学園デート エスコート開始
18:00
俺の退学が掛かった学園デートが始まった
現在俺が居る場所は学園の正門前 あの場で直ぐにデートが始まるのかと思ってたら
流花は準備があるとか言ってそのままどっか行ったきりだった
そのまま此処でずっと待ってた訳だが
......
今俺の前にいるこいつは何故かバニーガールの様な格好をしている
様な... そうだ。なんか違う
「先輩目線きもぉー♡」
「どこ見てんですかぁ〜♡」
めちゃくちゃ至近距離って訳じゃない 5メートルくらい距離は離れている
なのに視線を外すことが出来ない
「流花。」
「はい...♡」
「学園デートは来週だったみたいだ、流花が制服じゃないって事はそういうことだな」
「早とちりしたみたいだ 今日は帰るわ」
そのまま振り向いて踵を返そうとして 声を掛けられる
「選択肢」
「選んでましたよね」
「私も参加してみたんですよ?」
遙の選択肢か、確かあそこにあったのは
マイクロなんとかチアガール 飲食店の幕みたいなやつ リバースバニーガール
この三つだったはず そんでこいつの今の格好は...
なるほど確かに 参加してるわ
「遙との会話を盗み聞きしてたって事か」
「えぇー?別に違いますよぉ〜」
「てかそもそも先輩と遙さんの話題って、私達1年生にも届いてましたし」
「知っていてもおかしくないですよね?それにぃ...私は」
そこで一度 俺は口を挟む
「遙との放課後の予定もそれ経由ってことか」
「どうでしょうねー」
正直どっちもあり得るけど ここの過程は今は然程重要じゃない
それよりも今はこっちが先だ
「流花 そのふざけた格好はなんだ」
「何ってそりゃ、バニーガールですけど。」
「先輩頭だけじゃなくて目も腐ったんですか?」
「どっちが腐ってるんだろうな どっちもかもしれん」
目が腐ってた方がいい だって今のこいつは
ほとんど裸みたいなもんだから
...どうなってんだ? 胸元と下半身の一部にだけシールの様なものが貼ってあるだけ
ハートの形をしたその一枚だけしか貼ってない
もしかしてこいつ そうなのか?
「流花、俺は人の趣味にとやかくは言いたくなんだがな」
「そういうのはバレないようにするもんじゃないのか?」
俺の発言を聞いた流花は、ゆっくりと歩いて俺との距離を縮めてくる
「何言ってるんですか」
「スリルがあるから バレる可能性があるからこそ」
耳元で囁く
「興奮するんですよ」
近い よくない状況だ
目線を逸らして思考しなければ 今の状況はどうみても俺がまずい
一旦目線を流花から外して---
「先輩」
流花の両手が俺の頬に触れる そのまま顔を動かせないように抑えられる
「ダメですよ」
「私も覚悟を決めてきたんです」
「今日此処で貴方と一緒に退学します」
「一緒に死にましょう 先輩」
この状況からの俺の退学が意味するのはつまり 社会的死
そしてそれはこいつも同じって事か
「随分愛が重いじゃないか」
「私って一途なので」
「先輩しか見えないんですよ」
「俺しか見る気がないだけだな」
「はい」
現在18:00正門前 こいつは人が閑散としたその瞬間を狙ってた
それが今だ だけど此処からは何も予測出来ない
いつバレてもおかしくない
「んまぁこんなとこで長話するのも無駄ですね」
「早くしないとバレちゃいますもんねぇ?」
わざとらしく煽ってくる
「そうだな、ところで流花」
少し気になった事がある 聞いてみよう
「身体震えてるぞ」
「寒いのか?まだ夏じゃないもんなー」
「それともお前」
俺が言葉を出すより先に 流花から返事が返ってくる
「分かっててやってますよね それ」
「...そうですよ。恥ずかしいです」
「私今 すごく恥ずかしいんですよ」
身体が震えてるのが直ぐにわかる そりゃそうだよな
こんな格好で学園にいたら誰だってそうなる。
そしてそれを実行してる流花は本気なんだろうな
「...なんですか わざわざ私の口から聞きたかったんですか。」
頷いて返答する
「いつも揶揄われてばかりだったからな 今日ぐらいは逆転させてもらうぞ」
「最後の足掻きですね じゃあ頑張ってください」
はぁ...。と、ため息を吐いて流花は続ける
「18:00になったのでデートは既に始まっています、ですので今回のデートプランを発表します」
そこで流花は息を吸って整えて話し始める
「まず最初のルートはここ学園正門前です 先輩には私と此処で学園内にあるエントランスに入室するまで手を握ってもらいます」
エントランスまでか 結構な距離がある
俺達の学校は学園内がかなり広いから、なかなかに長い道のりだ
それに今回はただ歩くだけじゃない リバースバニーガールと一緒にだ
「待てよ流花」
流花の発言に疑問をぶつける
「この時間帯はエントランスの受付が必ず居るはずだ。それに俺達の学園は受付の担当が時間制で変わって入れ替わる 正面から入れば一発でアウトだ」
それでも 流花から返ってきた返答はあっけらかんとしていた
「そうですけど、当たり前ですよねそんな事」
「だから言ったじゃないですか」
「私と一緒に死にましょうって」
なるほど これはそういう意味だな。
「お前は最初から何の対策も」
「とってません 私はこのまま先輩を連れてエントランスに突撃します」
「なるほど」
「全部俺がなんとかしろと そういう意味だよな」
.......ニコっ♡
流花はわかりやすく近いてきて身体を寄せる
「私ぃ..先輩の為にデートプラン立ててきたんですよぉ...?」
「エントランスだけじゃなくてぇ..階段でしょ?エレベーターも使おうかなぁ?それにそれにぃ〜廊下で過激な事してみたりしてっ♡ 」
「他にもぉ..まだまだいっぱいあるんですよぉ♡」
仮にプランのルートを全て回るなら見つかる確率は大きく上がる
なら俺がする事は一つしかない ルートを潰せるだけ潰す
「そして最後のデートコースはっ!」
「屋上ですっ⭐︎」
そして一瞬
表情を切り替えて流花はそれを伝える
「此処が」
「私と先輩の最後の学園生活になります」
流花は俺の手を握って身体を押し付けながら 満面の笑みで言う
「先輩っ!」
「一緒に死にましょうねっ♡♡」
清々しい笑顔 だが当然そんなのは
「お断りだ」
「だーめ♡」
「絶対此処で殺してやるから」
こいつの指す 死 殺すってのはあくまでも社会的死だけ
命に別状はない生きるのは辛くなるけどな
「命があればなんてことないな お前は俺を殺せない」
少し自慢げに声を出す どのみち社会的に死ぬらしいしこのぐらいやってもいいだろう
そう思っていたが
次の瞬間に流花から出された言葉は予想外の一言だった
「殺せますよ」
「私 先輩殺せます」
...ブラフか? それにしてはハッキリすぎる 表情や動きに揺れが見えない
「私今日見られてますよね?」
「スタンガンの一本や二本所持してる女ですよ」
「凶器がそれだけだと思いますか?」
「仮に持っていたとして、刺せるか殺せるかは別だ」
その発言に間髪入れずに答える
「殺せます」
「私は事実今 先輩の目の前でこんな格好で学園にいます」
「今は奇跡的に誰からも見られていない そうです 今はまだ」
「私は此処に来る瞬間に覚悟が決まっています 目的は先輩の退学ですけど」
「殺す手段は持っていますよ」
それが本当なのか判断は出来ないな だからこそこれは純粋に気になる
「その格好のどこに凶器を隠し持ってるんだ?」
「胸にシールを二枚と下半身に一枚だけ あとは頭の兎耳ぐらいか」
「どこに隠せるんだ?」
この格好で凶器を隠し持てるわけがない なのにどうしてこいつはそこまで自身があるんだ?ブラフには思えない 此処にきた時点で覚悟は決まってるはずだ
なぜだ どうしてそこまで断言できる?
「そういえば先輩」
流花の一言で俺は意識を元に戻す
そうして次の瞬間-- 流花から出た発言に俺は一瞬思考を止める
「放課後になってから遙さんって見かけました?」
遙...? 今日遙と会う約束をしたのは14時辺りだ
そんで選択肢を渡されて俺はそれを答えた 間違いない
場所の指定はしていなかったが 放課後になって以降一度も見てない
「来てない」
「俺はここでずっと流花を待ってた その時間は2時間程度だ」
それでも来てない
あれだけ俺に執着してる遙が来ない? 何か別の用事が出来たのか?
それでもおかしい あいつは全ての優先順位が俺になってる人間だ。そんなヤツが--
「なぁ流花」
俺が疑問を口にする前にそっと 流花は人差し指を俺の口元に添えて答える
「先輩」
「先輩への凶器として」
「遙さんを使わせてもらいます」
人質 俺が何かすれば遙に被害が飛ぶ可能性がある
流花の凶器は得物じゃなくて人質としての遙
「さぁ」
「行きますよ先輩」
その瞬間 俺の腕に流花が両腕を回してくる
「ちゃんとエスコートしてくださいね」
「じゃないと私達」
「二人揃って退学ですからね?」
「せーんぱいっ♡」
退学目前 学園デートのエスコートが始まる
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