#6
目が覚めた。
モゾモゾ⋯⋯。
腕⋯⋯よし。足⋯⋯よし。内蔵⋯⋯飛び出してない。首⋯⋯胴体と繋がってる。
五体満足異常無し。
うむ。やっぱり夢は夢だよな。それに夢の中で佳奈ちゃんにバラされてたのは見てくれは俺ではあったけど、もしかしたら俺っぽい何かであって、俺ではなかったのかもしれない。
いやでも佳奈ちゃんが啓夢さんって言ってたな⋯⋯。
やっぱり俺か。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
もう深くは考えないようにしよう。
所詮は夢。
そこでふと違和感。
夢って起きたら記憶曖昧になるくね?ハッキリと夢の内容を覚えてるってなくない?
しかし、夢の内容はしっかりくっきり俺の脳裏にこびり付いていて、なんだったらその光景も感触も匂いすら思い出せる。
やべ。ちょっと思い出したら気持ち悪くなってきたわ⋯⋯吐きそ。
どうせ夢を見るなら、あんな狂気の人体解剖お料理ショーなんかじゃなくて、もっとまともな夢を見たい⋯⋯。
どうしたこんな夢ばかり⋯⋯。
まあ、言うて気にしてもしゃーなし。
夢は夢だし。現実とはまったく関係ないわけだし。
悪夢を見てしまったと割り切るべし。それしかないだろう。なるべく思い出さないようにしよう。
でもなー。なんか悪い記憶。苦い思い出に限って忘れられないんだよなぁ。楽しかった記憶とかすぐに忘れるのに。ふとした瞬間フラッシュバックする。
アレ、不思議だよな。
◇
「あっ、啓夢さんだぁー。おはようございますー!」
学園へ登校中にバッタリ佳奈ちゃんと出くわしてしまった。
今日も今日とてニコニコ笑顔の佳奈ちゃん。その頬には俺を切り刻んだ時に浴びた返り血がベタりと張り付いている。
目を擦る。
いや、そんな血痕なんてついてるわけがない。
「お、おおおお、おはよう⋯⋯佳奈、ちゃん⋯⋯」
気がつくと身体が震えていた。
佳奈ちゃんの笑顔を見ると身体の震えが止まらない。生き物としての生存本能が警鐘を鳴らす。
「⋯⋯啓夢さん。どうかしましたかー?」
「えっ⋯⋯?」
「お顔が真っ青ですよぉ?どこか具合でも悪いのでしょうかー?」
「あ、ああ⋯⋯い、いや⋯⋯!べ、別にどこも悪くはない⋯⋯よ?」
「それならいいんですが⋯⋯季節の変わり目で体調を崩しやすいですからねー。体調管理はしっかりしないといけませんよー?」
「お、おう!大丈夫大丈夫!俺こう見えて病気になった事とかないし!身体には自信あるから!」
「あらあらまあまあ⋯⋯それはとてもとても素敵ですねっ!それでこそ啓夢さんですぅ!⋯⋯ーーやっぱり健康な肉ほど美味しいですからねぇ♡♡♡」
「⋯⋯ん?佳奈ちゃん⋯⋯今、最後なんて言ったの?ちょっと聞き取れなかったんだけど⋯⋯」
「はい⋯⋯?私は何も言ってませんよ?」
「あ、あれ⋯⋯確か今なんか言ってたような気がしたんだけど⋯⋯?」
「やっぱり啓夢さんどこか具合が悪いのではないでしょーか?今日は大事をとって学園をお休みになられては?」
「うーん⋯⋯」
体調は悪くない。すこぶる健康ではある。
だがしかし⋯⋯変な夢を見てメンタルをやられてるっていうのはあるよね!
学園を休む、か。
いや、その選択肢は無いな。
皆勤賞途切れてしまうし、休んでるから遊んでるわけにもいかなくて、家で安静にしてないといけないじゃん?それで家で何するよ?とりあえず寝るじゃん?そうなるとまた変な夢を見る可能性がある。
やっぱり無いな。普通に学校行こ。
「大丈夫!どこも悪くないから!」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「佳奈ちゃん?」
「⋯⋯啓夢さんは確かお一人暮らしでしたよね?」
「えっ、まあ、そうだけど?」
事情があって俺は親元を離れてアパートで一人暮らしをしていた。まあ事情といっても大した事情ではないのだけれども。
「ちゃんとゴハン食べでますかー?」
「ゴハン?普通に食べてるけど⋯⋯」
「今日の朝食は何を食べましたかー?」
「コンビニで買ったおにぎりとお茶」
「あらあらまあまあ。ちなみに昨日の夕食は何を食べましたかー?」
「スーパーで買ったアジフライ弁当」
「あらあらまあまあ。啓夢さんは自炊なさったりはしないんでしょーか?」
「そうだね。基本的にはコンビニかスーパーで買っちゃってる」
「それはいけません!」
「いけません!(?)」
「そーいうのはあまり健康によろしくないですよぉ!」
「そっかー。やっぱりそういうとこあるよねー」
「ですから、もしよろしければ私が啓夢さんのお食事用意しましょうーか?」
「ふぇ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます