第5話:不意の撤退と、依頼主の影
コヨミの強大な力に、黒いあやかしは体勢を崩した。
「馬鹿な……これほどの神力、聞いていないぞ!」
「貴様の情報不足だ」
コヨミは一閃。あやかしの左腕に深い傷を負わせた。
「今は退く! だが、必ず獲物はいただくぞ、巫女!」
あやかしは路地奥の闇に身を隠し、提灯の赤い光も消えてしまった。
「……逃がしたか」コヨミは舌打ちをし、力を収めた。
ハルカはすぐにサクラに駆け寄る。幸い、外傷はないようだ。
「よかった、サクラ……」
「フン。無様なものだ。さっさと病院に連れて行け」
コヨミはそう言いながらも、ハルカがサクラを背負いやすいように、しゃがんで支えてくれた。
病院でサクラが眠る中、ハルカとコヨミは待合室にいた。
「コヨミ様、あのあやかしが言っていた『依頼主』って誰なんでしょう?」
「人間だろうな。あやかしは利害で動く。今回の目的は、サクラの霊力だ。おそらく、依頼主は何らかの儀式にサクラの力を利用しようとしている」
「儀式……」
ハルカは不安になる。コヨミはコーヒーのカップを片手に、静かに言った。
「神社に戻れば、奴の残滓から依頼主の手がかりを探れるかもしれん。……私の手柄を横取りするなよ、ハルカ」
その言葉は、ハルカへの「お前も手伝え」というコヨミ様流の依頼だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます