第22話 趣味は程々に

 12月4日 午後12時40分

王国『パラティーヌ』

ロスペン侯爵家・廊下にて。


 豪華な昼食を食べ終わったシオンは、侍女と共に部屋へと戻っていると、歩きながら大きな欠伸をしているエドガーが前からやって来た。


「あ、エドガーくん」


 シオンの言葉を聞いたエドガーは目を丸くした。


「せ、聖女さま……。あの、お披露目会の時はごめん。驚いちゃって……」


 頭を下げるエドガーに対し、シオンは


「大丈夫、気にしてないし。頭を上げて」


 頭を上げるエドガー。彼の顔を見たシオンが目を丸くした。


「えっ……、エドガーくん。目の下にくまあるけど……、ちゃんと寝てる?」


「ね、寝てるよ……。仮眠程度には、ちゃんと寝てる」


 エドガーの言葉に、シオンは絶句する。


「か、仮眠程度にはって……、ちゃんと寝なさい! いつから寝てないの!」


「うぅ……うるさいな……。ちゃんと寝てるって……」


 シオンの説教に、両耳を押さえ顔を歪ませるエドガー。


「寝てないでしょ! ちゃんと寝なさい!」


「聖女様、アクレリア姉さん見たいなこと言うな……。ちゃんと寝てるって言ってるのに……」


「寝てないでしょ? ちゃんと寝てるなら、目の下にこんな濃い色のくま出来ないでしょ!」


「うぅ……本当にうるさい……。分かったよ、分かった。ちゃんと寝るから……」


 耳を押さえながらそう言うエドガーを見たシオンは、満足気に頷いた。


「分かればよろしい。ちゃんと寝てね、エドガーくん」


「かしこまりました……、聖女様」


     ーーーーーーーーーー


 12月4日 午後12時40分

王国『パラティーヌ』

ロスペン侯爵家・エドガーの部屋にて。


 欠伸を噛み締め、部屋へと入る。


 カーテンが閉めきられ、ランプの灯りだけが部屋全体を照らしていた。


 床には、本が数冊や数枚の紙が乱雑に捨てられており、机にも開いたままの本や羽ペンなどが置かれている。


『ちゃんと寝てね、エドガーくん』


 先程、シオンに言われた言葉が頭の中で再生される。


「寝たいんだけどな……、やりたい事研究や読書あるんだよな……」


 口から深いため息が出てしまったが、エドガーは床に落ちている本を手に取る。


「掃除したら、寝ようかな」


 そう決したエドガーは、手にしている本を本棚へ戻そうとしたのだが、本が気になってしまい表紙に目を向ける。


 表紙には『古代魔術記号論』と書かれている。しかも、お披露目会の時にグラウンドから貰った『新刊』だった。


「少しだけ……少しだけ。ちょっとだけ中身を見たら、掃除の続きをやろう」


 床に座り座ったエドガーは、自身にそう言い聞かせながら表紙を捲ったのだった。


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