妖狐そ!【飯綱荘へ】 〜引っ越し先は妖怪のお助け所でした〜

かなちょろ

第壱話 【飯綱荘】

 桜の花弁が舞う4月の春。

 高校に入り、初めての自己紹介。


間宮 智子まみや ともこです。 今日から宜しくお願いします」


 私はこの春から高校一年になる十五歳。

 今年から一人暮らしを始めた。

 高校から近いアパートで、元々祖父が所有し祖母が管理をしている物件だった。

 祖母が亡くなり、アパートの管理人が居なくなってしまっていた所、私の学校が近いからとの理由で祖父の許可をもらった。

 親には勿論駄目と言われたけど、【飯綱荘いづなそう】の管理人をやりながら、成績も落とさない事を条件にして許しを得た。

 これで念願の一人暮らし……でもこの飯綱荘いづなそうには人に言えない秘密があった……。


 大きな荷物を持って、飯綱荘いづなそうの前に到着。


「ふぅ……、結構古いな……、いや贅沢は言えないけど。 ここから私の高校生活がスタートするんだから」


飯綱荘いづなそう】は年代を感じる古い木造の建物だけど私の心はウキウキだ。

 この飯綱荘いづなそうには部屋が管理人室を含めて十部屋ある。

 そして入居者は五人と聞いていた。

 まずは荷物を管理人室へ置いて、早速管理人として挨拶しに行かなきゃ。


「こんにちは〜」


 飯綱荘いづなそうの玄関口をそっと開け挨拶をする。


「誰もいないのかな?」


 靴を脱ぎ、スリッパに履き直す。

 パタパタと廊下を歩いて聞いていた管理人室へ向かう。

 管理人室の中は大好きだった懐かしいお婆ちゃんの匂いがする気がした。


「懐かしいな……」


 感慨にふけっている所、携帯の着信が鳴る。


「もう着いたか?」


 お爺ちゃんからだ。


「今着いたよ、これから住人の人に挨拶に行くよ」

「そうか、気をつけてな」


 挨拶するだけだし……気をつけろとは?

 もしかして住人の人、変な人だったりするのかな?

 そんな事を考えながら部屋を後にする。


 この飯綱荘いづなそうは共同トイレが一階と二階に一つずつ、共同お風呂が一階に一つ、居住者が自由に使える台所があり、食堂がある。

 その食堂を覗くと、一人の男性がいた。


「あ、あの……」

「このご飯はあげないからね」


 私は挨拶をしようしたら、食事をしている人はこちらを振り向かずに話してきた。


「僕が作ったんだから」

「いえ、あの……」

「ん?」


 その人はスプーンを咥えたまま振り向くと、驚いた顔をする。


「あれあれ? 十字じゅじかと思ったよ〜」


 話してくるその子は銀に近い髪色でフワッとしたショートヘアー、笑顔が可愛い男の子だった。


「ん〜と、君はだれ?」


 思わずその笑顔に見惚れてしまった。


「わ、私は……」


 自己紹介をしようとすると、後ろから声がする。


「お〜いぎん、俺の分もあるか?」


 上半身裸で腰にはバスタオルを巻いて、頭を拭きながら食堂に入って来た男性。


「あ、十字じゅじ、もう無いよ。 僕が全部食べちゃったもん」

「なんだよ。 少しくらいは残して置いてくれよ……。 ん? このお嬢さんは?」

「え〜とね……」

「き、き……、きゃあーーーー!!」


 私はその辺にあった物を投げるとその背中に十字のタトゥーが入っている人は「いて、いて」と言いながら食堂を後にした。


「はあ、はあ……」


 なんなの……。


「ごめんねお姉さん。 十字じゅじはいつもあんな格好でふらふらするから」

「い、いえ、こちらこそ驚いちゃってごめんなさい」

「大丈夫大丈夫、それでお姉さんはだれ?」

「あ、そうだった……、初めまして、今日からこの飯綱荘いづなそうで管理人としてお世話になる間宮 智子まみや ともこです」

「ここの新しい管理人さん? ふ〜ん……、僕はぎんって言うんだ。 宜しくねトモちゃん」

「と、ともちゃん……」


 いきなり名前で呼ばれた……。


「……まったく……、さっきのはなんなんだ……」


 さっきの裸の男が服を着て戻って来た。


十字じゅじ、このトモちゃんが新しい管理人なんだって!」

「ん? トモちゃん?」


 十字じゅじと言われているその男性は茶髪の少し長い髪をポニーテールのように縛っている。


「は、初めまして、今日からこの飯綱荘いづなそうで管理人としてお世話になる間宮 智子まみや ともこです。 それとさっきはすいません……」

「いや良いって、さっきは俺も悪かったし。 新しい管理人さんか。 俺の名前は十字じゅじ、宜しく」

「はい。 宜しくお願いします」


 ペコっと挨拶をすると、十字じゅじさんは銀くんの元へ行って何か話をしている。


「それじゃ私は他の方に挨拶しに行きますので」

「三号室のはくは、今出かけてるはずだから五号室に行くと良いよ」

「ありがとうございます」


 銀くんに言われて五号室を目指す。


「すいませーん」


 ドアをノックするけど、返事が無い。

 あれ? 留守? 銀くんは五号室の人はいるって言ってたけど……。

 何度かノックしてみる。


「……なんだ……、ふぁ〜〜……」


 眠そうな顔で出て来た男性。 

 ボサボサの灰色の髪色をしたロングヘアーを掻き乱しながら、着ている服をはだけたままドアを開けて出てきた。

 背高〜い。


「は、初めまして、今日からこの飯綱荘いづなそうで管理人としてお世話になる間宮 智子まみや ともこです」

「……管理人?」

「はい。 これから宜しくお願いします」

「……、そうか……、ふぁ〜〜……、俺の名は【かい】……じゃ……」


 かいと名乗るその人は名乗ると部屋に戻って行った。


 とりあえず挨拶出来るのはあと一人かな?

 七号室の入居者に挨拶をしに階段を登る途中、背広を着たサラリーマン風の男性が降りてきた。


「おや? 君は見ない方ですね」


 話しかけて来た男性は私より年上だけど、イケメンだ〜。

 微かに赤い髪に眼鏡も似合っている。


「初めまして、今日からこの飯綱荘いづなそうで管理人としてお世話になる間宮 智子まみや ともこです」

「もしかして、あのお婆さんの継ぎ手かな?」


 継ぎ手? 後継ってことかな?


「はい、そんな感じです」

「そうでしたか、初めまして、私は【赤井あかい】と申します。 智子さん、以後宜しくお願いしますね」

 

 赤井さんはそのまま階段を降りて食堂の方へ歩いて行った。

 とりあえず挨拶は済んだ。

 今日から頑張ろう!


はくさんと言う人には帰って来てから挨拶すれば良いし、まずは部屋の片付けしないとな」

 

 管理人室に戻り、荷物の片付けを始めた。

 緊張と初日の疲れのせいか、眠気が襲ってくる。

 この日は夜ご飯を食べずに寝てしまった……。



 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ━━━━━━━━後書き━━━━━━━━━


 読んで頂きありがとうございます。

 これから頑張って書いていきますので、モチベを上げてあげてあげると思っていただけるようでしたらブクマや★評価をつけていただけますと作者が喜んで踊りながら頑張って書いていきます。

 他にも書いてるので不定期にはなってしまいますので、申し訳ないです。

 以降の話には後書きはありませんので、この世界に浸っていただければと思います。

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