第4話
いや、毒を使って狩りをしなくても、罠を設置すればウサギとか小動物なら捕まえられるのでは?
まるで紫色の絨毯を敷き詰めたような紫色の花の前にしゃがみ込む。
「これが、本物のトリカブトかぁ……」
百合の花みたいな形で、下を向いて咲いている紫の花……?
うん?
トリカブトって、キンギョソウみたいに小さい花がぽこぽこぽことついているんじゃなかった?
「これって……カタクリなのでは?」
ふっと髪の毛が風に揺れた。
「そうだよって教えてくれたの?ありがとう」
精霊の風なのかな?とお礼を言うと、もう一度風がふいた。
もし毒で危なかったら精霊が教えてくれるよね?さすがに加護だとすれば、危険時に警告はしてくれるはず。
……いくら魔法も使えない小さな加護だったとしても。
目の前に広がる紫の絨毯っ。
「これ、本当にカタクリ?カタクリが、こんなに?」
片栗粉が作れるのでは?
確か、花も茎も全部食べられたはず!
さっそくカタクリを引っこ抜く。
「おお、お?おおお?」
球根…… 鱗茎をすりつぶして片栗粉を作るんだったよね?想像していたのは、ニンニクとか、チューリップとかのまるまるとした 球根。
それが、思ったよりほっそりしていて小さい……。
10本抜いても、小さなジャガイモくらいしかない。
どれだけ使えばお腹が膨れるだけの片栗粉が取れるのかなぁ……?
まぁいいや。たくさん生えてるから、たくさん作れる。どうせ時間だけはたくさんあるんだ。
引っこ抜いてある程度の数が集まったらその辺の弦で束ねる。
それから薪の代わりに背負子に括りつけて背負う。
「あっ、水分がある分重たい……」
んー、土もついているから余計だよね。
「水場がないかな……」
風が耳をくすぐる。
「ん、あっちにあるの?」
精霊に教えてもらった方向へ歩いていくこと20分ほど。
「うわぁ、すごい」
池があるけど、大きな丸い葉っぱがいっぱい浮かんでいて池があるのに気が付くのが遅れた。
「どれどれ、もしかしてモネのスイレンみたいにすごく透き通って綺麗だったりして?」
と、池をのぞき込んだものの、さほどではなかった。
背負子を下ろして、土を洗い落としていく。
花と葉も洗って 鱗茎以外は弦で縛って木に吊るして乾燥させることにする。
カタクリの葉や茎は食べすぎるとお腹が緩くなるらしいから。
今日食べる分以外は保存食。乾燥させておけば日持ちするよね。
……この季節はあまり雨が降らないし、池のほとりは風がよく通るし太陽の光も十分当たるから干し野菜が作れるはず。まぁ、カタクリは野菜か?といわれると……。
「雨だれ石を穿つっていうけど……」
自然にできたすり鉢のように穴の開いた大きな石があった。
そこに洗ったカタクリの球根部分、 鱗茎を入れて、その辺で拾った木の棒で叩いてつぶしていく。つぶれてきたら石に押し付けるようにしてすりつぶす。
大きな葉っぱをちぎりとって三角錐のようにくるくると形作ればあっという間にコップ代わりの物ができる。
水を汲んでつぶしたカタクリと混ぜる。
白く濁った水。よく水で洗ったハンカチを、カタクリをつぶして水と混ぜたものが入ったくぼみに入れる。下に入れ込むと、すべてをくるむようにして持ち上げぎゅーっと水を絞る。
白濁した液体が下に落ち、ハンカチの中には固形物のカスが残った。
「これも、食べられるんだろうか?」
無駄にするのもなんだから、持って帰って何とかしてみよう。
あとは、片栗粉、でんぷんが沈殿するのを待て、水を捨てればできるはず。
「鍋か何かがないと作りにくいなぁ……」
木の器やコップならエルフの村にもたくさんある。
だけれど、金属を使った鍋はない。
なぜなら、金属加工が得意なドワーフと仲が悪いから。金属類は不浄だとして使おうとしない。
現代日本の知識があると、ばかばかしいなと。
肉や魚を焼く。木の実は生で食べられる物は生で食べる。
石と土で作ったピザ焼き窯のようなもので固いパンみたいなものを焼くのが精いっぱいの料理。木の鍋に焼いた石を入れてお湯は沸かす。
エルフの村には金属の鍋もないが金属の包丁もない。
1000年も生きる種族なのに残念過ぎる。
まぁ、村にあったとしても私が手に入れられるわけもないんだけど。
……どうするかなぁ……。
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