第44話

「では、第二回会議をはじめます」

 木のコップに入れた水と、焼き鳥を前に二人で向かい合って座る。

「あー、なるほどな。もっと早くに気が付いていれば……」

 ヴァルさんが木のコップをしげしげと眺めながら水を飲む。

「……石は簡単に加工できちゃうのに、どうしてそれより柔らかい木は加工できないと思ったの?」

 いししとヴァルさんが笑った。

「柔らかすぎて」

 あ、うん。確かに、ツルハシで木に穴開けようとしガンガン壊してた。

 肩を叩いてそっと短剣を渡すと、私が肉を切るのと同じような感じで木を輪切りにして、短剣の先で中をほじほじしてコップを作ってくれた。

 ……そう、20個くらい力加減が分からずにダメにしたけど、やっと21個目にして成功。……いや、怪力すぎん?違うな、怪力だったとしても、卵を持ったら割り続ける人なんていないんだから、力加減が下手すぎん?

 私、よく生きてるな。ゴリゴリごりと抱きつぶされなくてよかったよ……。

「って、それはそうとして、会議をはじめます」

 焼き鳥をもぐもぐと食べる。

「大事なことを確認してなかったんだけど、ヴァルさんはどこへ行きたいの?森を抜けて人間の住む街にって言ってたけど、草原の向こうの街に行きたいの?荒地の向こうの街ではだめなの?」

 ヴァルさんは、未加工の野蒜の葉っぱと焼き鳥を一緒に口に入れてもぐもぐしている。辛さにはまっているようだ。

「いや、問題ないぞ?俺は根無し草だ。あ、根無し草って分かるか?」

 いや、分かるけど。

「あれみたいなもんだ」

 ヴァルさんが風に転がる回転草を指さした。

 いや、違うよね?種をまき散らしながら転がってるとか人間なら大問題だから。

「冒険者だから、依頼とかであちこち行くってこと?」

 日本の物語の知識が役立つか分からないけれど、間違ったことを言っても子供だからでごまかそう。

「おお、そうだな。拠点を持つ冒険者もいるが、俺のような奴は、拠点は持たない方がいいんだ」

 どこか遠い目をする。

 俺のような奴?

 まだ拠点を持てるだけ稼げない……ってわけじゃないよね?

 問題行動起こすタイプでもなさそうだけど。

 あ、問題は問題でも女性問題?振られるたびにうじうじして相手の女性と顔を合わせたくなくなるとか?

 ガンバレヴァルさん。お姉さんが女性の口説き方をいつかレクチャーしてあげるからね……って、まぁ、私も前世もそれほど恋愛してないから小説の知識になるけども。それでいいなら……。

「だから、目的地は特にない。冒険者は国ではなく冒険者ギルドに籍があるからどの国へも移動自由だしな」

 ふむふむ。

「もう水が空か。汲んでこよう」

 ヴァルさんが立ち上がって、掘った穴に、ヴァルさんが即席で作ったバケツに、私が蔦を編んで即席で作ったロープを結んで落とした。

 水をくむためにいちいち穴の中に入るわけにはいかないでしょう。ヴァルさんほどの身体能力があれば問題ないにしても。

「ごくごく、ぷはー」 

 コップに入れてくれた水を飲み干す。

 ポンと置くと、ヴァルさんが水をそそぐ。

「ごくごく。ぷはー」

 ヴァルさんが水を……。もういいよ!わんこ水か!

「じゃ、私も行先どこでもいいから、荒野を超えよう。2,3週間ならきっとあっという間だよ」

 森の中を4か月もうろつくなんてごめんだ。

 いや、本当にごめんなのは、もうエルフに近づきたくない。

「いや、だから、食料がないんだぞ?鳥も飛んでない。魔物も探せば岩石トカゲや岩石蜘蛛なんか要るかもしれないが、運がよければ見つかる程度だ」

 あ、一応いるのか、魔物。

「ヴァルさん、冒険者って、食料を持ち歩くことはないの?」

 ヴァルさんが首を傾げた。

「ある、な。そういえば。食べられる魔物が出る場所では持って行くより狩ったほうが早いから忘れてた」

 うん。ヴァルさん理論。

 強い冒険者じゃなくちゃ無理だよねー。あと、丸焼きしちゃう魔法が使えないと捌いて焼いてとか時間も取られるし魔物の血で他の魔物引き寄せると大変だし……。

「さすがに何か月もとなると保存食を持っていくのも大変だと思うんだけど、2~3週間なら保存食を持っていけばいいと思うの。水まで運ぶとなると無理だけど、水が何とかなるなら」

 ヴァルさんが私の頭を撫でた。

「フワリは賢いなー。もしかしたらお前の両親も冒……いや、鳥肉もっと食え、いっぱい食べて大きくなるんだぞ!」

 ヴァルさんが慌てて私の口に鳥肉を運ぶ。

 ……そうだ。ヴァルさんは私が森の中に親に捨てられたと思ってるんだよね。あんな人里から離れ魔物もたくさん出る森に入るのは冒険者くらいしかいないってことなんだろうな。

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