セーラー服を着てくれないか?

「何卒、何卒! セーラー服姿を拝ませてください」


「土下座されてもいやだよ!?」


 僕の名前は双葉真奈斗。現在、いとこの安達大樹さんに迫られている。



◇数分前



 帰宅するなり、僕は姉さんの部屋に突入していた。相談事があったからだ。


「姉さん、校長が変態で……」


「おう真奈斗ちょうどいい時に来たな。今、莉奈の同人誌を描いていたところでな」


 僕は反射的に部屋から出て、ドアを閉じた。


 どうして、よりにもよって今日。大樹さんが姉さんの部屋にいるのだろう。今だけ、いや普通に大樹さんは会いたくない人物である。


 僕は再び姉さんの部屋のドアに手をかけて、細い隙間を作りそこから様子を見てみることにした。


 大樹さんが優しい眼差しでこちらを見ている。


「どうしたんだ真奈斗。なんだが浮かない顔をしているが?」


「た、大樹さんには関係ない!」


「そうか」


 その一言だけつぶやいた後、大樹さんは徐にセーラー服を取り出してきた。


「それはそれとして、真奈斗。セーラー服を着てくれないか?」


「なんで!?」



◇そして今に至る。



 彼は僕が物心ついた頃から女物を着せたがった。理由は『姉さんとは別ベクトルでかわいい。童顔でボーイッシュな感じも高得点だから』らしい。


 先手を打っておくが、僕には女装趣味なんてない。


「ど、どうして僕なの……奈緒や、姉さんでもいいじゃないか!」


「よくない! お前は何も分かっちゃいない! 女装男子の素晴らしさが!」


「そう荒息立てて熱弁されても……」


 さっき言った手前だが。先日、この人は姉さんを着せ替え人形のように服を着せていた。さらに、それを絵にしていた。姉さんでは防波堤にならない。


 姉さん、『大樹の彼女になりたい』って毎日のように言っているけど、やめた方がいいと思う。特殊性癖持ちだし。


「大樹さん。多分、校長と馬が合うよ」


「校長? なして校長?」


 校長と大樹さん、多分同類の人間だから。そしてどちらも早く捕まってほしい。もしくは一回専門の病院にかかったほうがいいとも思う。


 男性で女装男子好きははっきり言って異常者だからだ。


「とにかくお前は自分のかわいさを自覚した方がいい!『初めて高校生の制服姿』を見た時、逆になんで学ラン着てるんだろ。と思ったのだから。お願いだ真奈斗! 一回だけでいいから着てみてくれ。絶対かわいいから!」


「大樹さん、気持ち悪いです」


「ありがとうございます!」


「何が!?」



        ◇



 このあと、仕方ないので渋々セーラー服を着た。お股がスースーする……


「はぅっっっ!」


「なんですかその鳴き声」


「思った通り! いや、思った以上にとても似合っているぞ! なんてこった、俺の性癖が壊れていく!」


 姉さん、この変態のことが本当に好きなのだろうか。それとも、なにか弱みでも握られているのだろうか?


 むしろそうであってほしいと願うばかりである。

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