混沌のピラミッド
RexxsSen
第1話
第1章 — 「世界で最強の男」
空が燃えていた。
黒い雲が街の上でうねり、まるで天を裂く傷のように広がっていく。
その裂け目から、巨大な存在が降りてきた。
骨と燃え盛る肉でできた翼を持つ、巨大な怪物。
翼を一度振るうたびに、炎の衝撃波が走り、建物を溶かしていった。
精鋭の魔導師たちは叫び、命令を飛ばし、必死に聖なる名を唱えたが、
そのどれもが無意味だった。
混乱のただ中、ひとりの少年が静かに歩いていた。
十八歳ほどの細身の青年。
髪は緑・白・赤の三色に染まり、炎の中で光を受けて輝いていた。
服は破けていたが、その姿勢は余裕そのもので、どこか怠けたようでもあった。
半分閉じた瞳は、まるで世界の終わりなど退屈だと言わんばかりだった。
「またコイツか……」
少年は静かに呟いた。
「もう何体目か覚えてねぇな。」
逃げ惑うハンターたちは、彼を見て正気を疑った。
「離れろ、バカ! あれはAランクのシンジュだ! お前なんか一瞬で食われるぞ!」
「へぇ。」
少年は肩をすくめた。
「少しくらい刺激があってもいいかもな。」
シンジュが咆哮した。
割れた顎の奥で、紅の光が脈動する。
空気が歪む。
そして放たれた――天を焦がす、終焉の炎。
地面が揺れ、轟音が街を飲み込む。
建物は紙のように折れ曲がった。
やがて煙が晴れると、怪物は動かなくなっていた。
その体に、上から下までひとすじの亀裂が走る。
膝をついた巨体は、光の粉となって崩れ落ちていった。
その残骸の中から、ひとつの結晶が浮かび上がる。
ゆっくりと回転する、透明なピラミッド。
中央には古代の紋章が輝いていた。
その下に、無傷のまま立っていたのは――
少年。
彼の名は、アレックス。
炎の光が、彼の肌に不気味な影を落とす。
肩から指先まで、腕は真紅に染まり、皮膚のない生きた筋肉のように脈打っていた。
それは、人のものではなかった。
獣の腕。
存在してはならないもの。
アレックスはそれを一瞥し、
そして何事もなかったようにポケットへ手を突っ込んだ。
「ちっ……まだうまく制御できねぇな。」
彼はため息をついた。
「ま、どうせ誰も信じねぇだろ。」
周囲のハンターたちが瓦礫の中から這い出し、呆然と彼を見つめる。
「お、お前……何者だ……?」
アレックスは欠伸をし、空を見上げた。
シンジュが出てきたポータルが、ゆっくりと閉じていく。
「俺?」
彼はだるそうに笑った。
「ただの――世界で一番強い男だよ。」
沈黙が広がる。
怪物のピラミッドはまだ宙に浮かび、彼に拾われるのを待っていた。
だがアレックスはそれを一瞥し、背を向けた。
「いらねぇよ。」
風が吹き、シンジュの灰を巻き上げる。
緑・白・赤の髪が、崩壊した街の中でひときわ輝いた。
まるで――空そのものを嘲笑うように。
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