんと仲いいんですね?」


「ん?ええ、はい!この仕事を始める前からの付き合いですからね!」


「へー!そうなんですね!」


『何でも屋』を始める前のシドさん…どんな感じだったんだろう…

しかし、私は何故だか聞くのを躊躇ってしまいました…


すると、再び事務所のチャイムが鳴ったのです。

今日は来客が多い…

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