初恋の人は、ちょっとマッチョ――わたしと彼と紺色の組織
冬乃一華
わたしの王子様
第0話 プロローグ
桜舞う季節、わたしは思い出す。
世界一のイケメン、不動大和君に出会った日の事を。
あの日、わたしは知ったんだ。
筋肉は命を救うって。
あんなに美しくて、優しい後ろ姿が存在するんだって。
「大和君……ディップスしてる」
わたしは素早くスマホを取り出すと、彼の雄姿を保存した。
人は毎日違うって、お母さんが言ってたし。
「……カッコいい」
一年生の時から撮り続けた写真。
わたしだって、素人じゃない。
大和君を
割れてるの? 割れて無いよ?
何て微妙な判定を許さない、ハッキリと割れた美しい顎。
振り返ると風切り音がするほど鋭くカッコイイ鼻。
出会ちゃったクマさんが、テディベアみたいに縮こまってしまうくらい優しい瞳。
ぶつかった時、電柱を砕いた逞しい肩。
「……うん。間違いなく、世界一の美男子」
こんな格好いい男の子、この世に2人と居るはず無い。
彼が街を歩くと、皆の視線も釘付け。
やめて‼ わたしの大和君に汚らわしい目を向けないで‼
「あ、ナロープッシュアップ‼」
わたしは気持ちを切り替えると、再びスマホを構えて連射。
上腕三頭筋って素敵……。
大和君は、秒間100回も腕立て伏せが出来る凄い人。
見ている方が上腕三頭筋に乳酸溜まっちゃいそうなくらい凄い。
「……そろそろ帰る時間だ」
時刻を確認すると、午後8時。
大和君が帰宅する時間帯だ。
こうしてはいられない、急いで先回りしないと。
「仕掛けたカメラ、新型に変えないと‼」
わたしは急いで踵を返す。
重大な使命を果たす為に。
恋は戦争、わたしは戦乙女なんだから。
この時― ―
わたしは想像もしていなかった。
カメラって、勝手に取り付けてはいけない。
紺色の巨悪に襲われる。
そんな恐ろしい秘密に。
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