第26話
「はぁー、おいしかったなぁ」
再び抱っこされて森の中を進んでいる。
何年かぶりのお肉はそれはもう、塩だけの簡単な味付けにもかかわらず、絶品だった。
新鮮でぷりぷりした鳥肉……。
「何の鳥だったのかなぁ……森に棲んでる食用のあれくらいの大きさの鳥なら……ヤマドリとか?」
ヴァルさんが良い笑顔で私の頭を撫でた。
「鳥ならなんだって食べられるぞ。魔物でも空を飛んでいるものは食える。小さい鳥は毒を持っていることもあるが、大丈夫だ」
にこりと笑って説明してくれるけど、これ、鳥の名前を知らないやつなのでは……。それに何が大丈夫なんだ、毒だぞ?
「小さい鳥は消し炭になって食べられない。間違えて食べてしまうことはないからな」
……あ、うん。ヴァルさん専用の大丈夫理論。
「あの魔法は火魔法なの?」
「ん?ああそうだ。火球を改良したオリジナル魔法だな。仕留めてから焼くより、仕留めながら焼いた方が時間短縮になるだろう?」
「血抜きとかしないとダメだし、短時間じゃ表面だけ焼けるだけじゃないの?なんでおいしく焼けてたの?」
ヴァルさんがよくぞ聞いてくれましたとばかりに語りだした。
「フワリはよく知ってるな。そこが改良点なんだが、火球から細かい火魔法がとびだして鳥に突き刺さって内部からも焼くんだよ」
散弾銃をイメージする。無数の小さな火か鳥の中に刺さるってことか?
「内部では長く燃えることがないから黒焦げにはならないが、血を蒸発させてくれる」
酸素がないから燃え続けられないってことかな。
そういえば鹿とかは血抜きしないと臭いけど天然の鴨は血は臭くなくてむしろ旨味があるから血抜きしないで食べるって聞いたことがあるけど、水分だけ蒸発させると旨味が肉の中に残るってことかな……?
「すごい魔法だね、ヴァルさんすごい」
「そうだろう?でも問題点も多いんだよ。大きな獣では内部までちゃんと火が通らない。小さすぎては消し炭になってしまう」
そうなのかぁ。
「あと、素材をダメにしてしまう。希少な青い羽根の魔鳥を焼き鳥にした時にはマリアにほほが腫れるまで往復びんたされたなぁ」
虐待かと思ったけれど、懐かしそうに話すヴァルさんの顏に憂いはない。
きっと、漫画的なあれなんだろう。
「マリアさんって?冒険者の仲間ですか?」
私の言葉に、ヴァルがああと小さく頷いた。
「ああ。冒険者に登録したときに面倒を見てくれた女性だ」
「えーっと、今は一緒に活動したりしないんですか?」
「ああ、彼女はとっくに引退したからね」
引退?怪我とかで?それともレベルの違いを感じてやめていったのかな?
「ああ、そんな顔しなくても大丈夫だよ。結婚して子供が出来たから引退したんだ」
ほっと息を吐きだす。
「そろそろ孫でも生まれて」
「え?孫?」
ヴァルさんが今20歳と仮定して、10歳の時に面倒を見てもらったとしても、引退してまだ10年たつかどうかで、孫?
いや、ヴァルさんは実は30歳近くで、8歳くらいで面倒見てもらえば引退から20年以上たつからおかしくはないのか?
「あ、いや、まごまごしてたら生まれてるだろうって思って」
んん?なんですと?
これは、もしや。
マリアさんのことが好きだったのに、他の人と結婚して子供もできたと聞いた。
おめでとうの言葉も伝えられずにまごまごしているうちに、子供が生まれちゃったんじゃないかなって話?
こんな人の街まで何か月もかかるような場所にわざわざいたのは、人里から離れてマリアさんに会わないようにしていたとか。会わなくても噂が聞こえてくるのが嫌だったとか、そういうこと?
それとも、単に、失恋の痛手を旅で癒すみたいな感じでうろうろしてただけ?
ヴァルさん腕のいい冒険者で見た目も悪くなくて優しいのに……。
手を伸ばして、頭をなでなでとしてあげる。
「ん?なんだ?」
しまった。前世の記憶が頭をもたげ、慰めようとしたら手が出てしまった。
弟のような感じに……というのは、嘘で……。
片腕に抱っこされてる状態だと、目の前に、ふさふさ揺れるヴァルさんの髪の毛があってですね。前世の子供のころに飼っていたチャウチャウ(犬)に似た色だなぁって。
ほら、前世は周りほとんど黒髪で、今世は周りほとんど金髪だったから、こんな茶色い毛……見たら……こう……思い出すよねって話で。別に、ヴァルさんを犬扱いしようと思ったわけでは……。
「うんと、子供が生まれたら、こうして頭を撫でてあげるのかなぁ……って、えへへ」
我ながらごまかし方が下手くそすぎやしないかな?と思ったら、ヴァルさんは私の頭を大きな手でがっしがっしと撫でる。
「マリアがいれば、フワリの頭もめちゃくちゃ撫でてくれるぞ!俺も子供のころは止めろというのに撫でられた。……ああそうだ、撫でてくれたんだ、親の代わりに……」
親の代わり?
ん?そんなに年が離れてたのかな?
「大丈夫だ。フワリはかわいいから、これからみんなに嫌って言うほど頭を撫でてもらえるさ!」
ガシガシと撫で続けるヴァンさん。
「もう、いいよ、十分だからっ」
「遠慮するな、しかし、撫でるのって、癖になりそうだな」
ん?もふられてるのか?確かに私の髪は細くて柔らかくてモフ心地が、ちがった、撫で心地がいいのかもしれないけど……。
ヴァルさんがその気なら、こっちだって遠慮しないもんね!
両手を伸ばしてヴァルさんの髪を撫でまわす。
「おい、フワリ、やめろ、くすぐったいっ」
「もふもふもーふ」
「なんだそのもふもふってのは」
「もふもふもふ……えへへ」
「……ま、フワリが楽しいならいいか……」
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