「……『もう、会えなくなるから』


 って、そう聞いた時ね。最初は、貴方達が喧嘩でもしてるのかと思ったのよ。

 でも、そうじゃなかった……あの子、自分がこうなる事が…………死ぬ事が、解ってたのよ ! 」


 叔母さんは手紙を抱きしめ泣き叫ぶ。だが、自分が死ぬ事が解っていたなんて……そんな事 ある訳ない。


「叔母さん、落ち着いて」


 車を路肩へ一時停止させると、俺は取り乱した叔母さんの背を撫でてなんとか落ち着かせようと冷静に語りかける。そして、叔母さんが落ち着きを取り戻すと再び車を走らせた。


 旬の部屋に着いてからも妙な沈黙が続く。持参した小型のプレーヤーから流れる歌が唯一の救いだ。

 こんな時に音楽なんてと思ったが、持って来て正解だった。曲を聴いて気持ちが落ち着いたのか、その日の作業が終わる頃には叔母さんの顔にも少しだけ笑顔が戻っていた気がする。

 受け取った手紙を鞄に仕舞い俺は帰路に着いた。




 帰宅した俺は、手紙を開けるべきか悩んだ。何が書かれているのか気にはなる。

 だが、


【「あの子、自分がこうなる事が……死ぬ事が、わかってたのよ ! 」】


 叔母さんの言葉が脳裏を過った。そんな事、ある筈がない。

 そうは思うのだが、脳が警鐘を鳴らしている。この手紙を、開けては駄目だ。


 理由や根拠はないが、本能がそう叫んでいる。


「………………」


 部屋に飾った写真を見つめた。写真には、俺と亡くなった【橘 旬】が写っている。

 写真の旬は笑顔で、もう生きてるあいつには会えない。


「…………」


 そう思ったら、なんだか迷いは消えて行った。今、この封筒を開け中身を読めば俺はきっと後戻りできなくなる。

 でも、旬が残した最後の手紙。何が書かれているか解らないが、大事な従兄弟が俺に何かを伝えようと書いた物だ。

 ちゃんと読んでやらないと、バチが当たっちまう。封筒のなかには、二枚の便箋と一枚の写真が入っていた。

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