世界救ってから10万年、死ぬほど頑張って世界救ったのに眠りから覚めたら知り合いがみんな死んでて10万年経っていた件
@Aoba3737
1話:寝坊十万年でも報酬の受け取りは間に合いますか?
現代日本、大阪万博が行われる年の夏。この俺、村田優希17歳は学校帰りにトラックに轢かれて異世界へというテンプレートな方法で異世界転移した。
それからのことはテンプレ通り。ヨーロッパ風の城の中にある豪華な大広間に描かれた魔法陣の上に気が付いたら立っており、目の前には国王らしきお爺さんとお姫様らしき女、魔法使いのコスプレにしか見えないお爺さんがそこにいて、魔王を倒し世界を救って欲しいと言われ。石に刺さった聖剣エクスカリバーとやらを抜かさせられ。
王国騎士団の騎士団長に半年仕込まれた後に魔王討伐の旅に出て、魔法使いのエルフと重戦士のドワーフと弓兵の獣人を仲間にして、魔王幹部を倒しながら世直しをし。
なんやかんやあって旅立ってから数年後、魔王を討伐。異世界転移してからの人生はよくあるRPGのような使い古されたストーリーが展開された。
あとはエンディングを迎えるだけ。国王と約束した魔王討伐の報酬である金銀財宝と爵位と姫様を貰って万々歳の日々を夢見て床に付いたのだが・・・。
「いやどんだけ寝てんねんワレェェェエエエーーーーーーーー!!!!」
魔王討伐した日の夜。馬車で仮眠を取り、眠気が収まって目を覚ましたら十万年経っていた。お寝坊さんなんてレベルではもうない。寝坊どころか永眠レベルである。
「どうされましたかメシア様!?」
「あー、なんでもないです。突然叫んですいませんでした。」
今、マンションの一室で俺とハンバーグを食べているのは十万年続く世界的な宗教のニンホア教の法皇であるジングさん。ニンホア教の法皇とは地球で言うローマ法王くらい偉い。そして、ニンホア教のニンホアとは、日本のことである。
つまり、魔王討伐から十万年経った今。日本は異世界で神の世界であると崇められ、この俺は現人神として扱われているのだ。
目が覚めてからの話をしよう。
魔王討伐後に一眠りして十万年。目を覚ますとそこは真っ暗な空間、石の棺の中にいて、知らない天井どころか知っている場所なんてひとつもない世界の中で棺の蓋を開けると丁度教皇のジングさんが自分のいる棺に向けてお祈りをしていた。
元いた世界で例えるのなら釈迦やキリストが突然復活したようなものだ。自分が聖職者だったらショック死しかねないだろう。
「そうです、か。まぁ何事もないのであればそれで良いのですが。ところでメシア様。明日から高校ですが何か不足はございましたでしょうか?」
「特にないですね。強いて言うなら勉強について行けるか不安なことくらいです。2度目の高校生だから大丈夫だと思いますけど。」
「それは良うございました。改めてもう一度忠告させて頂きますが、決して貴方様が転生者だとか10万年前の世界を救ったメシア様ご本人であるだとかは悟られてはいけません。もしバレてしまっては世界が大混乱となってしまいます。宜しいですね?」
なんやかんやあり目覚めてから1年が経った末に、明日から俺は2度目の高校生となることになった。戸籍管理の上で高校生となった実績は重要らしく、この今の世界で生きていくのに必要らしい。
高校の入学、そもそも戸籍などについてはジングさんの養子として登録してもらった。
幼少期、宗教的に穢れていると言われている魔の森に捨てられていた子供をジングさんがたまたま発見。標高の高い山の奥にある教会にて修行をし、穢れを浄化。教皇自ら俗世の知識を学ばせた後、高校入学へと至った。なんて胡散臭いカバーストーリーが俺の表向きの人生となっている。
戸籍を管理する市役所らしき組織からは疑いの目を向けられたが、そこは教皇の権力でゴリ押ししたそうだ。教皇恐ろしやである。
高校生を名乗るために1番重要な見た目については問題ない。何故かはわからないが10万年の眠りの末に俺の体は若返っており、ちょうど15歳ぐらいになっていたからだ。そして戸籍上でも15歳になっている。
ちなみに高校の勉強内容についてはどうやらこの世界にもピタゴラスやニュートンはいたらしく勉強の内容自体は元の世界の高校と参考書を見る限りそう変わらなかった。国語、社会、理科、数学がベースであり、そのベースに魔法やモンスター、ダンジョンに関する知識が乗っかっている。
「わかってますよ。ジングさんの言い付けはしっかり守ります。自分の正体は悟らせない、魔法補助具無しに魔法は使わない、彼女が出来たらジングさんにすぐ紹介する、ですよね?」
魔法補助具とはその名の通り魔法を使うのを補助する物だ。今の人類はエルフなどの地球にいない人種も含め補助具を使わないと魔法を使えないほど魔法に対しては不器用らしく、補助具なしに魔法を使うのは神の所業らしい。故に魔法補助具、略して魔法具なしに魔法を使ってはいけないのだ。
彼女が出来たら紹介しろというのは、勇者の血が訳の分からない女に結びついたら困るとのことだ。勇者の子供となればかなりの才能を持ち得ることになるそうで、反社会勢力に繋がっている女に勇者の血が渡ればえらい事になるだとか。要は身元の調査をさせて欲しいらしい。
ちなみに子供を作ることに関しては大賛成で、その気があるのであれば信者から選んで宛てがうとのことらしい。流石に知らない女との子供を作ることには恐怖を覚えるため、躊躇っている。
「理解しているなら結構。では私はもう帰りますのでくれぐれも寝坊することのないように。おやすみなさい、貴方様に祝福があらんことを。」
そう言って俺の家を出て、黒塗りの防弾加工された高級車にジングさんは乗り込む。明日からは夢にまで見た2度目の高校生。トラックに轢かれて異世界転移したせいで中途半端に終わってしまった高校生活をやり直す、強くてニューゲーム(物理)が始まったのだった。
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