第2話 ハルを待つ日々


チャイムが鳴り終わった教室に、まだ4人の声が響いていた。

机の上には、過去問、カフェオレ、そして開きっぱなしのスマホ。


「この問題、出そうだよね……」

美花が言いながら、マーカーを走らせる。

「もうさ、出るとか出ないとかより、どこ見てもわかんない……」

音色がため息をついて、シャーペンをくるくる回す。


「ねぇねぇ、これ終わったらさ、コンビニ行かない?肉まん食べたい」

なつのその一言に、場の空気がふっと緩んだ。


「出た、なっちゃんの“肉まんで受験乗り切る説”」

うみが笑いながら、消しゴムを投げる。

「だってあれ食べると元気出るんだもん」

「そんなんで受験受かるなら、私、今すぐ合格だわ」

そんなやりとりが続く。


窓の外は、まだ冬の冷たい風。

けれど、差し込む夕日は少しだけ柔らかくなっていた。


「春、来るのかな……」

うみがつぶやくと、美花が静かに頷く。


「うん、絶対来る。

 だから――もう少しだけ、頑張ろ?」


誰かが笑う。

誰かが、涙をこらえるようにうつむく。


ページをめくる音だけが、しばらく響いていた。

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