とあるハンターの話 ―side:M―

弓鳴智香

プロローグ

 きっと、わたしの人生というものは、はた目から見て、とても平凡なものではなかったし、順風満帆なものでもなかったろう

 それでもわたしは、自分の生きてきた道は、とても幸福で、満たされたものだった


 可哀相だと泣いた人が居た

 どうして君がと嘆いてくれた人が居た

 わたしを助けたいと言ってくれた人が居た


 わたしの幸せを願ってくれた人が――たくさん居たのだ


 わたしは、空っぽだった

 何もなかった


 けれど、いつの間にかそんな人たちがたくさん居た


 なあ、だから、わたしはとても幸せだったんだよ

 泣いてくれた君が居たから、わたしは可哀相じゃなくなった

 どうしてと嘆いてくれた君が居たから、わたしは自分で自分を嘆かなくなった

 助けたいと言ってくれた君が居たから、それだけでわたしは助かっていた


 幸せを願ってくれた君たちのお陰で、空っぽのわたしは、とても、ずうっと、幸せだった


 最期の時、わたしに残ったのはただ一つの小さな後悔だけだ

 その後悔だって、本当に小さなものだったから、きっとそれを抱いた相手である君は、数年もしたら忘れるようなもの


 そして、君が忘れてさえくれれば、わたしには本当にもう、何の後悔も残らない


 幸せだった、幸福だった、満たされた――きっと、そんな人生だった


 君から聞かれた「今、幸せ?」という問いに、「ああ、幸せだよ」と答えたのは、ただの、本当のことなのだよ

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