#11




目が覚めた。



うーむ。



今回の夢はまた一味違ったなぁ。


見ず知らずの少女に泣きそうな表情で「抱き締めてなん」て言われるから思わず抱き締めてよちよちしてしまった。


現実でそんなことするのは有り得んけども夢の中ならいいかと気軽にやってしまったところはある。


いやー、しかし女の子ってなんかやわこいし、いい匂いするよなぁ。まるで彩火みたい。いやアイツは男だけど。


夢⋯⋯夢だよなぁ。


毎回、思うんだけど感触とか匂いとかやたらと生々しいのよな。記憶もハッキリくっきり覚えてるし。


それにあの女の子⋯⋯本当に見覚えがない。


あの子は何処から湧き出してきたのであろうか?いや湧き出してきたって言い方アレだけど⋯⋯。



⋯⋯⋯⋯。



ん?



そこでベッドの横に設置されているテーブルの上にラップされた料理があるのに気がつく。


あっ、メモも置いてある。


『朝ごはんもしっかり残さず食べてくださいね♡佳奈』


となるとこれは佳奈ちゃんが用意してくれた朝飯か。


そういえば昨日は佳奈ちゃんがゴハン作りに来てくれたんだっけ。


記憶を掘り返してみる。


夕食を食べたところまでは覚えているが、気がつくとそこからの記憶が曖昧だ。


おそらくメシ食ったらそのまま寝てしまったのだろう。


何やってんだ俺⋯⋯佳奈ちゃん居るのに寝落ちとか恥ずかしいヤツめ!


それで佳奈ちゃんは佳奈ちゃんで朝飯の作り置きして帰った感じかな⋯⋯これは今日会ったらお礼と謝罪をせねばなるまいて。


それにしてもアレだ。


妙に全身がダルい。


ダルいのに妙にスッキリしている。


あと昨日シャワー浴びた記憶は無いのに風呂キャンした時のベタつきとか不快感が無く、サッパリしている。


服も着替えてる。夕食を食べてた時は着替えるの面倒臭くて学生服で食べてたハズなのに⋯⋯。


これはどういうことでしょうか?


優秀な俺が無意識でそこら辺を済ませたってとこかなぁ?まあ俺ちゃん優秀だし⋯⋯そんなとこかな!


さて、折角作ってもらったんだから佳奈ちゃんの手料理を食べて学校行くか!


俺は朝から幸せな気分になった!













「あっ、委員長だ。おはよう」


「チッ⋯⋯」



登校時。バッタリ我がクラスの委員長である姫野杏と出くわしたので声をかけたら舌打ちとまるで下水に流れる汚水を見るかのような眼差しが返ってきた。



「朝からドブ虫に出くわすとは気分が最悪だ。朝から汚い顔を晒すな。あまりの穢らわしいさに目が腐る。オマエは私の目を潰す気か?これは立派な加害だぞ。悔いて謝って処刑されろ。おはよう」


「ちゃんとおはようは返してくれる委員長は律儀」



散々罵倒を浴びせかけてくるけども、なんだかんだで挨拶はしっかりとする委員長。こういうとこ真面目でポイント高いよねー。



「折角だし教室まで一緒に行こうぜ!」


「寄るな、触るな、近寄るな。腐卵臭がする。なんだオマエはセクハラで訴えられたいのか?無期懲役だ。一生、檻の中から出てくるな。それが世のため人のためだ」


「セクハラに対してあまりに重い罪!」



いや被害者側からしたら気持ち的にはそういうとこあるだろうけども!セクハラしてくるクソ野郎は一生豚箱生活してろ!って思うけども!


ちょっと近寄っただけで俺まだ触ってない!ノータッチ!ノータッチ!


なんだったら委員長の方から微妙に近付いて来てくれてるし!冤罪です!僕は無実です!



「しかし、やむを得まい。他に迷惑をかけないように私が監視する必要があーー⋯⋯おい」



ちょっと近付いてきた委員長の雰囲気が突然、切り替わる。



「⋯⋯啓夢」


「えっ、なに?急にどうかした?」


「オマエ⋯⋯昨日ナニかあったか?」


「ナニかって⋯⋯なに?」


「⋯⋯⋯⋯」


「委員長?」


「⋯⋯臭うぞ」


「えっ、マジ!?」



臭う!?なんか大丈夫そうだから、そのまま来ちゃったけどやっぱりシャワー浴びてから来た方がよかったか!?



「不快だ」


「お、おふっ⋯⋯なんかごめん」


「啓夢⋯⋯昨日は誰と一緒に居た?」


「昨日?昨日は佳奈ちゃんが夕飯作りに来てくれて⋯⋯」


「ほう」



俺がそう言うと委員長の目つきの鋭さが増した。








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