第九章:竜の国での戦いと真実

ドラゴニアは、険しい山々の中にある巨大な国だった。


竜族たちが空を飛び交い、壮大な城が聳え立っている。


「すごい……」


蓮たちは圧倒されていた。


「あれが、私たちの城です」


セリアが指差す。


だが、城の周囲には多数の兵士たちが配置されていた。


「兄が支配している今、正面から入るのは無理です」


「裏口とかないの?」


リィナが尋ねる。


「あります。子供の頃、よく使っていた秘密の通路が」


セリアの案内で、蓮たちは城に潜入した。



* * *


城の地下牢に、セリアの父である竜王が幽閉されていた。


「父上!」


「セリア……!無事だったのか」


竜王は衰弱していたが、娘の姿を見て安堵の表情を浮かべた。


「父上を救出します」


蓮は牢の鍵を壊そうとしたが、その時。


「待て」


背後から声がした。


振り返ると、そこには一人の青年が立っていた。


竜族の特徴である角と翼を持ち、高貴な雰囲気を纏っている。


「兄上……!」


セリアが叫んだ。


「セリア、戻ってきたのか。そして、人間どもを連れて」


青年――セリアの兄、ドラグは冷たい目で蓮たちを見た。


「お前たち、ここで死ぬがいい」


ドラグが手を上げると、炎が湧き上がった。


「うわあ!」


蓮たちは咄嗟に避けた。


「リィナ、セリアを守って!」


「はい!」


蓮は鉄鍋を構えた。


「レン、無茶だ!相手は竜族だぞ!」


リオンが叫ぶ。


「でも、やるしかありません!」


蓮はドラグに突撃した。


【料理人の闘志】を発動。


鉄鍋が光り輝く。


蓮の攻撃がドラグに命中した。


「ぐっ……!」


ドラグが吹き飛ぶ。


「馬鹿な……人間ごときが……!」


ドラグは本気になった。


巨大な炎の竜を召喚する。


「これで終わりだ!」


炎の竜が蓮に襲いかかる。


だが、その時。


「待って!」


セリアが叫んだ。


「兄上、なぜこんなことを!本当は優しい兄上だったはずなのに!」


「優しい……だと?」


ドラグの表情が歪んだ。


「俺は……俺は弱かった。父上にいつも叱られ、お前にいつも負けていた。だから強くなりたかった。力が欲しかったんだ!」


「兄上……」


「だが、今の俺は強い。この国を支配し、人間の国も支配する。そして誰にも負けない存在になる!」


ドラグが再び攻撃を仕掛けようとした、その時。


竜王が叫んだ。


「ドラグ、やめるのだ!」


「父上……」


「お前は間違っている。力だけが全てではない。大切なのは、心だ」


竜王の言葉に、ドラグの動きが止まった。


「心……」


「お前は優しい子だった。だから、無理に強くなろうとしていたのだな。すまなかった、気づいてやれなくて」


竜王の言葉に、ドラグの目から涙が溢れた。


「父上……俺は……俺は……!」


ドラグは膝をついた。


「許してくれ……俺は愚かだった……」


セリアがドラグに駆け寄った。


「兄上、私はずっと兄上のことが好きでした。強くなくても、優しい兄上が」


「セリア……」


兄妹は抱き合った。


こうして、竜族の国の騒動は終わりを告げた。



* * *


数日後、竜王は蓮たちに感謝の言葉を述べた。


「レン殿、本当にありがとう。お前がいなければ、この国は滅んでいた」


「いえ、僕は大したことは……」


「いや、お前の料理と、そして心が、この国を救ってくれた」


竜王は蓮に宝石を手渡した。


「これは『竜の心臓石』。竜族の魔力が込められた宝石だ。お前の料理に、さらなる力を与えるだろう」


「ありがとうございます」


「そして、セリアをお前に預ける」


「え?」


「セリアは、お前と旅をしたいと言っている。頼んだぞ」


こうして、セリアも蓮の仲間に加わった。

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