第10話


 「片栗粉、結構いっぱいできた」

 昨日作って天日干ししていたものと、一昨日作ったものを合わせると1キロくらいあるだろうか。小麦粉の1キロ入りの袋分の量くらいの体積がある。

「片栗粉と言えば……」

 なんちゃってわらび餅が作れる!

 20g~40g、水はその9倍くらいだったはず。砂糖が欲しいところだけどないものは仕方がない。

 あと、きな粉か黒蜜も欲しいけど、無いものは仕方がない。

 だけど、今までガサガサした食感のパンが主食だったんだ。

 もちもち食感が口に含まれるだけで、絶対幸せになれるやつ!

 前世の記憶が食べたことないけど情報として蓄積を思い出した。

「そうだ!どんぐりの粉!」

 クッキーとか作ったりするレシピは見たけど、そもそも元となるどんぐりの粉。

 ……炒ってから粉にしたどんぐりの粉は、きな粉の代わりになるんじゃないだろうか?味は、香ばしくて栗っぽいみたいな話だし。

 ああ、今の私の顔を漫画的表現祖すると、きっと目が星になってキラキラしていることだろう。

 どんぐりなら森の中に落ちてる。

 今までは地面に落ちたものは食べないというエルフの村のルールに縛られていたけど……。

「私は自由だー!」

 白い粉。まずは君だ。

 白い粉と水を鍋に入れて熱してとろみが出るまで混ぜるだけ。

 砂糖はないからあきらめて。

 計量は目分量でいいよね。たぶん水分が多すぎても熱してれば飛ぶだろうし。

 鍋に、白い粉……片栗粉を入れ……。

「あっ、鍋が、鍋がないっ!」

 今さらだけど、鍋がなかったんだ。

 どうやって手に入れたらいいんだろう?

 ドワーフに知り合いがいればお願いできるのに。徹底的にかかわりを持たない村だし、たぶんドワーフも関わりたいと思ってないから近づかなかっただろう。

 近くに野良ドワーフがいる気がしない……。

「近くにドワーフいるかな?」

 精霊に相談してみる。……無風。やはりか。いないのか。

 あれ?それとも……。

 風の精霊は土の精霊や火の精霊と仲が悪いとかある?ドワーフと関わりたくない可能性もある。怖くて聞けない。

 金属の鍋を手に入れる手段は今はないということだ。

 鍋、鍋……。そういえば、紙で作った鍋で出す和食屋さんとかあったよね。

 水に強い紙でも鍋代わりになるんだから、葉っぱ?ん?和食屋さん?鍋?

 和食の鍋って、紙なんて少数派で、鍋って言ったら土鍋……。

「さすがに、金属を溶かすだけの火力は出せないけど、土器なら焚火で作れるのでは?」

 粘土を探そう。

 粘土があるのは……。

「下流とか、川で物が停滞してたまりそうな感じになっているところ……」

 あ、さっき水浴びしたところ、対岸の地層にばかり目が行っていたけど……。あったんじゃない?足元は見てなかったけど、探そう!

「ああ、ちょっと楽しみかもしれない。陶芸やってみたかったんだ」

 土器……やっぱり縄文式土器から始めるのかな?

 弥生式土器だと野焼きじゃなくて、覆い焼きだよね。動画で見たことあるけど、藁で囲ってその上に灰や粘土でふたをする。

 ってことは藁がいる。枯草でいいのかな?草を干して枯れ草を作らなくちゃ。

 薪ももっと集めなくちゃ。

 ああ、やることがいっぱい。

 でも、1000年も生きるんだよ?

 弥生時代から古墳時代、飛鳥時代、奈良時代、平安時代と生きちゃうんだ。

 もしくは平安、鎌倉、室町、戦国、安土桃山、江戸、明治、大正、昭和、平成、令和……って、1000年長いな!

 やることがいっぱいでも、大丈夫。時間はたっぷり。

 縄文土器から初めて、瀬戸物までたどり着いちゃうかもよ?

 醤油や味噌だって作れちゃうかもしれないよ?

 ああ、世界中を食材求めて旅するのもいいかもしれない。

 いや、良くない。エルフがかたくなに森の中に住んで人と交わらない理由がヤバイと、詰む。

 行く先々で、「わー、エルフだ!」と石を投げられたらたまったもんじゃない。

 下手したら「エルフだ!やっつけろ!」と命まで狙われたら……いや、むしろ奴隷コースか?……どっちも最悪だなぁ。

「あ……」

 耳に触れる。

「エルフの特徴である長い耳のない私……」

 逆に考えればエルフであることを隠して人間に紛れられるんじゃない?って思ったじゃん。

「くふっ、くふふっ、ふふっ」

 なぁーんだ。

 耳が短いことはすごくいいことじゃん。

 私、人間なら最強じゃん?美形で長生き。

 よし、大人になったら世界を旅しよう。大人になるまでは森で生き抜く。

 んー、まずは土鍋づくりだね!

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