「ん。あるじ、殲滅したい」とかいうクーデレ銀髪黒角ロリ美少女系邪竜に『この世界にとって1番邪悪な人間』として召喚された件

インスタント脳味噌汁

プロローグ 美少女系邪竜

「ん。目が覚めた?

人間はやっぱり脆弱」


声が聞こえた。低い女性の声でどこか気怠げな、それでいて透き通っているような美少女特有の聞き取りやすい声。


目を開けるとそこには禍々しく黒くて太い、短い木の枝のようなツノを生やした美少女の顔が、覗き込むような形でこちらを見ていることを把握する。それと同時に、後頭部には人肌のような柔らかい感触と、背中から下に関しては硬い石の上で寝転がっている感触が伝わる。


自分はこの銀髪美少女に膝枕をして貰っていることになる、という認識になるのに数秒かかり、ついでに顔がよく見えることから胸が真っ平らなことも認識した。


「……起きたなら早く立ち上がる。

怪我をしている箇所はない?」


自分が慌てて立ち上がると、美少女も立ち上がるけど随分と身長が低い。自分より頭ひとつ分は小さいから140センチぐらいかな?衣装は黒のドレスでゴスロリっぽいんだけどふんわり広がってはない感じ。


「あなたは私が召喚した。召喚したら空中から落ちて、頭の後ろから血を流していたから回復魔法で治した」


彼女の言葉で頭の後ろ側を撫でるが、特に痛むような箇所はない。なるほど、彼女が自分を召喚したと。回復魔法とか言ってるし、ここはもしかしてファンタジーな世界なのかな?もしそうだとしたら


「私の名前はティベル。この世界で最強のドラゴンの1人。よく邪竜と呼ばれてる」


……なるほど、話が変わって来たな。よく見ると全身からどす黒いオーラを放っているというかなんか漏れてない?ドラゴンが何で美少女に変化しているのかは後で聞いておきたい。


「前に異世界から召喚された勇者達に殺されかけたけど、皆殺しにした。それでも次から次に人間達は召喚した勇者を差し向けてくるから、私も異世界から人を召喚することにした」

「勇者召喚の儀式は『この世界にとって1番善良な人間』を別世界から呼び出す魔法で、勇者は人間達に様々な異界の知恵を与えたらしい。だから私はこの魔法を逆転させて『この世界にとって1番邪悪な存在』を呼び出すことにした」

「命令。人間を滅ぼす案を出して」


次々と浴びせられる情報に対し、特に聞き返すことはせず頭の中で情報を整理していく。


命令?召喚された者は召喚した者の命令を聞かせる力でもあるのか?勇者がこの邪竜とやらを倒せそうなぐらい強いなら、その手の枷は必須か。


待て、逆転させたということはこれこちらから命令できるのでは?少なくとも今、強制的に口が開きそうになるようなことはない。


命令権は回数制限がありそうか?強制力はどれぐらい?邪竜とやらでも従えられる?文字数は少ない方が良いか?すぐに言える単語は……。


危害を加えるな、が無難?不味い、向こうも不審に思い始めた。危害を加えるな、の命令で「移動しただけ」みたいな穴を突かれる攻撃をされるぐらいなら……。


「俺を愛せ!」


恐らく岩なんて簡単に砕けるであろう小さな手で出来た握り拳がとんでもない速度で眼前に迫り、そこで停止する。どうやら命令権はこちらにあったようだし、無事に伝わったようだ。たった6文字だったから、間一髪間に合ったな。


「俺を攻撃しないで欲しい殴らないで欲しい魔法とか呪術とか超能力とか使わないで欲しい」

「……落ち着いて。

元々危害を加えるつもりはなかった」


元々危害を加えるつもりはなかったってじゃあ目の前にあるそのちっちゃな握り拳はなんだよと言いたくなるけど我慢。これ本当に命令効いているのかも怪しいしとりあえずは調子に乗らず保身に走ろう。


「……まず最初に、自己紹介をしておこうか。

柴田しばた友亮ゆうすけだ。年齢は24歳」

「私はさっきしたけどティベル。年は……300ぐらい?」


一旦自己紹介を挟みながら、落ち着く。目の前の美少女系邪竜はその気になれば自分をワンパンで殺せる存在だ。油断はせず、情報を集めよう。


「ここはどこ?」

「ん、ここはあるじが居た世界とは違う世界。

この場所がどういう場所かという意味なら人間達が魔の島と呼ぶ島の北端。そこに建てられていた神殿の跡地」

「……あるじって、まあいいや。

君は本当に邪竜?」

「……うん。邪竜。

この世界で3番目ぐらいに強い。虚無と滅びを司る邪竜」


情報を集めるけど、虚無を司る邪竜?聞けば聞くほど疑問点が次々と湧いて来るし、彼女がこの世界で3番目に強いというのは謙遜でもなんでもなく1番目と2番目の存在がいるのだろう。そして傲慢でもなくこの世界で3番目に強い存在、と。


「生物の虚無が、人の死が、私のごはん。人間は適度に殺すと良い虚無をくれる」


どう足掻いても邪悪な存在であることは間違いないし、自分はこの邪竜と一蓮托生となるのだろう。だってさっきからやたら距離近いし。何故か向こうの鼻息荒いし。


何か追加で情報を得るために口を開いて質問しようとすると、その口を相手の口で塞がれる。そのまま押し倒され、強く尻と背を地面に打ち付けるとちょっとばかり痛みで涙目になった。


「ん、あるじ。繁殖したい」

「」


抵抗?出来るわけないだろこの状況で。

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