第十二話:枯渇と、裏切りの囁き
美咲が
地下水脈が封鎖されたことで、宮の結界を維持していた清浄な力も枯渇し始めていた。美咲は自室に戻り、自分の新しい装束の白と青が、以前よりもくすんでいることに気づく。彼女の体表には、水の膜どころか、わずかな湿り気すらなかった。
「…力がない」
美咲は、手のひらに集中したが、水滴一つ生み出すことができない。彼女の力は、外部の水源と深く結びついていた。
「龍神様」
「無能なのは私よ」美咲は自嘲気味に笑った。「戦う力がないのに、訓練なんてしたって無駄だったんだ」
「自分自身の清浄な力?」
「はい。あなたの心と肉体の穢れを自ら浄化し、そのエネルギーを力に変える。これこそが、『自浄(じじょう)』の訓練です」
美咲は立ち上がった。もう、選べる道はなかった。
「…やるわ。生きて、この穢れを止めなきゃ、どこにもいけないから」
その夜、美咲は、宮の最も神聖な場所に置かれた水鏡の前に座った。
訓練は、美咲自身の心臓の鼓動を聞き、体内を流れる清浄な生命力と、体内に侵入しようとする外部の穢れを意識的に分離し、浄化する作業だった。
目を閉じると、美咲の意識は、
『無駄だ。お前の体は、絶望と憎悪で満ちている。お前自身が最大の穢れだ』
美咲は、頭の中に響く声と闘いながら、必死に自分の心の中に「澄んだ一滴」を探そうとした。
同じ頃、
「美咲は避けた。しかも、反撃までしてきた」
「黙れ、
しかし、
「僕たちは、
「僕の使命は、君を守ることだ。僕は…美咲に接触する。そして、僕たちの使命の真の目的を、彼女に伝える。これは、君の心を救うための、僕の最後の裏切りだ」
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