第15話 価格
ハリスの街2日目。昨日は夕方に着いてちょっと街を見て回ったら宿に直行だったので今日は本格的に街の探索をしつつ市場調査をする。
最近はティベルが船で見せてくれた闇ベッドの上でイチャコラしているので宿の主人から「昨晩はお楽しみでしたね」みたいな揶揄いが来ることもなくなった。……最近はティベルを持ち上げたりするのがかなりやりやすくなったから、かなり力は付いてるんだろうな。自分で無双出来るほど戦闘技術高くないから戦わないけど。
ティベルはもうなんか食欲と性欲に振り切れているというか、これで睡眠欲が強かったら面倒だったろうなと思う。もし睡眠欲が強かったら朝に起こそうとした時に平気で「ん……あと5年」とか言いそう。
「このハリスの街が大陸側のエンドユーザーなわけだから、今日は一日市場価格の調査に当てる。……食べ歩きは好きにして良いよ」
「ん、市場価格?」
「例えば……うわ、油がハリスだとこの容器で760エンかよ。
これコークの街にあったベイラード商会だと360エンだったの憶えてる?」
「憶えてる。
……何で?」
「何で、は需要と供給の話になるし輸送費とか人件費の説明もしないといけないけど……ハリスでの価格がコークやノーマンより高い品物は、欲しがる人が多いってこと。つまり、ハリスでは油を欲しがっている人が多いってことだな」
本格的に複数都市での新聞発行をするようになれば、各都市の安い品物と高い品物を載せて商人に対して売れるようにしても良いかもしれない。まあまずはハリスの街限定だけど。この街だけでも数万人は住んでいるだろうし、その10%にでも売れればかなりの収益になる。スポンサーは大量に欲しいな。
「……よし、店の敷地がやたら広いのに閑古鳥鳴いている店発見。あの店には後で昼と夜の時間帯にも行くぞ」
「1日通して客が入ってこない店が良い?」
「そう。潰れかけの店を上手く乗っ取る」
ハリスの街は繁盛している店も多いけど、閑古鳥鳴いている店もそれなりにある。ただまあ朝の時間帯には人が来ていないだけで、昼や夜には来ているかもしれないから様子見。数日間、ほとんど客がいないというのが理想だな。
まあこの辺の店、どこも持ち家だろうからある程度貯蓄があればなんとかなるんだろうけど。クーポンの概念とかも出していくか。大陸側で暴れると決めた以上、早めに勇者と会いたいし自重はしない。
……邪竜がいることは伏せつつ勇者と話し合いの場は欲しいけど贅沢かな?1対1で会えば相手の善性が保証されてそうだから殺されはしないと思いたい。そして出来れば、実験台になって欲しい。
市場価格の調査と共に、今日はこの市場にない商品についての把握も進めて行く。カステラ、クレープ、ホットドッグ……手軽でかつ売れそうな商品で、無いものは結構多そうだ。まだ見つけていないだけかもしれないけど。
「今後、食べる際は点数だけ付けてくれ。
ノーマンで食べた魚粥が50点で」
「……食べ物で順位を付ける役割、我がする?」
「……いやまあ俺もある程度は付き合うけど何件も主食を梯子出来るほどのフードファイターじゃないしな」
「あるじ、貧弱」
「いや人としては結構食べる方なんだけど。さっきアホみたいにデカいベーコンエッグパン食べた後に目測500gはあるパスタを食べてからのステーキはキツイわ」
ティベルの味覚はそこそこ信用出来るので、ランキングはティベルに作らせる。1位だけは空白にしといて2位から10位までを埋める作業。……信頼というのは大事だ。ティベルがアホみたいな量を食べ回るからこそ、新聞に載るランキングに信頼性が産まれる。
……それにしても美味しいそうに食べるなこの銀髪黒角ロリ美少女系邪竜。大体の店でオススメはと聞くとボリュームある料理が出て来るんだけど満足そうに平らげる姿を見るのは微笑ましい。この子数日前に笑顔で夜盗を殺戮していたとは思えないほどだ。
で、新聞の体裁を保つならこの街の今日の出来事とか明日の予定とか書けば良いんだけどワンオペは無理だと早々に悟ったので人は増やさないといけない。……んー、魔法がある世界だし明日の天気が分かる人とかいないかな。占い師を適当に捕まえるでもこの文明度なら許されそうだけど。
しばらくは紙切れ1枚だけの新聞になりそう。たぶんこの世界初の新聞はしばらく経ったらチラシと広告とクーポン券が8割を占めることになる。……よし、スラム街行って何人か駒にするか。孤児より浮浪者の方が持ち逃げ確率とか高いだろうけど、今の自分達だと人を雇う事自体が難しいので贅沢は言ってられない。
……スラム街での人手確保が出来なかったらもう冒険者ギルドとかいうこの国の総合派遣事業所を頼るしかないけど、依頼料クソ高いんだよなあ。自転車操業になりそうだから冒険者ギルドは出来れば頼りたくないけど……纏め役として数人は依頼する形になりそう。
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