第六話:水の穢れと、覚悟の欠片
夜明けと共に、美咲と
「龍神様、ご無事ですか」
門で待っていた
「そうでしょう」
美咲が自室でうずくまっていると、
「これを飲んでください。龍神の力は清浄な水と共鳴します。心身を整える必要があります」
美咲は竹筒を受け取るが、すぐに吐き出すように顔を背けた。
「水なんて、いらない」美咲は憎しみを込めた声で言った。「私の力は、私を助けてくれなかった。彼(
「龍神様、あなたの力は無力ではありません。ただ、この世界が穢れているだけです」
彼は美咲を連れ、窓の外の、
「水龍の力は、清浄(せいじょう)を極めた力。ですが、千年前に
「あなたが学校で使った水は、生活の穢れを溜め込んだ水。穢れは力を減衰させる。これは、
美咲は、自分の感情(絶望、憎悪)が、そのまま自分の力を蝕んでいることを悟った。自分の心と、世界そのものが、自分自身を拒絶している。
「…じゃあ、私は、どうすればいいの」
「あなたの心を清め、力を磨くことです。そして、この世界を覆う穢れを、一つ一つ清浄に変えていく。それが、水龍に課された使命です」
その夜、美咲は眠れなかった。
もう、
(もう、帰る場所はない)
美咲は、窓の外の、濁った池に映る自分自身を見つめた。その瞳には、まだ涙がにじんでいるが、微かに強い光が灯り始めていた。
「…わかった。訓練する」
美咲は小さな声で、しかしはっきりと呟いた。
「普通の高校生に戻る、という望みはもう叶わない。なら、私はもう、松永美咲じゃない」
絶望の底で、美咲は初めて、龍神としての使命ではなく、自分の生き残りのために、力を受け入れる覚悟の欠片を見出した。彼女の無意識の力は、ここから、『感情の暴走』から『力の制御』へと、新たな段階へ進み始める。
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