第9話 騙して悪いが自己防衛なんでな
どうしてこんなことに。
彼はリンドヴルムⅡのコックピットでそう思いながら、目の前に迫る凶刃を眺めていた。
彼は回想した、こうなるまでの事を……。
彼は今日も雑に哨戒任務をこなし、艦に帰投する最中だった。
無識別の貨物艦をレーダーに捉えた。
ここまでならまだ良い。艦に戻って補給をし、追加で戦闘機を連れてカモにすれば良かったのだ。いや、今となってはそうしていても生きていられたかどうかも怪しいが………。
だが今回は、運のいい事に、いや悪いことにまだ燃料が多く残っていた。
貨物艦のAL粒子放出量は微弱、おそらくコンバーターに貯めたAL粒子をバリアに使っているのだろう。
この燃料の残量なら余裕で狩れる。そう思い他の隊員に話した。
全員が了承した、このカモの中身の国に物資を持ち帰り、少しいい気分になりながら酒が飲める。
そう思っていた。
普通の貨物艦なら航行不可ではないが手痛い損傷を与えられる。そう思いミサイルを撃つよう指示した。
ただ自衛用の武装でいくつかは落とされると分かっていた、だからミサイルを何波かに分けて撃っていた。そのはずだった。
何波に別れていようと関係ない、とばかりにビーム砲で薙ぎ払い、それでも近づいてきたものはバルカンファランクスで残らず撃ち落とす。
あっという間の出来事だった。
だがこちらとて伊達に正規軍人をしてはいない。
すぐさま次の攻撃準備をし始めた、その時だった。
貨物艦の船体下部が開き、何かを発艦させた。
それは_______ガーディアンだった。
貨物艦から出てきたあいつは、発艦の勢いそのままにこちらに突っ込み、僚機のうちの一機に喰らいつき、機首をへし折った。何も見えなかった。
すぐさまそいつは戦闘機を足場代わりに蹴って反転し、俺について来ていたもう一機の戦闘機に追いつき、エンジン部を破壊し、減速した機体をさらに蹴って加速。あいつがこっちを向く。
俺はほぼ条件反射で体が動いた。
機体の一部変形によって無理やり機体の軌道を横に曲げた。
急な方向転換によるGと、何かが吹き飛んだような衝撃が体を襲う。
1拍遅れてアラートが鳴り響く。
左腕部を持っていかれた。
あいつはまだ後ろを向いている。仕掛けるならここしかない。
間髪入れず翼に取り付けられているレールガンをむしり取り構える。
あいつがこっちを向いた、だがこの距離なら避けられない。倒せはしないだろう、だが一矢報うくらいは出来るはずだ。
引き金を引くその瞬間、
アラートが鳴った、微かな衝撃。
レールガンが横から撃たれた弾丸によって手から離れる。
思わず弾丸が飛んできた方向を見る。そこには、貨物艦の上に陣取ったディザスター級ガーディアンの姿。
なぜ忘れていたんだろう。
かの有名な
再びアラート音。
目の前には。
奴がいた。
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