落下
これは夢だ。私は夢を見ている。所謂、明晰夢というやつだ。
辺りを見回すが何もない真っ白な空間が広がっているだけで、なんとも楽しくない夢である。しばらく歩いてみるが、真っ白な空間に終わりはないようで景色は一向に変わらない。折角の明晰夢なのだからもっと刺激的な夢を見たかった。
このまま居ても変化はなさそうなため、私は夢から覚めようと頬をつねった。しかし目が覚める様子はない。次第に孤独感と焦燥感が渦巻き、私はなんとしても夢から覚めようと走り出した。
走っても走っても眼前の景色は変わらず、真っ白な空間が広がるだけだ。もはや自分が走っているのかも分からなくなってきた。
「あああっ!」
叫んでみても変わらない。空間は声さえも吸収して、叫び声は反響もなく消えていった。それからどれくらい時間が経っただろうか。立ち止まっていても仕方ないので私はひたすら歩き続けていた。いや、本当に歩いているのだろうか。もしかすると走っているのかもしれない。もしくは実は立ち止まっているのかもしれない。とにかく私は空間の中で踠いていた。
それからさらに時間が過ぎていった。すると、目の前に突然真っ黒な穴が出現した。穴を覗くが底は見えない。しかし私に迷いはなかった。今はとにかくこの真っ白な空間から逃げたかったのだ。
迷いなく穴へと飛び込むと、心臓が浮き上がる感覚が襲った。間違いなく落ちている。落ち続けている。歩くことも走ることもできずに落ち続けている。
穴の入り口が真っ白な太陽のようだ。それも今では星屑のように小さくなり、やがて消えた。残っているのは本当に暗黒だけ。その暗黒の中を私はひたすら落ち続けている。今も。無限に。
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