双葉莉奈が増えた
こんな夢を見た。
◇
頭を抱えている少しだけ大人びた双葉莉奈と、双葉莉奈が喧嘩している。それを宥めているのもロボットだが双葉莉奈だ。
「なんだ、これは……?」
帰宅したら双葉莉奈が増えていた。見たところ六人に増えているようだった。
なんだこれは、まるで同人誌じゃないか。ジャンルとしてはハーレム系ときたところだろうか。事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだ。
一人いても無敵なのに、六人。六人ってなんだ?
もう可愛さで世界征服狙えるんじゃないだろうか。いや、莉奈は俺だけの存在でいてほしいな。何を考えているのだろう俺は。
「あっ、大樹!」
六人の莉奈が一斉にこちらを見た。顔は一人一人が間違いなく莉奈である。
だが俺は、莉奈の彼氏だ。本物の莉奈はすぐに分かった。
「コイツが本物の莉奈だぁ!」
この筋肉は間違いない。
「ちょっとぉ~!? 本物はここだよ~!?」
「流石僕の彼氏だね」ムキッ
「莉奈お前、俺がいない間にずいぶん鍛えたんだな! 見事な上腕二頭筋だ……」
「違う! 僕はそんなボディビルダーみたいな筋肉してない~!」
やはり彼女が、本物の莉奈だ。誰がなんと言おうと、筋肉は裏切らない!
「はい! サイドチェストぉ!」ムキッ
「極まってるね、肩メロンが仕上がってるよ!」
「大樹のばかぁ~!」バチーン
莉奈の筋肉を褒めていたら、別の莉奈にしばかれた。
◇
冷静に考えてみたら、俺が選んだのは本物の莉奈ではない。筋肉量が違いすぎるからだ。だが、さっきしばかれたことで分かった。本物の莉奈は、先頭にいる子だ。
「……グスッ……大樹のばかぁ……」
「本物はお前だぁぁぁ!」
「ど、どうして分かったの~!」
「実は最初から分かっていたんだけど、つい筋肉に目がいってしまってな」
「う、うーん。本当~?」
懐疑的な面持ちで俺のことを見つめる莉奈。本当は、当てずっぽうだったのがバレそうだ。
「それにしても、なんなんだコレは? 増殖って漫画じゃあるまいし」
すると、ロボット風な莉奈がとある人物を差し出してきた。
「ナオ~! デバンダヨ~!」
「なお? 奈緒もいるのか!」
双葉奈緒。莉奈の妹である。双葉真奈斗の片割れだ。割と存在感薄めではあるが、俺のことを『変態筋肉ゴリラ』と罵ってくるドS。
「そうか奈緒なら、この摩訶不思議な現象に心当たりがあるかもしれない。何か知ってないか?」
「ふっ、それは私のせいだな!」
「それはどういうことだ?」
「姉貴があまりにも可愛いからな。そんな姉貴がたくさんいる夢の世界……それを私が具現化したって寸法よ!」
「そんな軽いノリで!? ちゃんと戻す方法はあるんだよな!」
奈緒はシスコンである。反抗期で数多の男に手を出しているが、本質はシスコンである。それでも、常識の範囲内のシスコンだと思っていた。思っていたのに、さらっと超常現象を起こしている。
「未来の姉貴を見つけられれば夢は覚めるぞ。でも……このままではマズイぜ!」
未来の姉貴、すなわち未来の莉奈?
「だいたい二時間後までに未来の姉貴が見つけられなかった場合。世界が崩壊する」
「なんでだよ!?」
「夢の世界と現実世界が絡まり合って解けなくなってこう……なんだか大変な事になるらしいぞ?」
「なんで曖昧な。くっ、こんな訳の分からない事で世界を終わらせる訳にはいかない……」
「ねえ大樹~! なんか、いつの間にか僕の数が減ってるような気がするだけど~?」
確かに、最初は六人いたはずだったのに、一人姿を消していた。
「困ったな。こうも人数が多いと把握できないぞ?」
「ヤバいよ大樹~! このまま未来の僕を見つけることが出来なかったら世界が崩壊しちゃうんでしょ~!?」
「落ち着きなよ僕。普段からもっと筋トレしておくと動じない心が手に入るよ?」ムキッ
「いちいちポーズをとるな~! 偽物の僕は大人しくしてて~!」
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