第16話 新たな手
「はる!」
カナトさんは私の無事を確認すると、すぐさまテーブルの向こうに座る高階に向かって駆け寄った。
「あんたか、はるをこんな目に合わせてるのは!」
高階は驚きに目を見開いたが、次の瞬間にはカナトさんの拳が頬にめり込んでいた。
ゴッ、という鈍い音が響き、高階の体が椅子から投げ出される。
彼女の意識は一瞬で途切れ、床に倒れ込んだ。
「はる、大丈夫か!?」
カナトさんは高階を無視し、私の手を掴もうとしたが、反射的に手を引っ込めた。触れれば溶けてしまう。ごめんなさい助けてくれたのに。
「ごめん、そうだったな」
と、カナトさんはすぐに手を引っ込め、テーブルの上の学習チップ生成装置に目を向けた。
チカチカと点滅する緑色のランプを見て、彼はそれが何かの解析装置だと察知した。
「これを止めればええんや!」
カナトさんは装置の電源ボタンを何度も連打したが、ランプは点滅を続ける。
電源コードを抜こうと引っ張るが、しっかりと固定されているようだ。
「まじか、止まんない…」
その間にも、私の頭の中には外の世界での記憶が流れ込み、激しい頭痛が襲っていた。
「はる、向こうだ!」
カナトさんは私の手を引き、ガラス張りの壁の向こう側を指さした。
そこには、脱出経路へと続く廊下が見えた。
恐怖と頭痛で体が麻痺している。
動きたいのに動けない。
「早く!」
カナトさんはを促すが、私はどうも立たない。
彼は苛立ちながらも、状況を理解し、次に目を向けたのはガラス壁だった。
「この壁を壊せば、外に出られる!」
彼は全力でガラスに拳を叩きつけた。
ガシャンッ!と大きな音が響いたが、強化ガラスはびくともしない。
何度も何度も、血が滲むほどに拳を叩きつけるが、ガラスには傷一つ付かない。
すると、何か閃いた様子でこちらに駆け寄ってくる。
「この機械を止めれる人の名前は?恩師とか!」
私は記憶が曖昧になりながらも必死に思い出す。
恩師?
「柳街さん———」
「そいつ呼んでくるから、待っといて」
そう言ってまた私のそばを離れた。
また、またさっきと一緒じゃん。
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