第2話:スマホに残された手がかり

 ハルカはコヨミを連れて、サクラが最後にいた駅前のカフェへ急いだ。


「サクラはどこに行ったんだろう……」


 ハルカが心配していると、コヨミはふん、と鼻を鳴らした。


「心配するな。ただの怪異に魂を抜かれるほど、その幼馴染はヤワではない。ただ、厄介なことに首を突っ込んだだけだ」


 コヨミの言葉には安心感があった。彼が言う「厄介なこと」は、普通の人には見えない、あやかしがらみのトラブルのことだ。


 ハルカはサクラのSNSをチェックした。最後にアップされていた写真には、カフェの窓の外、薄暗い路地の風景が写っていた。路地の奥には、異様に赤い提灯が一つだけ灯っている。


「この路地……どこかで見たような」


 ハルカが呟くと、コヨミが写真に顔を近づけた。


「これは『隠れ路地』だ。人間界と、あやかしの領域の境界線にある。提灯は目印、それがあやかしを招いている」


「じゃあ、サクラはこの路地に迷い込んだの?」


「否。招かれた、だ。この提灯には強い怨念が込められている。人間の依頼で、あやかしが何かを攫ったようだ」


 コヨミは路地の方向を指さした。その路地は、いつもならただの裏口だが、今は薄闇が濃く、奥が見えない。


「ハルカ。神使の仕事だ。行くぞ」


 コヨミの銀色の瞳が、夜の闇に鋭く光った。

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