#7

今回の依頼、人探しのスタートです。

失踪した彼女さんの家へ手がかりを探しに行くこととなりました。


「それでは行ってきますね」


シドさんは、また私を置いていこうとしてます…


「あの…」


「ん?どうしましたか?」


「私も付いていって良いですか?」


シドさんは一瞬、ほんとに一瞬ですが、明らかに困った顔をしました。

私は見逃しません。


「え…えっとー…そうですね…あのー…やはり危ないので、待ってて頂きたいです」


「でも、事務所も安全ではないですよね?この間の父親の一件もありますし」


「まあ、そうですけど…」


「それに、今回の探し人は女性ですよね?やっぱり女性の目線もあった方が良いと思うんですよ」


「ん…それは…うーん」


あと一押しでいけますね。


「お願いします!この先、普通の仕事に就けないと思うので『何でも屋』として頑張りたいんです!事務員だけじゃなく…!お願いします!」


「んーーーー…わ、わかりました。とりあえず今回は良いですよ…」


「ありがとうございます!」


いけました。


ここ数日で学んだこと。

シドさんは押しに弱いんです。


失踪した彼女さんの家までは徒歩で20分くらいでした。

綺麗なマンションの一室です。


「ここだ。開けるぞ」


依頼人は合鍵を使って、ドアを開けてくれました。


部屋は普通、女性の一人暮らしって感じです。

シドさんはしばらく部屋を見渡してから、言いました。


「うーん…特に気になるところはないですね…最後に来た時と変わっているところはありますか?」


「いや…特に…」


これは…不発でしょうか…ん?


「あ…これ先週発売のリップだ」


つい、独り言を言ってしまいました。

気になってたやつだったので。


「彼女さん、結構コスメ揃えてますね?私が欲しいやつもあります!」


「ん?あー多い方なのかそれ?俺は良くわからない…あれ?」


「どうしましたか?」


「彼女が外出時に必ず持ち歩く化粧ポーチが置いてあるな…」


すると、シドさんが言いました。


「なるほど…ということは自分の意志で遠出はしていない…部屋にいる時に何かあった可能性が出てきましたね…」


「だ、誰かが入ってきたのか?」


「ええ…あくまで可能性ですが…ん?いや待ってください。財布やスマホ、鍵はないですよね?」


「ん?ああ…ないな」


「ええ…ということは、外には出ていますね…例えばコンビニなど、かなり近場に出かけるつもりで外に出て、その時に何かあったのではないでしょうか…?」


「な、なるほど…彼女がよく使うコンビニなら歩いて3分くらいのところにあるぞ…」


シドさんすごい…!

よくこんなスラスラ推理できるな…


その後、私たちはそのコンビニへ向かい、店員さんへ聞き込みを行いました。

たまたま、5日前に彼女さんらしき人を接客した、という方が出勤したのです。

ラッキーです。


「その女性のお客さん、何か変わった様子はありませんでした?」


「ん?いやー…んー…」


「細かい点でも結構です」


「んー…そういえば、店に入ってきたときにすごい後ろを気にしてましたね…なんかこう、キョロキョロしてる感じでした。普通のお客さんが入店するとき、後ろを見る人なんていませんから、ちょっと気になりましたね。」


「店を出るときの様子はどうでしたか?」


「えーと…外を見渡して…ましたね…それでしばらくして、帰って行かれました」


「分かりました…ありがとうございます。お仕事中失礼しました」


これは私でも分かります。

彼女さんは何者かに後をつけられていたのです。

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