第5話
今俺は、趙高を襲撃して討ち取り、燕国の帰路に着いている。
「秦舞陽殿は、味方をお探しかな?」
当初の目的は、秦国の高官を味方に付けることだった。
計画変更したんだけど、この際味方になるのであれば誰でもいい。
「まあ、そうなんだけどね~。とりあえず、軍師がほしいかな~」
「ふむ……、知恵者ですか。旧趙国の人材でよければ、ご紹介できるかもしれません」
ほうほう?
「旧趙国の地には、
あ~、聞いたことあるな。
韓信の
その後は、韓信に従って献策を授けている。
(そっか~。陳勝・呉広の乱は20年くらい先だけど、その時代に活躍する人物を誘ってもいいかもしんない)
そうなると……。
「
「誰ですか?」
韓信に天下三分の計を説くんだけど、採用されない人だね。その後、報復を恐れて消えたんだ。
まだ頭角を現さないなら、別な人でもいいな。
「
「儒者ですな。偏屈で有名です」
「面会を頼める?」
◇
趙国経由で、燕国に帰って来れたよ。
そして、李左車さんと酈食其さんが、仲間に加わった。
太子丹に挨拶に行く。
「んっ? 咸陽を見て来たの? 宮殿に入らないと意味なくない?」
正論を言われる。
「入れないっすけど、文官を一人始末して来ました。それと、こちらが旧趙国の元大将軍の司馬尚さんです。旧趙国の元文官の、李左車さんと酈食其さんも協力してくれるそうです」
太子丹は、司馬尚さんに興味がないみたいだ。
荊軻さんにしか期待していないんだろうな。
太子丹の屋敷を後にする。
それと、もう一つ歴史を変えたいことがある。
俺は、
樊於期さんは、偶に宴会に参加する程度だった。
子供だけではなく、親戚も皆殺しにあっているので、心が晴れないみたいだ。
「なに? 荊軻殿が自刃を要求してくるけど、思い止まれと?」
「燕国には、司馬昭さんと樊於期さんに軍を指揮してもらいたいと思っています。偽首で十分っす」
燕国の首都
いや、今の時期だと魏国への援軍でもいいかな?
将軍として行ってもらいたいけど、率いる兵士がいないので無理か。
だけどね、秦王を騙すだけなのに、有能な人材を死なせる必要はないと思う。
俺の遠大な計画を話すと、樊於期さんも納得してくれた。
◇
首都薊に帰って来てから、数日が過ぎた。
秦国からの使者が来たんだそうだ。その後、街で手配書が配られる。
「ぶっ!? 似ていないけど、俺の似顔絵?」
趙高の暗殺は、秦王を怒らせたみたいだ。
歴史は変わったけど、俺もお尋ね者になってしまった。
それと太子丹に、俺は首都薊にいたと証言してもらった。流石に誰も、燕国から秦国へ向かっていたとは思わなかったらしい。
数日後、旧韓国の首都新鄭で犯人が捕まったと連絡が来た。
似顔絵と似た人が、罪を被ってくれたみたいだ。
「無実の人を巻き込んでしまった。秦王暗殺は成功させないとね」
俺は、決意を新たにした。
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