深夜のジムにいるお姉さんと、一緒に筋トレする生活。
米太郎
第1話
駅から少し離れた住宅地。
二十四時間開いているジムができた。
コンビニ感覚で利用できるから便利なところだ。
かなり夜更けになってしまったけど、今日も塾帰りにジムを訪れる。
この時間になると、そこにはスタイル抜群なお姉さんがいるのだ。
タンクトップがとても似合うお姉さん。
鏡越しに、自分の筋肉を見たいからなのか、毎日薄着なのだ。短めのタンクトップからはおへそがチラ見えするし、下はスパッツだ。
それは、もはや下着と差はないのではないかと思ってしまうけれども、お姉さん的には下着とは違うらしい。
ピッチリしているので、身体のラインはくっきりと見えるし。そもそも下着も兼ね備えているウェアなのかもしれない。下着と繋がっているってことは、つまりは下着と同等なのかもしれない。
そんな格好をしていていいのかって思うけれども、ジムにいるのは僕くらいだし、弱そうな男子高校生が一人いたところで、どうってことはないのだろう。
お姉さんは、僕なんて一握りで倒してきそうな程度にはマッチョだし。
見とれていると、お姉さんと目があった。
悪いことをしているわけではないけれども、すぐに目を逸らしてしまった。
そんなセクシーなお姉さんがいたら、ついつい見ちゃうって……。
け、けど、マッチョなスタイルのお姉さんを見るためにジムに来ているってわけじゃないんだからね。
僕は毎日夜遅くまで塾で勉強していて、凝り固まった身体をほぐそうという目的で来ているわけで。身体を動かした方が寝つきが良いから、塾帰りには寄るようにしているのだ。
「ふー、ふー……」
お姉さんは、ダンベルを持ち上げてトレーニングをしている。
相当、胸筋に効くのだろう。効果が見た目に出ている。筋肉が隆起していると言ってもいいかもしれない。女性として出ていて欲しいところが、しっかりと出ているのだ。目のやり場に困ってしまうけれども、ついつい眺めてしまう。
お姉さんはというと、僕の視線は気にせず黙々とトレーニングをするのが常だ。
関わりは無いのだけれども、こんな二人きりの空間が少し気に入ってたりする。
そもそも、二十四時間トレーニングができるからって言っても、夜に筋トレする人なんていないらしい。都心じゃないからって言うのもあるかもしれない。関東だったとしても、どこでも人口が多いって言うわけではないからね。いつも、僕とお姉さんしかいない。
それぞれ、自分の好きなトレーニングをしている。
最初来たときは、こんなに遅い時間にトレーニングしたら怪我しないのかなと気になったが、お姉さんは入念なストレッチを行ってから筋トレを行うようなガチ勢のようで、僕なんかの心配は稀有に終わった。
汗染みがうっすら浮かぶトレーニングウェアは、いつもパンパンに膨らんでいる。
刺激的な格好過ぎて、色んな意味で危ないんじゃないかって思っちゃうけれども……。
お姉さんは一心不乱にトレーニングをしている。
どうしてもお姉さんは気になってしまうけれども、一旦煩悩は振り払って。
僕も少し汗を流そう。
ひ弱な僕が筋トレなんてしたら、即ケガしてしまうのは目に見えているので、いつも通りランニングマシンを走るだけにとどめている。
「ふー、ふー……」
「ふっふっふー……」
しばらく走ると、いつもと違う感覚がやってくる。
今日の塾はいつもより少し遅い時間に終わったせいだ。期末テスト前の追い込みとして、特別講習をやっていたせいで遅くなってしまったからだ。
と、理由なんて考えている間に、足に違和感がやってきた。
「あ、あ……、これ、やばい……!?」
どうやら足がつってしまったみたいだ。それも、両足一気に。
即座にランニングマシンを止めることは出来ず、動くベルトコンベアに流されるまま後ろへ流される。
「うわーーっっ!!
ベルトコンベアから後ろへ放りだされて、尻餅をついてしまった。そのままの勢いで、後転を二回ほどして倒れてしまった。
ランニングマシンについて行けなくて落ちるなんて、カッコ悪いこと甚だしい。こんなところ、お姉さんに見られなくて良かった……。
「いたたたた……」
「君、大丈夫か?」
見られていないと思っていたけれども、さすがに気付かれてしまっていたようだった。
お姉さんは、僕に触れてしまうんじゃないかと思うくらいの近距離まで寄ってきていた。
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